2022年 7月 3日 (日)

今冬、もし大寒波がやってきたら...... 身の毛が凍る電力ひっ迫!? なぜ、電力不足が心配されるのか IEEIの竹内純子さんに聞く

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   今冬、電力不足が再び深刻化する懸念が高まっている。

   東日本大震災をきっかけとした東京電力・福島第一原子力発電所の事故から10年。震災後安全規制が見直され、新規制基準への適合審査に時間がかかっていることから全国のほとんどの原発は停止しており、再生可能エネルギーは急増しているとはいえ、自然頼みであるし、主力というには程遠い。現在、日本の電力は火力発電で支えられている。しかし、いま目の前にある「電力危機」の最大の要因は、その火力発電を動かす液化天然ガス(LNG)の価格高騰と調達不安である。

   中国をはじめとする世界的なLNG需要の高まりと燃料調達のサプライチェーンの脆弱化、LNGがマイナス162度の超低温輸送と貯蔵を要するので、長期保存に向かないことなどがある。

   期待された再生可能エネルギー、なかでも太陽光発電はメガソーラーがあちらこちらに設置されたものの、思っていたようには機能していない。このような時に寒波が押し寄せ、電力需要が急増。さらに積雪による日照不足で太陽光発電が「戦力外」になったとしたら。風力は、水力は......。

   いったい日本の電力はどうして、こうも脆弱になったのか――。意外なことに、自由化と再生可能エネルギー大量導入の影響もあると聞く。一般的にはわかりづらい電力問題についてNPO法人 国際環境経済研究所(IEEI)理事の竹内純子(たけうち・すみこ)さんに聞いた。

  • IEEI理事、東北大学特任教授を務めつつ、スタートアップとの協業でエネルギー産業の変革に取り組むU3innovations合同会社の共同代表でもある竹内純子さん
    IEEI理事、東北大学特任教授を務めつつ、スタートアップとの協業でエネルギー産業の変革に取り組むU3innovations合同会社の共同代表でもある竹内純子さん
  • IEEI理事、東北大学特任教授を務めつつ、スタートアップとの協業でエネルギー産業の変革に取り組むU3innovations合同会社の共同代表でもある竹内純子さん

電力不足の理由

   ――2020年12月から21年1月にかけても電力不足が懸念されました。そもそも、なぜ電力不足が起こるのでしょうか。

竹内 純子さん「原因は複合的なところがありますし、そもそも『電気が足りない』という状況には二つの側面があることを認識しなければなりません。一つはピークの時間帯に発電設備が足りなくなるということです。みんなが一斉に電気を使う時間に電気が足りなくなるという話で、昔夏になると電力会社が節電を呼び掛けるCMをやっていましたよね。平日で工場も稼働しており、暑いのでみんなが一斉にエアコンを使い、甲子園の決勝戦を見て...... といったシチュエーションが重なると、発電設備をフル稼働させても賄いきれないという状況が生じます。昔は夏にこうした状況が発生しがちでしたが、今は太陽光発電が発電をやめてしまい、照明の点灯や特に冬の暖房需要が急速に増える夕方の時間帯がかなり厳しい状況になっています。
もう一つは、燃料の価格高騰や調達不安です。昨冬電力不足や価格高騰が発生した原因は、天然ガス(LNG)の調達の問題です。発電所に発電能力があったとしても、その燃料が十分供給できなければ、発電できません。現在、世界的に天然ガスの調達合戦が激化しています。その理由はいくつかありますが、まず、2015年頃には原油や天然ガスの価格が低下して油田などの開発が減りました。加えてここ2年ほどはコロナ禍で経済活動がストップした状況でしたので、エネルギーが売れなかったわけです。飛行機やクルマなど、移動も減少し増しh多よね。なのでますます開発は行われてきませんでした。
さらに気候変動問題で、CO2を出す石油や天然ガス、石炭などは『今世紀後半にはほぼ使わないということにしよう』と言っているわけですから、開発してもあと30年もたたないうちに売ることができないという状況になりかねない。これでは誰も油田の開発なんてしませんよね。油田の開発などはCO2を出すことになる『悪いこと』としているのですから当然です。ただエネルギーの安定供給は、今を生きる人たちにとっては死活問題ですから、徐々にCO2を出さない社会に移行していくことが必要です。
こうした複合的な要因によって供給量に不安がある一方、コロナ禍からの急速な経済回復や、CO2排出量の多い石炭から天然ガスに切り替える動きが世界的に起きて、天然ガスの需要は急増しました。その上今年は、欧州で風況が良くなかったために風力発電の発電が減ってしまいそれを天然ガス火力発電で補ったり、渇水で水力発電の発電量が減ったのを同様に天然ガス火力発電で補うということになったりしたので、ますます天然ガスの需要が増えてしまったのです。わが国でもいま最大の電源は天然ガス火力発電ですので、燃料不足、すなわち『弾切れ』の発生が懸念されているわけです。

   ――その「弾」が石油や天然ガスでなく、再生可能エネルギーであれば、電力不足は防ぐことができるのでしょうか。

竹内さん「そもそも再生可能エネルギーは燃料要らずですので、弾(燃料)切れという概念はありません。代表的な太陽光発電は、日本で今、相当増えています。原発事故以降、日本はみなさんの電気代に乗せて補助金を集めて、その補助金で太陽光発電を増やしてきました。その補助制度があまりに雑だったので、みなさんの負担が年間約2.5兆円にもなっており、これはこれで問題ですが、太陽光発電は増えてはいます。ただ、太陽光発電だけで電力を安定供給することはできません。夜になったり曇ったり、雪がパネルの上に降り積もってしまえば発電できません。『必要な時に必要な量を発電する能力』が、電気という商品を安定供給するためにはどうしても必要なのです。
太陽光発電が増えてきて、日常の発電システムのなかで太陽光発電を優先的に活用すれば、火力発電所の発電能力はこれまでほど必要ではなくなります。太陽光発電が働いている間は、火力発電は『寝ている』ことを余儀なくされるので、そうした働きが悪い火力発電所を持っていることに、自由化された競争市場で事業者は耐えきれません。社会にとっては『いざというとき(太陽光発電が発電しないようなとき)に備えて必要な設備』であったとしても、競争に委ねれば廃止されてしまう懸念があります。コスト競争力に劣る事業者は潰れて市場からでていきなさい、というのが自由化です。『いざという時に必要な設備』すなわち『平常時は無駄な設備』を持っている事業者が負けることになるわけです。
再生可能エネルギーを政策的に保護して大量導入しつつ、自由化をするというのは慎重に制度設計をしなければ安定供給が脅かされる事態になることは、欧州各国の経験からもわかってはいたのですが、日本は欧州のした失敗はすべて真似しないと気が済まないのでしょうね。同じことをやったわけです。今までは太陽光発電は電力全体の1%、2%とかを賄う電力でしたので、それが仮にゼロになったとしても大きな影響はなかったわけです。あるいみ「オミソ」だった時には太陽光が発電しないときにほかの電源がカバーすることも容易にできましたが、これが急増したので、容易にはカバーできなくなりました」
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