2024年 4月 19日 (金)

日米貿易協定、日本と米国「勝ったのはどっちだ?」主要紙の論調真っ二つ 社説で読み解く

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朝日と毎日「トランプ大統領は信用できない」

   各紙の社説でも、こうした見出しにそった論調を展開している。

   日本経済新聞社説「日米の貿易協定を次につなげたい」はこう評価した。

「世界1位と3位の経済大国がTPPに代わる協定を結び、さらなる貿易の拡大を目指すのは歓迎だ。日米双方が守り抜いた聖域があるとはいえ、安い輸入品が手に入る消費者の恩恵は小さくない」

   読売新聞社説「現実を踏まえた次善の策だ」も、日本経済新聞ほど手放しではないとはいえ、一定の評価を与えている。

「日本が重視するコメは協定から除外された。焦点だった米国による日本車への制裁関税は回避された。困難な交渉を経て現実的な妥協点を見つけたのは評価できる。最悪の事態を回避することを優先して、自動車関税の撤廃を先送りしたのは、やむを得まい」

というわけだ。

   産経新聞の主張(社説)「同盟支える真の『互恵』を」は、米中のような深刻な対立にならなかった点を評価する一方、米国の対応は本当に互恵的と言えるのか、と疑問を投げかけている。

「日本車に対する米国の関税撤廃が先送りされたことは見過ごせない。対米輸出の主要品目を除外して本当に互恵的といえるのか。自動車産業保護を訴えるトランプ政権が積極的に協議に応じる保証はない。そうだとしても求めるべきは強く求め続けるべきだ。日米同盟をさらに強固にするためにも必須の作業だ。日本がTPP並みの市場開放を行うなら、米国がTPPで認めていた自動車関税撤廃なども時期を明示して約束すべきだった。そうならなかったのは、日本が米国の理不尽な圧力への対応を最優先したからだ」

と、日本政府にハッパをかける。

信用できない?(トランプ米大統領(C)FAMOUS)
信用できない?(トランプ米大統領(C)FAMOUS)

   一方、日本側が「屈した」とする朝日新聞社説「自由・公正に傷がつく」は、産経新聞と同じく「自動車関税撤廃の先送り」の論点を持ち出し、こう指摘する。

「世界貿易機関(WTO)のルールでは、二国間で貿易協定を結ぶ際は貿易額の9割程度の関税撤廃が求められる。対米輸出額の約35%を占める自動車の関税撤廃時期を示さないのでは、自由・公正という貿易原則をゆがめかねない」

   つまり、WTOのルール違反だというわけだ。しかも、トランプ大統領には「信義違反」の前科がたびたびあると危険性を訴える。

「両首脳が今回署名した共同声明には『協定が履行されている間、共同声明に反する行動は取らない』という文言が入った。これをもとに、首相は追加関税をかけない意向を、大統領から『明確に確認した』と強調する。ほぼ同じ表現は、1年前の共同宣言でも盛り込まれた。しかし、その後の交渉中、米政府は日本などの輸入車は安全保障上の脅威であると結論づけたうえ、追加関税の判断は11月中旬に先送りしている。声明の文言では安心できない」

   毎日新聞社説「ウィンウィンとは言えない」も、トランプ氏は信用ならないと切って捨てる。

「トランプ氏の最優先課題は大統領選での再選だ。農家や自動車工場は選挙情勢を左右する激戦州に多い。日本政府は成果を急ぐトランプ氏に花を持たせ、過大な要求を突き付けられないうちに交渉を終えたかった。しかし、共同声明の文言は、昨年9月の共同声明を踏襲したにとどまる。予測不能のトランプ氏だけに歯止めとは言いがたい。追加関税が発動されるリスクは消えていない」

   東京新聞社説「自動車で確約取れたか」は、さらに米ニューヨーク・タイムズ紙の情報をもとに疑問を投げかける。

「首脳会談前、ニューヨーク・タイムズ紙は『確約』を巡り、日米が対立し、正式調印が間に合わなくなると伝えた。日本は、追加関税が発動される場合、協定を失効させるという明確な『確約』を求めたが、米国が反発したという内容だ。交渉を有利に進める切り札を温存したい大統領の本音が見える。トランプ氏の出方は予測できない。交渉の経緯を明らかにする必要がある」
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