「トータルで本格的な改革」
本書「働き方改革のすべて」は、「働き方改革」関連法案成立後の2018年10月、改革の基本的な考え方や内容の理解に役立ててもらおうと出版された。働き方改革の解説本だが、労働法制の歴史についても詳しく述べられており、クロニクル的な側面もある。
著者の岡崎淳一さんは元厚生労働審議官で、内閣官房働き方改革実現推進室長代行補として法案作りの実務に携わった。
改革の実施にあたって、事業者側では「経営に支障が出るのでは」と、懸念を払拭できないままの人も多いという。また、働く側でも「残業が減ったら暮らしていけないかも」と、不安を抱えている人が少なからずいる。
一定の年収レベルを境に改革実施後の収入ダウンを予想する指摘もある。
著者によれば、働き方改革は「1億総活躍社会を作るための最大のチャレンジ」。そのターゲットは単に働き方ばかりではなく、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、労働に対する考え方にまで及ぶもので「トータルで本格的な改革」が目指されている。
少子高齢化の影響で急変する社会に対応して講じられた働き方改革。本書でその実施直前までのプロセスに接して、その急変の渦中にいることがリアルに感じられる。
「働き方改革のすべて」
岡崎淳一著
日本経済出版社
税別1600円