2024年 4月 25日 (木)

今冬、もし大寒波がやってきたら...... 身の毛が凍る電力ひっ迫!? なぜ、電力不足が心配されるのか IEEIの竹内純子さんに聞く

再生可能エネルギーは必要な時に必要な量を発電することができない

   ――日本の電力が、すべて再生可能エネルギーに置き換わることは難しいのですね。

竹内さん「電気は瞬間瞬間で、作る量と使う量をピッタリあわせる、『同時同量』を保たないと周波数が乱れて最悪の場合大停電に至ることもあります。また、『今使いたい』のであって『あと3時間後に太陽が出てくるのでその時供給します』では意味がありません。蓄電池がものすごく安価になって大量に普及するなど、大量に電気を貯める技術ができればよいのですが、そうしたことにでもならない限り、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーだけでやるというのは無理です。しばしば、太陽光や風力の発電能力を「火力発電所の何基分」とか「原子力発電所何基分」などと表現しますが、それは太陽光パネルが100%その能力を発揮してくれたときの発電量です。『原発〇基分の太陽光発電』は夜になれば原発ゼロ基分です。再生可能エネルギーだけで『同時同量』を満たすのは困難で、基本的には誰か(火力発電やバッテリーなどの技術)による支えがないと立っていられません」
新たな電力として期待されている太陽光発電だが......
新たな電力として期待されている太陽光発電だが......

   ―― 再生可能エネルギーも、火力発電も、一長一短あるようです。

竹内さん「どんなエネルギー源にもメリットもあればデメリットもあります。だからエネルギーは難しいんです。再生可能エネルギーは、CO2(二酸化炭素)を出さず、国産のエネルギーであるところがメリットといえますが(太陽光パネルなどはほぼ全て海外の製品なので、その点では国産ではありませんが日本に吹く風、日本に照る太陽で発電する)、まだコストが高いこと、電力の供給は人間がコントロールすることができないという欠点があります。一方、火力発電は発電をコントロールして安定的な電力供給に貢献しますが、CO2の排出量や燃料を輸入してこなければならないデメリットがあります。原子力はCO2を出さず、準国産エネルギーです(ウラン燃料は輸入ですが、燃料棒を入れれば数年間発電し続けられるので、オイルショックのような事態にも耐えられる)。安定的に供給すればコストも安いということで期待されたわけですが、事故のリスクや廃棄物の課題があります。
みんなそれぞれメリットもあればデメリットもあるので、うまくバランスさせて使っていくことが必要なんです」

   ――政府は2050年に向けて「CO2排出量を実質ゼロにする」目標を掲げました。しかし現実に、日本のエネルギー政策は大丈夫なのでしょうか?

竹内さん「そもそも、日本の使っているエネルギー全体の約7割は電気ではありません。たとえばクルマのガソリンや工場のボイラーを動かす重油など、化石燃料を燃焼させてエネルギーを得るというのが7割なんです。ここから出るCO2を減らそうと思ったらやり方は一つしかありません。高効率化です。たとえばクルマの燃費が倍になれば、同じ距離を走るために必要なガソリンは半分になるわけなので、出るCO2も半分になります。でも高効率化技術がそれほど飛躍的に伸びるとは考え難いことや、どこまで高効率化させてもゼロにはならないので、違うやり方が必要です。それは何かと言えば、いまガソリンで動いているものを電気で動くように変える、典型的なのはガソリン車を電気自動車に乗り換えるということです。
そのうえで、電気の作り方を、CO2を出さない再生可能エネルギーか、原子力エネルギーに変えていくことが必要です。とはいえ、急に再生可能エネルギーと原子力だけという訳には行きませんので、火力発電の低炭素化も進めつつやっていくことになるわけです。
ただ、わが国では低炭素電源の柱の一つである原子力発電をどうするか、方針がしっかりとしていません。脱原発と脱炭素の二兎を追うことは現実的には相当の困難ですので、今のままでは、政府が掲げる2050年のCO2排出量の実質ゼロは非常に困難だといえるでしょう。
再生可能エネルギーとバッテリーなどの蓄電技術を大量に普及させるために、どこまで電気代の上昇を受け入れられるかなど、国民全体で腹をくくる必要があります。ただ、電気は贅沢品ではありません。値上がりは生活弱者にとってより厳しい。企業で言えば海外に逃げられない中小企業への痛手が大きい。政策を持続的にしていくことが必要です」
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