2024年 5月 5日 (日)

水害を防ぐ名言が日本各地に残っている【防災を知る一冊】

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

200年がかりで実現した信濃川の分水

   新潟県の信濃川下流は洪水の常襲地帯だった。江戸時代から放水路を開削する陳情が行われてきたが、なかなか実現しなかった。地元の地理学者・思想家の小泉蒼軒は、信濃川の水害は細分化した領地政策・小藩割拠のもとの乱開発が原因であり、「惣郷一致」、つまり信濃川水系一体としての治水をするべきであるとし、「水は低いところに向けて流れる。流れるままに逆らわなければ害とならない」と主張した。

   明治になり大河津分水の工事が始まったが、中断。13年かけて大正11(1924)年にようやく通水した。構想からじつに200年後にようやく実現した。だが、通水後すぐ昭和2(1927)年6月にゲートが陥没する大事故が起こった。当時の内務省の大失態であり、東京の荒川放水路建設の立役者・青山士らが補修工事に当たった。その竣工記念碑の言葉を紹介している。

「万象ニ天意ヲ覚ル者ハ幸ナリ 人類ノ為メ 國ノ為メ」

   万象とは、6つの風土、地圏、水圏、気圏、生物圏、歴史文化・神話伝説、活力圏・産業・社会基盤だと竹林さんは解釈している。万象をよく調べ、それと調和するように設計してほしいという意味が込められている。エスペラント語も付記されているのは、誤った判断をしたお雇い外国人と先輩技師への批判が込められている、と竹林さん。

   本書を読み、水にまつわる、さまざまな名言があることがわかった。日本列島には豪雨、台風など9つの難があるという。苦難にどう立ち向かうのか。亡くなった作詞家・永六輔さんの言葉を紹介している。

   「地震も台風も洪水も。あらゆる自然災害は地球が生きている証拠です」。そして名言だとも。自然災害はなくならない。いかに被害を小さくするか、その知恵が求められているということだろう。(渡辺淳悦)

「治水の名言」
竹林征三著
鹿島出版会
2420円(税込)

姉妹サイト

注目情報

PR
コラムざんまい
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中