2024年 4月 25日 (木)

元伊藤忠会長の丹羽宇一郎さんでも入社2か月で辞めようと思ったことがある!【4月! 決めるスタートダッシュ】

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   4月になり、新しく社会人になったり、新しい部署で働いたりしている人も多いだろう。また、新年度を期して「心機一転」、仕事に打ち込もうと気持ちを新たにした人もいるに違いない。そんな人のために、【4月! 決めるスタートダッシュ】というテーマで、今月は仕事に役立ちそうな本を随時紹介していきたい。

   30代、40代の会社員なら、「社長は無理だけど、部長ならなれるのではないか」と、部長昇進を目標にしている人も多いのではないだろうか。

   本の帯に「部長ほどおもしろい職業はない」と銘打ったのが、本書「部長って何だ!」である。著者は元伊藤忠商事の会長で、その後民間出身では初の駐中国大使を務めた丹羽宇一郎さん。「人生の勝負どき」を乗り切るためのヒントを提示している。

「部長って何だ!」(丹羽宇一郎著)講談社
  • 部長ほどおもしろい職業はない!?(写真はイメージ)
    部長ほどおもしろい職業はない!?(写真はイメージ)
  • 部長ほどおもしろい職業はない!?(写真はイメージ)

部長時代にコンビニに着目した

   冒頭、丹羽宇一郎さんは、アップル創業者スティーブ・ジョブズの「創造性とは、ただモノを結びつけることだ」という言葉や経済学者ヨーゼフ・シュンペーターのイノベーション論を紹介し、「イノベーションを起こし得るのは、入社から30年前後の豊富な経験を蓄えた部長クラスなのです」と断言する。

   本書の魅力は、ただ論を述べるだけではなく、丹羽さん自身のキャリアや体験を余すところなく明かしていることだ。なかには失敗談もある。

   こうした言葉も、丹羽さんの伊藤忠時代の体験から導かれたものだ。副社長だった1998年、会社始まって以来の巨額投資となったファミリーマートの買収を手掛けたが、コンビニエンスストアそのものに着目したのは1980年代後半の部長時代だったという。

   商社の食料部門で生産から製造、流通、販売までを広く扱った体験、またアメリカ駐在時代に大量消費時代の到来を体感した経験が結びつき、「利益の源泉はどこにあるのか」を考えた末の丹羽さんのイノベーションだった、と書いている。

   顧客のニーズに直接触れることができる最前線の現場を傘下に収めたことで、より大きな新しいビジネスを生み出すことができるようになったという。この後、三菱商事はローソンを傘下に収め、セブン-イレブンは三井物産との関係を深めることで、コンビニ競争は商社間競争の様相を呈していることからも、丹羽さんの先見の明がうかがえる。

「泥のように働いた」新人時代

   「第1章 仕事・読書・人が自分を磨く」は、駆け出し時代のことから始まる。入社して最初に配属されたのは油脂部の大豆担当だった。大豆問屋の紹介で、早朝から豆腐屋に行き、豆腐や油揚げの作り方を習い、問屋から豆の見分け方を教えてもらったという。入社6年目にニューヨークに赴任。土日も昼夜もなく、大豆の売買をする毎日だった。「泥のように働く」ことで、「誰にも負けない」という自負心が底力になったそうだ。

   ここが、他の人との違いだと思ったのは、丹羽さんは大豆をはじめとする食料分野のプロフェッショナルになろうと努力したことだ。農業に限らず、アメリカの産業、歴史、政治、文化などに関する本を片っぱしから買い込んで読むようにした。

   依頼があれば、「国際食糧事情」といったテーマで講演し、新聞や雑誌に寄稿した。帰国後、油脂原料第一課長になった。38歳、社内では最年少課長だった。この後もメディアへの寄稿を続け、翻訳出版もした。

   多忙を極めたが、週3冊のペースで本を読んだ。ただ読むだけではなく、読書ノートをつけ、重要な箇所は書き写した。スペシャリストになる一方で、読書を通じて幅を広げた。

「一つの仕事を極めれば、他の分野にも応用できる。優れたスペシャリストこそ優れたジェネラリストになれる、というのが私の基本的な考えです」

   この後の章では課長時代、部長時代の成功と失敗談が続く。そこからいくつかの教訓を導いている。日本の企業の特徴はチーム経営だ。部長が部員たちの心と心をつなぐことで、仕事の達成感や喜びを共有するようになる。そのために部長は部下に「夢とビジョン」を語る必要があるという。「認めて任せて褒めれば人材は育つ」「優秀な社員ほど厳しい職場に送り込む」などの言葉が並ぶ。

テレワークでは部長は部下に「背中」を見せられない

   本書を読んで、「猛烈ビジネスマン」だった丹羽さんらしいと思ったのは、いま新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府や経済界が盛んに推奨しているテレワークや在宅勤務に違和感を表明していることだ。

   「今はテレワークによる利点のほうに焦点が当たっていますが、中長期にはその弊害がボディブローのように効いてくるのではないでしょうか」とし、テレワークでは、部長は部下に「背中」を見せられない、と書いている。テレワークやAIでできないことこそ「部長の仕事」だというのだ。

   部長がリーダーになり、チーム一丸で価値観を共有し、仕事に邁進する。「死なば諸共」といった物騒な言葉も飛び出す。こうした発想に付いていけないという若い人も多いだろう。そもそも出世を望まない若い世代が増えている。

   また、入社数年で会社を辞める人も少なくない。そんな若者に向けたメッセージもある。丹羽さん自身、当時花形だった鉄鋼部門ではなく食料部門に配属され雑務ばかりの日々が続いた。辞めようと思い、恩師に相談した。「わずか2か月働いただけで仕事の何がわかるというんだ?」と諭され、思い直したという。

   「永遠に今のような仕事が続く」と思い込んだ誤解があった。3年懸命に働いて、自分に合ってないと思ったら、そのときに転職すればいい、と書いている。評者も「最初は3カ月、次は3年」と思い働くうちに、30年近く同じ会社にいたことを思い出した。

   部長をめざす中堅だけでなく、入社したばかりの新人、転職を考えている若手が読んでも、それぞれに参考になるエピソード、教訓に満ちた本だ。

「部長って何だ!」
丹羽宇一郎著
講談社
924円(税込)

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