今年、FRBが利上げに踏み切るかが世界金融の一大イベント
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏も、第一生命経済研究所の藤代宏一氏と同様に、「FRBの利上げ打ち止め水準は5%程度」とみているが、「年内利下げの有無が金融市場の一大イベントになるだろう」と予測する。
木内氏はリポート「FRBのさらなる利上げ幅縮小への期待が高まる」(1月10日付)のなかで、FRBは「オーバーキル」を意識し始めたと指摘する。
「リッチモンド連銀のバーキン総裁は、利上げ幅縮小の動きは、経済へのダメージを抑えるのに役立つ、と発言している。
こうした発言は、FOMCの参加者が、物価高騰に対する警戒を依然として緩めていない中でも、利上げが景気を過度に悪化させてしまうオーバーキルのリスクには配慮していることを示していよう。こうした点から、FRBの利上げ局面の終わりが近づいてきている可能性は高まっていると考えられよう」
そして、今後の焦点は、利上げ打ち止め後も高い金利水準が来年まで維持されるのか、それとも今年後半には利下げが始まるのか、に移っているという。
「FRBは、金融市場での早すぎる利下げ観測の高まりは、長期金利の低下や株価上昇を通じて、金融引き締め効果を削いでしまうことを警戒している。そのため、年内の利下げ観測を強く打ち消す情報発信を意図的に行っているものと考えられる。
しかし、この先、米国経済の減速を強く示す指標が出てくれば、FRBもオーバーキルのリスクをより強く意識し始め、年内の利下げも視野に入るようになるだろう。その時点で米国の長期金利はさらに低下し、ドル安も進むことになる。これは、世界の金融市場での次の大きなイベントとなる。
そしてその場合には、日本銀行の年内の追加の政策修正にも制約がかかってくるはずだ」
日本銀行は新総裁のもと、否応なく世界の金融市場の荒波に飲み込まれることになるというわけだ。