日本ブラインドサッカー協会(JBFA)主催の、クラブチーム日本一を決める「第20回アクサブレイブカップブラインドサッカー日本選手権FINALラウンド」が2023年2月11日、東京・町田市民総合体育館で開かれた。昨年12月から、全国22のブラインドサッカーチームが頂点をかけて激突。この日、パペレシアル品川とたまハッサーズの、いずれも東京のチーム同士が優勝杯を争った。保険大手のアクサ・ホールディングス・ジャパンは、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みの一環として、長年、障害者雇用やアスリートの支援に取り組んできた。なかでも、ブラインドサッカーは2006年から応援している。ブラインドサッカーに熱を込める理由を探った。障害者雇用や選手支援で「あたりまえに混ざり合う」職場世界的な保険大手のアクサグループは、インクルージョン&ダイバーシティ、多様性を進化する力にかえる企業文化の醸成にとても力を入れている。「インクルージョン」とは、包括・包含の意味。企業でいうと、すべての働く人が仕事に参画する機会を持ち、それぞれの経験や能力、考え方を認めて、活かされている状態をいう。その語源はアクサの本拠地・フランスで、ニートや若年層の失業者、障害者などが抱える経済的な格差、「社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)」の問題を解決していこうという取り組みから始まった。アクサ・ホールディングス・ジャパン(HD)傘下のアクサ生命は、障害者雇用を全社的に推進しており、2023年1月現在213人の障害者を雇用(雇用率2.59%)。障害のある従業員とない従業員が、「あたりまえに混ざり合い」、共に助け合って働く職場の実現を目指している。また、同社には、さまざまな障害者スポーツのアスリートが多様な部署に在籍している。パラリンピックやデフリンピックの日本代表クラスの選手には、トレーニングや遠征にかかる費用などを補助するほか、勤務時間の優遇や日本代表を引退した後を見通したキャリアプランをサポート。持続可能な教育(ESD)として日本ブラインドサッカー協会(JBFA)の体験型ダイバーシティ出張授業「スポ育」の講師としても活躍するなど、スキルと能力を活かして多様な場面で活躍できるよう、制度を整備している。アクサHDがブラインドサッカーを応援する背景には、こうした企業風土があるからだ。大会に従業員ボランティアを派遣、チームのすそ野拡大優勝した「パペレシアル品川」のチームのみなさんと、ゲストの元リヴァプールFCのジョン・バーンズ氏とじゅんいちダビッドソン氏、アクサHDの関係者(提供:鰐部春雄/日本ブラインドサッカー協会)ブラインドサッカーは、全盲のフィールドプレーヤー(選手、FP)4人がアイマスクを着け、晴眼者もしくは弱視者のゴールキーパー、敵のゴール背後には晴眼者のガイドが、コート中盤には監督が全盲の選手に声でガイドする。競技では、音の出るボールを使う。また、フィールドの選手は、控え選手やガイドの声とボールの音を頼りにプレーする(国内ローカルルールで、国内大会では選手は全盲以外でも出場できる)。第20回アクサブレイブカップの決勝戦は、前半13分に日本代表で主将を務めるパペレシアル品川の川村怜選手(アクサ生命所属)が、巧みなボールコントロールで相手ディフェンスを次々かわすと強烈なシュートを放ち、先制。つづく後半は、こちらも日本代表のエース、たまハッサーズの黒田智成選手(東京都立八王子盲学校教員)が切れっ切れのドリブルで、何度もゴールを脅かした。しかし得点は奪えず。試合は、川村選手の1点を守りきったパペレシアル品川が日本一に輝いた。アクサは、こうした大会などへ従業員ボランティアを派遣するほか、プレー環境の整備からブラインドサッカーの普及や認知向上、選手の雇用などに協力するほか、インクルーシヴな社会づくりを目指した出張授業「スポ育」も創設時から支援している。アクサは、日本選手権「アクサブレイブカップ」のメインサポーターであると同時に、大会会場では糖尿病の早期発見につながる弱視リスクの啓発活動を行う。また、ブラインドサッカーのクラブチーム創設を目指す志ある地域のリーダーを発掘し、独自にクラブ運営できるマネジメント力を身につけてもらうユニークなリーダー育成プログラム「アクサ地域リーダープログラムwithブラサカ」を2017年にJBFAと協働で創設し、継続している。ブラインドサッカーのすそ野を全国47と都道府県に広げ、普及や競技力向上の基盤づくりに力を注いでいる。この日も会場では、アクサがグローバルに支援している英プレミアリーグリヴァプールFCのレジェンドであるジョン・バーンズ氏をゲストに招き、たくさんの子どもたちと一緒にアイマスクを着けて、お互いにパスを出し合ったり、シュートしたりと、ブラインドサッカー体験会を開催(後援:町田商工会議所)。このほか、来場者は盛りだくさんのイベントで視覚障害への理解を深めた。3年ぶりとなった今回の大会は全席の有料化にチャレンジし、1000人を超える観客や関係者が会場を埋め、熱い声援で盛り上がった。ブラインドサッカーは「インクルーシヴ」な世界そのものアクサ損害保険株式会社社長兼CEO佐伯美奈子氏(提供:鰐部春雄/日本ブラインドサッカー協会)日本ブラインドサッカー協会(JBFA)の塩嶋史郎理事長は、「見えない人と見える人が一緒にプレーをするブランドサッカーは、すでにピッチの上にインクルーシヴな社会が反映されている競技でもあります」と、力を込める。アクサ・ホールディングス・ジャパンの安渕聖司社長兼CEOは、「2021年の東京パラリンピックを経た今だからこそ、わたしたちはブラインドサッカー伝道の担い手として、JBFAが掲げる、『視覚障害者と晴眼者があたりまえに混ざり合う社会』の実現の機運を『行動』によって盛り上げていくことが必要であると、強い思いを持っている」と話している。アクサが「ブラインドサッカー」を応援するワケは、ブラインドサッカーというスポーツが、「目指すべきソーシャル・インクルージョンの世界そのもの」だからだろう。大会の閉会式で挨拶に立ったアクサ損害保険の佐伯美奈子社長兼CEOは、「来年(2024年)は五輪・パラリンピックが、アクサの本拠地であるフランスのパリで開かれます。わたしは、このご縁がとても強いものであると確信するとともに、今日(こんにち)のさまざまなブランドサッカーの取り組みが、また次のインクルージョンの一歩につながっていくと感じています」と語った。4チームでスタートした日本選手権も、いまや北海道から九州、沖縄まで22チームが出場している。ブラサカが全国に普及し、参戦するチーム数が増えて、アクサブレイブカップが活気あふれる大会として盛り上がることこそが、インクルーシヴな社会の実現に向けたマイルストーンなのかもしれない。(J-CAST会社ウォッチ編集部)3健康な生活と福祉4質の高い教育をみんなに10不平等の是正16平和で包摂的な社会17パートナーシップで目標を達成しよう
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