「もう2、3回東京五輪中止を進言してきた」
新型コロナウイルスの政府分科会の尾身茂会長が言い切った。この進言が効いているのか、さすがの菅義偉首相も最近、弱気になってきたという。
一方、暴走と暴言が止まらず、日本国民の神経を逆なでしているのが国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長だ。いまや、バッハ会長の存在そのものが五輪開催にリスク要因になってきた。
バッハ会長はノーベル平和賞を狙っているともいわれるが、もし東京五輪が利用されているとしたら? あり得ないと思いたいが......。
検疫官が断言「変異ウイルスの流入は防げない」
安心・安全な東京五輪・パラリンピックは、本当に開けるのか――。中日新聞(4月29日付)「五輪選手、毎日検査へ 国内観客上限6月決定」が膨大な医療関係者の感染防止作業が必要になる実態を、こう伝える。
「東京五輪・パラリンピックの新型コロナ対策は前例のない規模となる。参加する選手は五輪で約1万1000人、パラで約4400人を見込み、関係者が加われば数万人に上る。膨大な検査と行動管理が求められ、関係者からは『本当にできるのか』と実効性を不安視する声が漏れる。選手の検査頻度は『原則毎日』に変えた。選手に定期的に接触する大会関係者も原則毎日、検査する。膨大なサンプル数をさばくだけでなく、『偽陽性』の可能性を考慮し、陽性となった場合は複数検体の再検査を行う必要がある。公共交通機関による移動は認めないなどの行動制限も規定。活動計画書の提出と違反した場合の罰則を設けるが、徹底管理は至難の業だ」
しかもこの膨大な作業は、選手・関係者が入国した後の話だ。入国する検疫の段階でもうお手上げ状態だという。週刊AERA(2021年5月3日/5月10日合併号)「五輪で変異株流入阻止は不可能 検疫官が断言『陰性証明あっても...』」が、こう伝える。
「変異の流入阻止は無理だ。海外からの変異ウイルスの流入を防ぐ最前線に立つ検疫官の一人は、政府は欧州や南米など29か国・地域を変異株流行国に指定している状況で、仮に五輪関係者が入国の前提となる陰性証明を持っていたとしても、それで海外からの変異株の流入を阻止できるかと言えば、不可能だと断言する。『現在、コロナまん延による入国拒否対象国からも人がやってきます。陰性証明があるから大丈夫と言いますが、その信憑性を担保できない国だってあるでしょう。政府要人は、検疫はノーチェックが慣例です。要人付きのマスコミなど関係者にもどこまで徹底できるのか疑問です』」
というわけだ。
そんななか、バッハIOC会長の存在そのものが五輪開催の大きなリスクになってきた。日本国民に対して無神経な発言を連発するからだ。毎日新聞(4月30日付)「五輪記者・内幕リポート:バッハ氏『緊急事態、五輪と関係ない』...『おかしいやろ』私は叫んだ」が、五輪担当の田原和宏記者の怒りを、こう綴っている。
「3回目なる緊急事態宣言にも『東京五輪とは関係ない』。バッハ会長の発言には耳を疑う。思わずパソコンの画面に向かって私は叫んでいた。『そんなの、おかしいやろ』。4月21日のIOC理事会後、オンライン記者会見でバッハ氏は、緊急事態宣言は『ゴールデン・ウイークに向けての限定的、予防的な対策』であると強調し、今夏の開催に影響はないとの考えを示した」
バッハ会長は「ノーベル平和賞を狙っている?」
田原記者はバッハ会長には「ノーベル平和賞受賞の野望」があるようだとして、東京五輪を利用しているのではないかと行間に匂わせている。
「IOCに詳しい関係者は『政治的な動きが目立ち過ぎる。だから〈ノーベル平和賞を狙っている〉なんて言われる』と懸念を示す。欧州の難民危機を受けて2016年リオデジャネイロ五輪で初めて『難民選手団』を結成し、2018年平昌冬季五輪ではアイスホッケー女子で韓国と北朝鮮の南北合同チームを結成させ、平和を演出。新型コロナを乗り越えて五輪を開催すれば『トンネルの先の光となる』と訴える」
こうしたパフォーマンスに「ノーベル平和賞」がチラついているのだろうか。そして、田原記者はこう結ぶのだった。
「バッハ氏はIOC理事会で新型コロナのパンデミックを踏まえ、五輪のモットー『より速く(Faster)、より高く(Higher)、より強く(Stronger)』に『Together』を加えることを提案した。『より力を合わせて』ということだろうか。冒頭のバッハ氏の発言は日本の世論を逆なでした。五輪好きと言われた日本の心象風景は変わるに違いない」
新型コロナウイルスの感染拡大で医療機関がひっ迫するなか、大会組織委が日本看護協会に500人の看護師派遣を要請したことが国民の批判を浴びているが、東京五輪のアスリート用に秘かに多くの入院施設を確保していることも明るみに出た。
TBSニュース(4月27日付)「東京五輪、選手などの入院先に指定病院約30か所確保へ」が、こう伝える。
「組織委がアスリートなどを受け入れる大会の指定病院を30か所程度確保する方向で調整を進めていることがわかった。関係者によると、アスリートなどの入院先となる大会の指定病院は大学病院や都立病院などで、組織委は都内に10か所程度、都外に20か所程度、確保する方向で調整を進めている。また、選手村には新型コロナに対応する発熱外来や検査ラボを設置、大会期間中は24時間態勢で運営にあたることも新たにわかった」
大阪府などでは、コロナの重症患者の受け入れ施設の確保のため、「5日間の一般手術の延期」うぃ医療機関に求めるありさまなのに、よく五輪のための病院を確保できるものだ。
「五輪は無理だ」と自民議員に詰め寄られる首相
それはともかく、二階俊博幹事長、尾身茂会長に続き、自民党議員の中でも「五輪中止」を直談判する動きが出ているという。毎日新聞(4月30日付)「緊急事態と五輪 切り離しに腐心」が、こう伝える。
「『私が決めることではない。決定権者はIOCだ』。首相は最近、官邸で面会した自民党議員が『五輪は無理だ』と主張すると、こう返したという。成功すれば政権の実績となりうる五輪だが、IOCにゲタを預ける姿勢は、首相の中にも迷いが生じたようにも映る。別の自民党議員は『五輪までワクチンの効果が出て、感染症数が下がることを祈るしかない』とつぶやく」
菅義偉首相も、いよいよ追い込まれているようだ。