【SDGs大学長がゆく】障がい者による障がい者のための「生きた」事業を模索する
SDGsのゴール「8.5」に合致
A型作業所からの報酬は、「最低賃金×一日の労働時間(4~5時間)×日数」で、おおよそ月額にして8万円ほど。障がい者年金は、その程度によりさまざまではあるが、それ自体では生活はままならないず、働かなければ生活を維持することができない。
しかし、障がい者のもつスキルに合った業務は少なく、どちらかと言えば単純作業が多い。さらに企業は障害の有無に関係なく生産効率を求めるので、身体的な疲労の他にメンタル面での負担もあり、いつまで仕事を続けていけるのか、将来に不安を感じている障がい者は少なくない。
1万人に1人という難病をもつ吉田拓人さんも、そんな不安を抱えていた。同じ作業所で働いていた坂本さんの取材レポートを読んだ吉田さんは、以前から、ひとまとめに障がい者といってもさまざまな障がいがあることを知らない人が多すぎると思っていたため、障がい者の「あるある」として、多くの人に知ってもらえないかと本の出版を思いついた。
同時に、SDGs(持続可能な開発目標)にも関心を持ち、自分たちの置かれている状況より、世界ではもっと過酷な生活をしている人たちのことを知った。もしも障がい者が支えられる側から支える側になることができるとしたら、生きがいを持って仕事ができるのではないか――。そう思ったという。
急に未来が開いたような感覚のなか、A型作業所を退社し、団体の社員として坂本氏と「自分たちにできること」を模索し始めた。
「障がい者による障がい者の支援とは何か」を吉田さんに聞いたところ、
「SDGsのゴール(目標)8.5には、『2030年までに若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する』とあります。
まずは、障がい者が働きがいのある人間らしい仕事とは何か? 障がい者が持つ資源は何か? を考えた場合に、坂本さんの取材レポートを元にした障がい者の『あるある本』を出版することにより、国内の障がい者の方々とその家族に悩みや困りごとを共有してもらい、新たな情報をいただきながら、障がい者ネットワークの構築を目指していきたい。
さらに、その後には障がい者による町づくりのための政策提言ができるような働きかけもしたい」
と、目を輝かせながら話してくれた。