原材料費高騰で価格転嫁できず...「泣き寝入り」企業多すぎ! 3%賃上げなんて無理筋では?
2022.01.31 11:45
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賃上げは仕入れ価格高騰を製品価格に反映できるかに...
J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、調査をまとめた帝国データバンク情報統括部の杉原翔太さんに話を聞いた。
――原材料費の仕入れ単価が上がった一番大きな原因は、やはりガソリンなどの石油価格の高騰ですか。
杉原翔太さん「それもありますが、半導体不足の問題や、新型コロナの感染拡大で2020年後半から、世界的にコンテナ不足になって原材料輸入が滞っていることが大きいです。昨年(2021年)後半には解消されるという話でしたが、オミクロン株の急拡大で港湾労働者の人出不足となり、いまだに米国の港湾では沖合に荷物を待つ船が並んでいる状態です。
木材が入ってこない『ウッドショック』も深刻です。コンテナ不足に加えて米国の住宅需要が伸びたため、カナダ産の木材が米国に集中して日本に入ってこなくなり、木材価格が高騰して建材・家具業界に大きな影響を与えています。最近は、H形鋼、厚鋼板といった鉄の鋼材が値上がりする『アイアン・ショック』という言葉も生まれています。こちらは、中国の需要拡大が原因と言われます」
――日本を素通りして、米国や中国に原材料が行ってしまうわけですか。
杉原さん「消費が大きい国にモノが流れるのが原則ですから、仕方ありません。米国でクリスマス商戦が盛んな時期は、中国からコンテナでモノが大量に米国に運ばれて、日本が品不足になりました」
――しかし、業種別に仕入れ単価に反映できたところと、泣き寝入りしたところのバラツキが大きいですね。「アイアン・ショック」の中でも、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸」は87%が販売価格に上乗せしてしますね。一方、飲食店や出版・印刷は我慢を強いられています。これはなぜですか。
杉原さん「鉄鋼関係は、いわば『川上』産業。鉄がなければ自動車も作れませんから、強い立場です。一方、飲食店はコロナ禍では営業時間短縮を強いられるうえ、競争も激しく弱い立場です。運輸・倉庫には観光旅行業者も含まれており、GoToトラベル再開もできなくなり、苦しい状況です。
出版・印刷にはイベント関係のチラシや広告業者が多く、コロナの影響を強く受けています。農林水産業は、牛乳の過剰生産問題のような供給過多と、昨年秋からの天候不順による野菜の高騰と、ダブルパンチの状態が響いています」
――消費者庁の今月の調査では、生活必需品の物価が軒並み上がっています。
杉原さん「製品の価格に反映できるところはいいですが、多くの企業が価格に転嫁できずに苦しんでいます。政府は3%の賃上げを企業に求めていますが、個々の企業にとって賃上げできるかどうかは、仕入れ価格の高騰を製品価格に反映できるかどうかにかかっています」
調査は2021年12月16日~2022年1月5日、全国2万3826社にアンケートを行い、1万769社(45.2%)から回答を得た。
(福田和郎)