2024年 5月 19日 (日)

他チームへの協力に、頑なに応じない部下...どう説得する?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE17(前編)】(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE 17」では、他チームへの協力に頑なに応じない部下のケースを取り上げます。

  • 他のプロジェクト参加を部下へ依頼するには、どうしたら…?(写真はイメージ)
    他のプロジェクト参加を部下へ依頼するには、どうしたら…?(写真はイメージ)
  • 他のプロジェクト参加を部下へ依頼するには、どうしたら…?(写真はイメージ)

「こっちの仕事はどうでもいいんですか?」

【上司(課長)】A君。忙しいとは思うけど、来週から営業イベント準備チームのサポートもしてくれないか。
【部下(A君)】えっ!それは困ります。今後の仕事、結構詰まっていますから。
【上司】日頃の業務は、少々日程を繰り下げて調整してくれないかな。あちらも人手不足なんだ。
【部下】こちらも一杯いっぱいです。急に仕事が増えたら、見通しが立ちませんよ!
【上司】今回は兼務優先で考えてほしいんだ。私からチームには話すので、頼むよ。
【部下】課長! こちらの仕事はどうなってもいいんですか!? まずあちらのチーム内で仕事を調整するのが先じゃないですか。
【上司】何だ、そんな非協力的なことでは困るな。とにかく、頼んだぞ!
【部下】はいっ!?(また、いつもの無茶ぶりだ!)

上司と部下の「視界の違い」とは

   上記のケースは、やや上司の説明不足と強引さが目立ちますね。そこはディフォルメした対話として、割り引いてください。

   ただ、明らかなのは、上司と部下との間で、仕事の優先度合いや他チームとの協力の必要性などの認識が大きくズレていることです。

   このケースの場合、本人にとっても職場にとっても、結果としては上司の意思決定が正しいのかもしれません。しかし、そうだとしても、急に新たな仕事を命じられた部下からすれば、「無茶ぶり」としか映りません。

   そこには上司と部下の「視界の違い」――つまり、立場によって、生じている事柄のとらえ方の違いがあるからだといえます。上司は、この違いを理解してマネジメントに向かう必要があります。以下、詳しく見ていきましょう。

【「視界の違い」その(1)―時間軸】

   視界の違いの一つ目は、「時間軸」でのとらえかたの違いです。

   たとえば、営業担当の部下がいて、自分の営業成績が伸び悩んでいるとします。本人は、「今期の売上目標が達成できそうにない」と焦り、なんとか頑張ろうとしています。

   そんな時に上司から「人手が足りないから、別のチームの仕事を兼務で頼む」といわれたら、どう感じるでしょうか? おそらく、「今は懸命に営業をやっている。なのに、どうしてこれ以上仕事を増やすのか!」と不満を募らせることでしょう。

   ここで、かつての自分自身のことを思い返してみてください。

   現場のプレーヤーだった頃は、日々の仕事に追われて、中長期視野で自分の経験の意味を実感できなかったでしょう。一方、長く経験を積んできた今は、当時の経験がどんな意味を持ち、自分の成長にどう影響したかを理解できるはずです。

   経験を積んだ上司と現場で働く部下とでは、成長の「時間軸」の視野が異なるのです。

部下が自分の成長をイメージできる説明を

   このため、上司が部下に仕事を任せる際には、「なぜその仕事を与えるのか」について、部下の将来を考えたうえで説明する工夫が必要です。

   冒頭のケースの場合、上司は部下に新たな仕事の兼務を「良き経験」として、命じたとも考えられます。たとえば、日常業務に没頭するだけでなく、営業イベントの企画・運営にも関わることで、営業パーソンとしての幅を広げさせたいという意図です。

   であれば、上司は次のように、説明をして仕事を任せるとよいでしょう。

「今回の営業イベントの準備に関わることで、お客様の理解や商品の理解を今まで以上に深めてほしい。また、社内で多様なメンバーと協働する力をつけるよい機会にもなる。それは、今後の君の仕事や成長に必ず役立つものだ。だから、少しきついかもしれないが、ぜひ挑戦してみてほしいんだ」

   同じ仕事を任せるのでも、こうした伝え方ならば部下も自分の成長をイメージでき、モチベーションもアップします。上司の、部下より長い「時間軸」からの視界を言語化して、部下に伝えることが大切になるのです。

   そして、もう一つの「視界の違い」は、「空間軸」の違いです。これについては、<他チームへの協力に、頑なに応じない部下...どう説得する?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE17(後編)】(前川孝雄)>で解説していきます。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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