2024年 4月 18日 (木)

「性格いいけど、非正規、貯金ゼロ...正社員も断る。こんな女性と結婚して大丈夫?」男性の投稿が炎上...「バリキャリと結婚したら」「専業主婦志向では」と賛否...専門家に聞いた(2)

   結婚相手に対する悩みを訴えた、年収600万円台の男性の投稿が炎上騒ぎとなっている。相手は年収200万円台の非正規雇用の女性。

   「30代なのに貯金もゼロ。正社員にならないかと職場から誘われているのに、断っています。こんなリスクヘッジもできない女性と結婚しても大丈夫だろうか」と心配なのだ。ただ、女性は気遣いができ、家事も得意、人にとても優しい性格の持ち主だという。

   この投稿には「お金に執着するならバリキャリ女性を探したら」という批判や、「彼女は専業主婦志向。収入増を期待しても無理」という忠告、さらに「正社員を目指さない生き方が素晴らしい」という称賛まで、ざわついた論争が起こっている。

   働き方に詳しい専門家に聞いた。

  • 幸せな結婚とは(写真はイメージ)
    幸せな結婚とは(写真はイメージ)
  • 幸せな結婚とは(写真はイメージ)

「家庭という制約がなければ、女性の8割が正社員として働きたい」

   <「性格いいけど、非正規、貯金ゼロ...正社員も断る。こんな女性と結婚して大丈夫?」男性の投稿が炎上...「バリキャリと結婚したら」「専業主婦志向では」と賛否...専門家に聞いた(1)>の続きです。

――「投稿者さんが悩まれている内容に時代の変化を感じた」というお話、たしかにそうですね。専業主婦が尊ばれていた昭和の終りごろまでは、予備軍の『家事手伝い』や『家事見習い』という肩書が女性誌の読者モデルでも、客室乗務員と並んで「花形」でしたよね。

   以前、会社ウォッチでも、「イマドキ大卒で『家事手伝い』ってアリ?」 娘の婚活望む母親の投稿、大炎上!そういうの、今はニートと言います...」(2021年12月13日付)という記事で取りあげましたが、「家事手伝いって何? 家事代行業?」と疑問を持つ若い人の意見が印象的でした。

川上敬太郎さん「おそらく専業主婦が少なくなり、結婚しても働く女性が増えた半面、働き方をどうしたらよいかという悩みも広がったといえるかもしれません」
リスクヘッジができない彼女の気持ちがわからず悩む男性(写真はイメージ)
リスクヘッジができない彼女の気持ちがわからず悩む男性(写真はイメージ)

――論争の背景には、投稿者から見て、彼女が正社員の道が開けているのに、低収入の非正規雇用を選択していることが理解できない点が挙げられます。川上さんが研究顧問をされている「しゅふJOB総研」で、なぜ非正規雇用を選んだのかといった問題を調査したことがありますか。

川上敬太郎さん「仕事と家庭の両立を希望する主婦層に、最も望ましいと思う雇用形態について尋ねたことがあります。

◇主婦が希望する雇用形態NO.1『短時間正社員』で働きたい?

すると、『短時間非正規社員』36%、『フルタイム非正規社員』7%で、あわせて43%が非正規社員と回答しました。『個人業務委託』5%を合わせると合計48%で、ほぼ半数になります。仕事と家庭の両立を考えると、非正規の働き方を希望する人は決して少なくありません。
一方、もし家庭の制約などがなく100%仕事のために時間を使うことができる場合に最も望ましい雇用形態について尋ねると、『フルタイム正社員』57%、『短時間正社員』26%で、合わせて83%の人が正社員という働き方を望みました」

「非正規の働き方が自ら選んだ本意なのか、不本意なのかが大切だ」

しっかり稼ぐバリキャリ女性を探したら?(写真はイメージ)
しっかり稼ぐバリキャリ女性を探したら?(写真はイメージ)

――つまり、家庭という制約がなければ、女性の8割以上が正社員として働きたい、ということですか。

川上敬太郎さん「はい。ただ、家庭という制約がなくても非正規で働きたいという人が一定数いるようですね。さきほどの質問に対して、望ましい雇用形態は『短時間非正規社員』5%、『フルタイム非正規社員』4%、そして『個人業務委託』5%だと答えています。全部合わせて約14%の人が非正規を選択しているのです。
それだけ選択する人の比率が少ない、「レアな」働き方だと言えます。投稿者さんの彼女がいまご家庭の制約を受けているわけではなく、100%仕事のために時間を使える状態なのだとしたら、全体の比率から見ると少数派なのだと思います。
ただ、逆に捉えればおよそ1割強は投稿者さんの彼女と同様の考え方の人がいる、ということになります。個々人の志向を大切に考える場合、比率の多少よりも、その働き方が自ら選んだ本意なのか、不本意なのかが大切なのだと思います」

――回答の中で一番多い意見は、投稿者が彼女に収入面で多くを求めすぎている、「リスクヘッジ」という言葉が出るほどお金に執着するのであれば、バリキャリの女性を探すべきだ、というものです。

川上敬太郎さん「回答者の方々がおっしゃっているのは、夫婦になるのであれば、お互いに完璧を求めるのではなく、足りないことがあっても支え合っていけばいいという考え方が大切なのではないかと感じました。
一方で、投稿者さんとしては、決して彼女に完璧を求めているわけではなく、結婚して生涯をともに過ごすのであれば、将来についてしっかり考えてくれている人でないと不安があるということなのかもしれません」

「世帯年収400万円でも幸せな夫婦、1600万円でも不満な夫婦」

働き方はさまざま(写真はイメージ)
働き方はさまざま(写真はイメージ)

――しかし、彼女の年収が200万円、投稿者の年収が600万円で、合計800万円あれば十分結婚生活を送れるではないか、という意見も多くありました。

川上敬太郎さん「世帯年収800万円であれば、結婚生活を送るには充分な金額のように感じます。しかし、どれくらいのお金が必要かは、人それぞれが求める生活水準や金銭感覚などによって大きく異なってくるため、一概には言えません。
なかには金額が半分の400万円でも幸せに生活できる人もいると思いますし、逆に倍の1600万円であっても不十分だと感じる人もいるはずです」

――正社員の道が開けているのにあえて非正規を選択する彼女の生き方については、賛否両論の意見が寄せられています。まず、「専業主婦志向が強く、向上心のないのでは」「気遣いができる、家事や掃除も丁寧にできる、という側面は婚活のアピールではないか」という厳しい見方さえあります。

川上敬太郎さん「彼女のことを批判的に見れば、そういう回答になるのだろうと思います。しかし、かなり推測や決めつけが入ってしまっているようにも感じます。大切なことは、彼女は自ら希望する道を選択しているか否かです。
彼女が投稿者さんに対してどのように振る舞い、どのような働き方を選択しているのかを含めて、すべては自己表現の一部です。それは、誰にでも認められていることであり、彼女自身が本意で選択していることであれば、責められることではないと思います」

   今回の結婚をめぐる投稿について、川上さんのアドバイスも熱を帯びました――。<「性格いいけど、非正規、貯金ゼロ...正社員も断る。こんな女性と結婚して大丈夫?」男性の投稿が炎上...「バリキャリと結婚したら」「専業主婦志向では」と賛否...専門家に聞いた(3)>にまだまだ続きます。

(福田和郎)

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