オミクロン株による新型コロナウイルスの新規感染者数が「ピークアウト」した英国で、「最強の変異株」の存在が話題になっています。一部メディアが「新たに英国で発見された」と報じたのは、通称「デルタクロン」と呼ばれる「変異株」。数か月前にギリシャのキプロス島で発見が伝えられたものの、実験室の検出ミスによる「作り話」だと否定されていましたが、「やっぱり存在したのか!」と、騒然となっています。果たして、最強の威力を誇るといわれる「デルタクロン」は本当に存在するのか、それとも「デマ」なのでしょうか。スーパー変異株「デルタクロン」の信ぴょう性は?数か月前、オミクロン株の登場に世界中が戦々恐々となっていた頃のこと。ギリシャのキプロス島でデルタ株とオミクロン株の特徴を合わせ持つ「変異株」が検出された、という驚きのニュースが世界中を駆け巡りました。CyprusfindsvariantthatcombineDeltaandOmicron(キプロスで、デルタ株とオミクロン株を混ぜ合わせた変異株が発見された:米ブルームバーグ)variant:変異株発表をした大学教授は、デルタ株の重症化リスクと、オミクロン株の強い感染力を合わせ持つ変異株を「デルタクロン」と名付け、重症者を中心に「複数の感染事例」を確認したと主張していました。ところがこの「デルタクロン」、発表直後はメディアを騒然とさせたものの、気がついたら猛威を増すオミクロンの影に隠れるように、まったく話題にならなくなりました。というのも、WHO(世界保健機関)などの専門家たちが、「デルタクロン」は実験室での作業ミスで誤って検知されたもので、実体が存在しない「作り話」だと、次々と否定していたのです。ThereisnosuchthingasDeltacron(デルタクロンなんて存在しない:WHOの専門家)OmicronandDeltadidnotformasupervariant(オミクロンとデルタはスーパー変異株を形成しない:米国の専門家)この当時、「デルタクロンなんてありえない!」と、すっかり「hoax」(デマ)認定されてしまった「幻のスーパー変異株」。これまで新型コロナをめぐる誤報や根拠のないうわさ話に眉をひそめていた人たちも、この時ばかりは「デマでよかった!」と、胸をなでおろしたにちがいありません。ええっ、英国で発見?!デルタクロン株はどれだけ怖いのか?世界中の専門家から「デマ認定」されて姿を消したはずの「デルタクロン」でしたが、なんと先日、英国で症例が発見されたと報じられて、再び「表舞台」に現れました。DeltacronvarianthasbeenidentifiedintheUK(デルタクロン変異株が英国で確認された:英ネットメディア)複数のメディアによると、イギリスの保険当局がサンプルの中から「デルタとオミクロンが混合した変異株を発見した」と伝えていますが、共通しているのは「stillremainsunclear」(まだ不確かだ)と、かなり慎重なトーンを保っていることです。本当に新たな変異株が発生したのか、英国で発生したのか、それとも他国から侵入したのか、など不明な点が多いため、しばらくは「beingmonitored」(モニタリングを続ける)とのこと。「デルタクロンでっちあげ騒動」の反省からか、専門家も「デルタクロンに関しては、まだわからないことが多い。パニックになる必要はない」と、冷静さを促しています。それにしても、重症化リスクの高いデルタ株と、圧倒的な感染力を持つオミクロン株が「結合」したら、「最強の変異株」になりそうです。このところ日本でも市中感染が確認されている「ステルス・オミクロン」よりも「恐ろしい」とする説もあり、終わりのない戦いに気が遠くなります。英国での「デルタクロン」発見のニュース、今回も「hoax」(デマ)で終わることを願うばかりです。それでは、「今週のニュースな英語」は、この「hoax」(デマ、捏造)を取り上げます。「でっちあげ」など、ありもしないことを故意に仕立て上げるという意味で使われます。Itwasonlyahoax(それは、単なるでっちあげだった)QueenElizabethdeathhoaxstemmedfromtabloid(タブロイド紙が、エリザベス女王が亡くなったとでっちあげた)Undergroundwaslockeddownafter'hoaxbombthreat'(でっちあげの爆破予告のせいで、ロンドンの地下鉄が封鎖された)「hoax」の使用例を調べていたら、先日新型コロナ感染が公表されたエリザベス女王の「死亡説デマ」がネットで出回っていたというニュースを見つけて驚きました。もちろん即座に「デマ認定」されていましたが、「デルタクロン」の「デマ認定」にはもう少し時間がかかるようです。(井津川倫子)
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