2024年 3月 28日 (木)

「働き方」に不安抱える大学の研究者...契約状況は「無期」と「有期」、どちらが多いのか?(鷲尾香一)

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   大学の研究状況を探る連載も最終回となった。今回は文部科学省の「研究者・教員等の雇用状況等に関する調査」から大学研究者の雇用状況を取り上げ、日本の大学の研究者はどのような雇用状態にあるのかをみてみよう。

無期労働契約38万2905人 有期労働契約36万4588人、うち特例対象11万9062人

   文部科学省は2023年3月31日、「研究者・教員等の雇用状況等に関する調査」(令和4年度)の調査結果を公表した。この調査には、条件がある。

   (1)研究者等であって研究開発法人または大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約を締結している

   (2)研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の研究開発等に係る運営および管理に係る業務(専門的な知識および能力を必要とするものに限る)に従事する者であって研究開発法人または大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結している

   (3)大学の教員等の任期に関する法律(任期法)に基づく任期の定めがある労働契約を締結した教員等

   以上3項目のうち、いずれかの条件を満たし、「無期転換申込権」の発生までの期間を10年とする特例が適用されている研究者・教員等を対象としている。調査では、国立大学、公立大学、私立大学、大学共同利用機関法人、研究開発法人のうち820機関から回答を得た。

   説明を加えておくと、「無期転換申込権」とは、同一の使用者との間で有期労働契約が5年を超えて更新された場合、労働者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる権利のこと。

   ただし、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者については有期労働契約を10年まで延長する特例が認められており、研究者などはこれに該当する。

   前置きが長くなったが、今回の調査結果によると、回答機関全体の労働者74万7493人のうち、無期労働契約者は38万2905人(51.2%)、有期労働契約者は36万4588人(48.8%)、このうち特例対象者は11万9062人(15.9%)だった。

   そして、特例対象者となっている研究者は1万4787人となっている。つまり、特例対象者となっている研究者は、有期労働契約であり、非正規雇用者に近い労働者ということだ。

   その所属機関別の内訳では、国立大学が8061人と最も多く、次いで研究開発法人の4381人となっている。(グラフ1)

   そのうえ、この特例対象者のうち、雇用契約上の契約更新回数や通算勤続年数の上限が10年以下と、制限が設けられている研究者は9805人にも上った。すなわち、これらの研究者は、事実上10年を上限に雇用契約が終了することを意味する。

   所属機関別の内訳では、国立大学が6046人、研究開発法人が1938人、私立大学が1214人などとなっている。(グラフ2)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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