米国株や暗号資産が上昇傾向にある。要因は、懸念されていた米インフレのピークアウトが市場に織り込まれたこと。ビットコインは順調に安値を切り上げている。北海道大学の花野直樹さんは「まだまだインフレ率は高いまま」と、慎重な姿勢を見せ、動かず。「2万4000~2万5000ドルの価格帯を明確に抜けるか、押し返されてしまうかがポイントになってくると思います」とみている。イーサリアムの分析に力が入っていた明治大学の城正人さんは、「ここ最近の大幅な上昇をすべて取り逃してしまいました」と、消極的な姿勢を悔やむ。積極投資を打ち出し、さっそくビットコインを購入。保有したまま越週した。東京大学の迫嵩明さんは動かず。ビットコイン2万4000~2万5000ドル抜けるか?(北海道大学花野直樹)今週(8月8日週)のトレードはノーポジで終わりました。では、今週も重要なイベントがあったので、振り返りと仮想通貨の値動きを分析していきたいと思います。まず何といっても、今年の下げ相場の原因であり、市場が最も注目しているといっても過言ではないアメリカの消費者物価指数(CPI)が発表されました。CPIの市場の事前予想は8.7%だったのに対し、結果8.5%でした。予想より低く、前月に比べてインフレのペースが減速しました。この数字を受けてインフレのピークアウトが織り込まれ、株価指数、仮想通貨はともに大きく上昇しました。しかし、まだまだインフレ率は高いままです。マクロ経済の環境の改善してきているからか、ビットコインは順調に安値を切り上げていますが、同時に上値も重くなっている印象です。2万4000~2万5000ドルあたりを上に抜けようと何度もトライしており、この価格帯を明確に抜けるか、押し返されてしまうかがポイントになってくると思います。では、この価格帯を抜けるかどうかを考えるために、仮想通貨と連動性の高い米国株指数を見てみたいと思います。現在、アメリカのハイテク株指数であるNASDAQはマクロ環境が改善してきたとはいえ、4週連続で上昇しているのに加え、200日移動平均線にもぶつかっており、ここからどんどん上昇するかと言われれば、どちらかというと調整で下げが入る確率のほうが高いのではないかと考えています。そのため、やはり来週からもこの上昇についていくようなエントリーは控えたいと思います。しかし、マクロ環境は今年の前半ほど悲観的ではなく、市場の雰囲気も少しずつ明るくなってきたかなと考えています。個人的にはインフレもまだまだ高いままで、利上げも続ける中で株価や仮想通貨が上がっていくのは懐疑的ですが、上昇相場と下落相場のサイクルが早くなっているのかもしれません。よって、今後は自分の予想どおりに調整下げがあった場合、試験的にですが押し目買いをしてみたいと思います。前週からの損益 プラス・マイナスゼロ8月12日現在 9754円◆池田昇太のワンポイントアドバイス現時点ではインフレにブレーキがかけられた様子で、仮想通貨市場は再び上昇しそうな雰囲気が出てきましたね。おっしゃるとおり2万4000~2万5000ドルは意識されている価格帯であり、実際に今年5月の暴落でも反発しています。この価格帯を超えるかどうかが注目点でしょう。また、ナスダックも底打ち感が出てきていて、上昇継続しそうな様子が見られています。ただ、2000年のITバブル崩壊時にナスダックは一時半値ほど戻し、その翌年に暴落している歴史があります。現在の値動きと似ているため、警戒する必要がありそうです。「バリュー株からグロース株へ資産が移り始めている」との見方もあるので、バリュー株の動きも併せて観察するのをオススメします。花野 直樹(はなの・なおき)北海道大学工学部4年北大金融研究会の所属。ふだんはテクニカル分析を使った株式の短期トレードをしています。やるからには1位をとれるよう、頑張ります!イーサリアムの上昇取り逃がす!(明治大学城正人さん)3週にわたってイーサリアムについて書き連ねてきたものの、現在の保守的な戦略からまったく投資できておらず、ここ最近の大幅な上昇をすべて取り逃してしまいました。今後は投資戦略を移動平均線、MACD(マックディー)などの指標を見ながら積極的に投資しようと考えています。◆仮想通貨に激震走る!?「トルネードキャッシュ」とは暗号資産を利用した取引はすべて全世界に公開されています。今後、仮想通貨が日常活用されていくと考えられていますが、プライバシーが確保されていなければ使いづらいと考える人も多いですよね。トルネードキャッシュは、プライバシーを保護するために開発されたプロトコル(アプリ)です。下図にわかりやすく画像を作成してみました。仕組みは単純で、ボブが山田さんに人知れず1ETH(イーサリアム)を送金したいとき、トルネードキャッシュを通してサトシ、アリスと共に1ETHを送金する。