2024年 3月 19日 (火)

ノーベル賞博士の理論で導き出した「危機感」の共有 社長がビジョンを語る本当の意味(大関暁夫)

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   今年もノーベル賞受賞者が発表される季節になりました。過去のノーベル賞受賞者で個人的に最も印象に残っているのが、アメリカの行動経済学者ダニエル・カーマン博士です。

   カーマン博士の受賞理由は、行動経済学と実験経済学という新研究分野の開拓への貢献を評価されたもので、博士の代表的な学説としてプロスペクト理論があげられます。

  • 社長が悩んだ末に決断したことは......
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人は「心理的」に違ったものに見えることがある

   プロスペクト理論とは、選択の結果得られる利益もしくは被る損害と、それらの確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルのこと。この理論の発端となった具体的な実験例を引用して、プロスペクト理論を説明します。

   とある機械メーカーが、経済的な理由で最悪は3つの工場を閉鎖し、6000人の社員を解雇しなくてはいけない状況になりました。この状況への対応策としてケース1、2 それぞれに、企業コンサルタントからA、Bの二つのプランが示され、被験者である企業経営者にどちらかを選んでもらいました。

(ケース1)

プランA:3つのうち1つの工場と、2000人の職を確実に救うことができるプラン。
プランB:3つのすべての工場と6000人の職を救える可能性が3分の1。一方、工場も職もまったく救えない可能性が3分の2というプラン。

   このケースでは、80%の被験経営者が、プランAを選択したといいます。

(ケース2)

プランA:3つのうち2つの工場と4000人の職が確実に失われるプラン。
プランB:3つすべての工場と6000人の職が失われる可能性が3分の2。一方、すべての工場と職を救える可能性が3分の1あるプラン。

   こちらのケースでは、82%の被験経営者がプランBを選択したといいます。

   よくよく考えてみてください。じつは理論構成から言えば、ケース1も2もまったく同じプランの比較なのです。そうであるにも関わらず、「心理的に違ったものに見える」ために、被験者の選択が逆転してしまったということなのです。

   では、いったいケース1と2では、被験者の選択基準としては何が違ったのでしょう。

   ケース1は、「得るもの(確実に残せるもの)」に視点をおいた内容になっています。ケース2は、「失うもの(確実になくなるもの)」に視点をおいた表現でした。

   人は確実に「得るもの」が見えるときには、それを「守りたい」と思い、逆に確実に「失うもの」が見えるときには、損失を回避するために大きな困難にも立ち向かっていくようです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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