2024年 5月 2日 (木)

久々にゆっくり自分の時間が持てる年末年始...どう過ごす?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE19(後編)】(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE19」では、久々にゆっくり自分の時間が持てる年末年始をどう過ごすか?...有効活用の方法を取り上げます。

  • 年末年始を有意義に過ごそう(写真はイメージ)
    年末年始を有意義に過ごそう(写真はイメージ)
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年頭に考えたい! 自社・自チームのパーパスとは?

   <久々にゆっくり自分の時間が持てる年末年始...どう過ごす?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE19(前編)】(前川孝雄)>の続きです。

   1年の計を立てる新年初頭の過ごし方のもう一つの提案は、「自社・自チームのパーパスとは何か」を再考し、仕事を定義し直してみることです。これは、忙しい日常業務に追われる中ではなかなかできないこと。

   いま、欧米を中心に、多くの企業が自社のパーパス(目的、存在意義)の明確化と、パーパスに沿った経営をいかに進めるべきか、注力し始めています。それは、SDGs(国連の持続可能な開発目標)やESG(環境、社会、企業統治)重視の観点で、企業経営のあり方が根本から問い直されていることと軌を一にしています。

   企業は株主利益第一の「株主資本主義」から脱し、従業員や、取引先、顧客、地域社会などあらゆる利害関係者の利益に配慮し、自らの社会的パーパスを果たすべきと再認識され始めたのです。この世界的な潮流から、日本でもパーパス経営への関心が高まっています。企業経営者や研究者の間でも、こうした理念経営の重要性が強く打ち出されていますが、これも世界の潮流に沿ったものといえるでしょう。

世界が注目するパーパス経営は日本型経営の原点

   あらためてパーパス経営と言われると、新しい概念と思われがちです。しかし、私は何ら目新しいものではないと考えています。そもそも、どの企業にも設立の目的があり、それに沿ったビジネスモデルで事業やサービスをつくってきたはずです。

   ところが資本主義社会のもとでは、どうしても利益第一主義に傾きがちで、その結果社会的弊害が顕在化してしまいました。そこで、あらためてパーパス重視が唱えられていると捉えるべきでしょう。

   また元来、日本では、渋沢栄一の「論語と算盤」や、伊藤忠商事の創業者・伊藤忠兵衛の「三方良し」など、社会貢献型の経営理念や実践が尊ばれてきました。すなわち、パーパス経営とは日本型経営の原点であるともいえるのです。

20~30代の若手社会人が語った理念経営の大切さ

   私は、昨年、大学で担当するキャリアデザイン課程で、教え子だった若手社会人2人を招き、就活に向かう学生たちに仕事のリアルを直接語ってもらう授業を企画しました。

   名づけて「キャリア白熱教室?教え子が教える連鎖の好循環へ!」。

   ゲストの30代女性Mさんは、20代で教育系企業のリーダー職を務めた後に転職と独立を経験。現在、フリーランスで広報の仕事をしています。一方の20代のT君は、大手企業に就職し、その後、外資系企業に転職。営業職のかたわら、副業でコーチング業も営んでいます。パネルトーク形式で、2人が仕事を通して得たものや、目指す目標やキャリア、企業選びへのアドバイスなど、自由に話してもらいました。

   印象的だったのは、2人が各自の体験から「理念に共感できる企業を選ぶことが大切」と強調していたことでした。

   企業が掲げる理念やビジョンは、抽象的で綺麗な言葉にまとめられていて、一見似たように見えがちです。でも、それらをよく見比べて企業情報とも照らし合わせていくと、少しずつ違いが見えてくる。さらに、OB・OG訪問などで実際に働く人に接し、質問や会話を交わせば、掲げた理念が本物かどうかもわかってくる。そして、働く自分自身が「自分の中で譲れないもの」を持ち貫くことが大切だと、力強く語ってくれました。

   若い教え子の2人が、パーパス経営を重視し、自分のキャリアとしっかり関連づけて働いていること。そして、学生たちがその後ろ姿に強く感化されて見る見る目の色が変わっていく様子に、私は感無量でした。

経営者のみならず、すべての組織リーダーが取り組むべし!

   近年、歴史ある大手企業が、品質不正問題や贈収賄問題などで社会や利用者からの厳しい評価に直面しています。その中には、自社の課題に正面から向き合い、信頼回復に向けて、自らの組織理念に立ち返り、さらに新たなビジョンを打ち出し、改革に歩み出している企業も見られます。

   しかし、時に現場では、経営が推し進める取り組みを「上から降りてきたもの」と捉えがちです。しかし大切なことは、現場で働くリーダーすべてが、経営者任せにせず、自社やチームのパーパスは何かを主体的に考え見出すことです。そして、それを自分自身の言葉で、メンバーに伝えることが必要です。

   経営トップ主導で自己改革を目指す企業では、社内や店頭に掲げたスローガンを目にします。「すべてはお客様のために」など、素晴らしい内容です。一方で気になるのは、その職場のメンバー全員が、この言葉を自分自身の中に落とし込み、具体的な日々の仕事や行動に表せているのかどうか。組織上層部からの指示で貼り出しているだけではなく、「自分ごと」にできているかです。

   組織のパーパスをメンバー間でしっかり共有し浸透させていくには、組織リーダーが、週礼や朝礼などの折々に、また普段の日常会話の中で、対話していくことが大切です。自社での具体的な仕事を取り上げ、理念に照らしてどう考え、改善や工夫をしていくか、語り合うことです。

   新春の年頭にあたり、ぜひ皆さんも「自社・自チームのパーパスとは何か?」をあらためて問い直し、自身のマネジメントに活かす挑戦をしてみませんか。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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