これだけです。外部から見ればボブは一郎にお金を送ったのか、太郎に送ったのか、山田に送ったのか区別することはできません。これを2000人、3000人単位で行うことで実質的にお金の出どころの追跡を不可能にしています。「altトルネードキャッシュの仕組みとは」筆者作成しかし、トルネードキャッシュはマネーロンダリングへの規制の名目のもと、利用ができない状態となっています。◆トルネードキャッシュへの規制誰が誰に送金したのかわからない点で、テロ資金などの資金洗浄に利用されることがある。そんな理由で利用できない状況にあるトルネードキャッシュですが、今回かけられた規制、制裁は主に以下の3つです。(1)公式Webサイトはアクセス不可(2)マイクロソフトによるGitHubからのコード削除(3)開発者の逮捕(1)、(2)については営利企業の運営するプラットフォームに頼っていたわけですから、予想可能だったリスク。機能を代替できるようなプラットフォームを構築する必要がありますし、現状の開発状況でも補完は容易です。しかし、(3)は話が変わってきます。開発者は開発を行っただけで犯罪行為を行ったわけではありません。確かにトルネードキャッシュを通して犯罪者が資金洗浄を行ったのかもしれませんが、あくまで技術を使った犯罪者を罰するべきであり、開発者は罰するべきではありません。イノベーションを阻害するのではなく、技術とうまく向き合い解決策を探るほうが建設的でないでしょうか。今後、規制が強まる可能性も考えられますが、「そんな横暴は許されない」とさらに仮想通貨が価値を上げていくと考えています。◆今週の取引取引日取引した暗号資産 売買状況8/11 ビットコイン 0.00001枚を322万円で購入 取引額3220円保有資産ビットコイン 0.00001枚 評価額3220円現金6891円合計1万111円前週からの損益 プラス・マイナスゼロ8月12日現在 1万111円◆池田昇太のワンポイントアドバイス先日の米国消費者物価指数(CPI)の発表の影響か、仮想通貨市場は上昇し始めました。8月14日週は、調整売りと思われる下落が見られたため、タイミングを見計らってエントリーしたいところですね。トルネードキャッシュの件は日本国内では大きな話題にはなっていないものの、衝撃的なニュースでした。たしかにアクシー・インフィニティのハッキング時もトルネードキャッシュが使われてイーサリアム等に替えられていましたが、おっしゃるとおり罰するべきは犯罪者でしょう。ブロックチェーン技術はまだ新しい技術ですので、規制・制裁などによって価格に影響を与えるケースも出てくると考えられます。城 正人(じょう・まさと)明治大学経営学部2021年に引き続き、出場します!投資対象として仮想通貨に興味を持つも、その技術の持つポテンシャルに惹かれDapp開発に着手。投資家としてだけでなく、開発者としての視点からの投資戦略も立てていきます!Twitter:https://twitter.com/dennoah_jo◆今週も取引を見合わせました(東京大学迫嵩明さん)前週からの損益 プラス・マイナスゼロ8月12日現在 1万円迫 嵩明(さこ・たかあき)東京大学文科二類2年学生投資連合USIC代表高校3年生の時に株式投資のおもしろさに目覚める。日本株、米国株、仮想通貨投資を行う。長期的に伸びる市場でビジネスを展開している企業に長期投資することをモットーとしており、テンバガーを虎視眈々と狙っている。金融を学ぶ「おもしろさ」、投資を始める「意義」を多くの人に知ってほしいと切に願う。学生投資連合USIC:https://www.usic2008.org/◆◆アドバイザーのプロフィール池田昇太(いけだ・しょうた)池田昇太(いけだ・しょうた)フリーランスのWebディレクター。金融系メディアを対象に執筆やディレクター業務に従事。投資歴7年。FXと仮想通貨をメインにトレードしています。ファンダメンタル分析よりかはテクニカル分析を好む。最近はNFT(非代替性トークン)の詐欺事例、法的問題について関心あり。大学対抗戦「暗号資産バトル」競技ルール・元本は1万円。・通貨の選定は自由。ただし、国内の事業者で買える暗号資産に限定。・レバレッジはかけられません。・20%を超えて下げた場合は、強制的に取引を停止(ロスカット)とする。・元本割れは1回まで。2回、資産を失った場合は、その時点でリタイアとする。・運用期間は6か月。最終週時点での資産増減額で順位を決める。学生投資連合USIC「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。http://usic2008.com/
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