ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンの世界一に貢献したラーズ・ヌートバー外野手(カージナルス)の人気が留まるところを知りません。WBC前はほぼ無名だったヌートバー選手。レギュラーの座をめぐって熾烈な争いが予想されていましたが、ふたを開けてみたら打率3割の大台に乗せる好調ぶり。「カージナルスで最も信頼できる選手」と、評価もうなぎ上りです。連日のようにヌートバー選手の話題がメディアを賑わすなか、華麗なる「辣腕実業家」の家系にも注目が集まっています。ヌートバー選手「今、人生で最高の時を過ごしている」米大リーグ・カージナルスのラーズ・ヌートバー外野手は、WBCで日本代表の世界一に貢献して一躍人気者になりました。2018年にドラフト8巡目でカージナルスに指名されたあと、21年にメジャー初昇格。22年の後半から1軍の試合に出る機会も増えていましたが、とりわけ外野手の層が厚いとされる同チーム内では、あくまでも「準レギュラー」の位置づけでした。WBCがきっかけで日本での人気が沸騰。テレビCMに2本出演していると話題になっていますが、辛口の米メディアは、「人気よりも実力がすべて。果たして、レギュラーの座を獲得できるかどうか」と、様子見ムードが漂っていました。ところが、シーズン直後に突き指をして戦列を離れていたヌートバー選手が、復帰後にヒットやホームランを量産してチームの勝利に貢献し始めると、米メディアが一気に方向転換! 「ヌートバーは世界の宝だ!」と、興奮気味に報じるまでになっています。LarsNootbaarisaninternationaltreasure(ラーズ・ヌートバーは世界的な宝物だ:米野球サイト)記事では、ヌートバー選手が「oneoftheteam'smostreliableperformers」(チームで最も信頼できる選手の一人になった)と、その実力を高く評価していますが、実力だけならもっと素晴らしい業績を残している選手はたくさんいるはずです。スター選手がひしめくメジャーリーグのなかで、とりわけヌートバー選手が「winningtheheartsandmindsofeveryone」(みんなの心を奪っている)のは、その「人柄」だと大絶賛しています。WBCで世界中の人々が目にしたのは、ヌートバー選手が大舞台でプレーできる喜びを全身で表す姿でした。百戦錬磨のプロ選手に交じって、まるで少年のように全力でプレーするヌートバー選手のエキサイトぶりが、画面を通じて世界中に「infectious」(伝染)。WBCの成功につながった、と伝えています。さらに、ヌートバー選手の「人柄」がにじみ出ているとして、次のようなコメントを紹介しています。I'mhavingthetimeofmyliferightnow(僕は今、人生で最高の時を過ごしているんだ:米野球専門メディア)ヌートバー選手によると、誰もが「ゲームを楽しんでいるように見えるね。いつも笑っているし、楽しんでいるみたいだよ」と聞いてくるそうです。それに対してヌートバー選手は「そりゃそうだよ。だって、野球選手になるのは僕の夢だったんだ。楽しんでいるのは当たり前だよ」と反論! 「みんな、僕のことをからかっているのかな?」と笑いながら、「今、人生で最高の時を過ごしている」と語ったそうです。たしかに、子どもの頃からの夢をかなえてメジャーリーガーになり、そして日本代表の一員としてプレーすることは、ワクワクする体験でしょう。「夢が現実になったんだ。楽しくて当たり前だよね?」という、ヌートバー選手の素朴な疑問も理解できます。それでも、ヌートバー選手が世界中の人たちの心を奪い、目が肥えた本場米国の専門記者が「世界の宝」だと称するのは、夢をかなえた喜びを素直にエンジョイする姿が、多くの人が忘れていた人生の価値を思い出させてくれるからではないでしょうか。「LarsNootbaarisarisingstarinMLB」(ラーズ・ヌートバーはメジャーリーグの輝く星だ:メジャーリーグ公式サイト)といった報道が米国で増えているのは、ヌートバー選手の「人柄」が「伝染」している証だとも言えます。ヌートバー・グループのCEOって誰?米メディアの関心は「辣腕実業家」の家系にヌートバー選手といえば、お母さんの久美子さんとの仲良しぶりが有名です。先日、母の日に行われたスペシャルイベントでも、久美子さんとオンラインで対面して、感極まって涙ぐむヌートバー選手が話題になっていました。そんななか、米メディアが「ほとんど知られていない」という父親・チャーリーさんについて報じている記事を発見! 成功したビジネスマンのチャーリーさんは、「息子のフィーバーぶりにも関わらず、おどろくほどひっそりと過ごしている」と、伝えています。WhoisLarsNootbaar'sfatherCharlieNootbaar?(ヌートバー選手の父・チャーリー・ヌートバーはどんな人?:米メディア)チャーリーさんは、オランダ系、イングランド系、ドイツ系のアメリカ人で、なんと、南カリフォルニアを拠点に活躍している「highlyaccomplishedbusinessman」(非常に成功したビジネスマン)だそうです!ところがこの記事、よく読んでみたら怪しげな情報が混じっているではありませんか! チャーリーさんのことを「不動産開発・投資会社ヌートバー・グループのCEO」と紹介していますが、LinkedInの自己紹介によると、「アスリートの育成」をする会社の共同経営者を務めたり、「ゴルフやスポーツ用品の輸出入」「いろんな製品の製造」をしたりする会社「CNIコーポレーション」を経営しているようです。会社の規模はわかりませんが、「CNIコーポレーション」は28年以上も続いているらしいことから、ヌートバー選手が社長の息子、つまり「御曹司」として育ったといえなくもなさそうです。さらに家系をさかのぼると、ヌートバー選手の曽祖父にあたるハーバートさんは農業ビジネスで成功した実業家で、勲章受賞歴もあるとか。ハーバートさんは慈善活動にも深く関与していて、なかでもヌートバー選手の母校でもある南カリフォルニア大学(USC)に多額の寄付を行い、「HerbertV.NootbaarBaseballOffice」と自身の名前を冠したオフィスがあるというから驚きです。過去には、大学生だったヌートバー選手が、「ヌートバー」の名前がついたオフィスでインタビューを受けたこともあったようです。そんな華麗なる実業家の家系で育ったヌートバー選手。父親のチャーリーさんは、会社を経営する傍らで子育てにも積極的に関与。ヌートバー選手の最初の野球コーチはチャーリーさんだったようで、米メディアはチャーリーさんがヌートバー選手に与えた影響を、次のように伝えていました。AsLarscontinuestomakesignificantstridesintheMLB,itisevidentthathisfatherhasplayedaninstrumentalrole(ラースがMLBで大きな進歩を遂げ続ける中、彼の父親が重要な役割を果たしていることは明白だ)playaninstrumentalrole:重要な役割を果たすそれでは、「今週のニュースな英語」は、この「playaninstrumentalrole」(重要な役割を果たす)を使った表現を取り上げます。TOEIC頻出表現の一つですから、覚えておきましょう。Waveenergycanplayaninstrumentalrole(波力発電は重要な役割を果たすことができる)WillSmithplayedaninstrumentalroleinhisnewfilm(ウイル・スミスは、新しい映画で需要な役を演じた)TheRussellGroupplaysaninstrumentalroleinAItechnology(ラッセルグループは、AI技術において重要な役割を果たしている)米メディアが指摘しているように、メディアがヌートバー選手やお母さんの話題を取り上げるなか、「驚くほどひっそりと目立たないポジション」をキープしているチャーリーさん。ビジネスで成功した父親と「親友」の母親。専門家が絶賛する「人柄」の源泉を垣間見た気がしました。(井津川倫子)
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