「早く寝なさい」が思考力奪う!? 脱「ゆとり・百ます計算」の教育

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   <テレビウォッチ>前の年、小学校6年生で教えられていた事柄を、翌年は4年生が学ばなければならないとなれば、生徒たちも戸惑う。今年(2009年)の4年生は、算数の授業などでそんな目にあっているらしい。

   3年生のとき十、百で足りていた数字の桁が一気に億、兆になれば、ついて行けなかったり、文章問題で頭をかかえたりもする。そうでなくとも、カリキュラム内容が抽象化する10才前後では、学習につまずく子どもの割合が倍増するという。でも克服しなければならない。というわけで、今回のテーマは「『10才の壁』を乗り越えろ」。

命令でなく一緒に考える

   なぜ、学習内容の前倒しが行われることになったかといえば、どうも『ゆとり教育』が背景にあるようだ。スタジオゲストの佐藤学・東大教授は「考える力を育てる教育をすると言いながら、一方では、抽象的な内容の問題を中学、高校に先送りして教育レベルを下げてきた」とし、その結果、考える力が十分、育たなかったのだという。

   考える力不足については暗記やスピードを重視する反復学習のやりすぎも影響があるらしい。教育アドバイザーは、百ます計算を驚異的に速くこなしても「全く意味がない」と苦言を呈する。また、別の専門家は「倍ということばが出てくると反射的に掛算と思ってしまう。実は割り算の場合もある。与えられた問題の場面を頭の中で描けないと、それまで学習した概念や知識を使えない」と話す。そして、もう1人の専門家は、「早く寝なさい」「早くしなさい」「お風呂に入りなさい」とか親の一方的な指示を受ける、会話の少ない日常生活もコミュニケーション不足を招いて考える力を奪うことになる、と指摘する。

   考える力を高めようとする実践的な取り組みも番組は紹介してくれる。(1)「絵解き文章題」と(2)「学び合い」だ。(1)は文章問題を先ず絵にしながら考える。「工夫して絵を動かして自分で論理的に分かりやすく答えまで導く」(塾経営者)。(2)は出された答えが、どうしてそうなるか、プロセスを含めて分からないところを、子どもたちみんなで話し合って解決して行く試み。先生は「コミュニケーションが活発になり思考力も高まる」と述べる。

   では、「家の中で考える力をつけるには?」と問う国谷裕子キャスターに、佐藤教授は、「思考力の1番、基になるのは、ことばの能力とことばの経験。その場合に必要なことは、命令形ではなく、聞いてあげて一緒に考え合うこと。もっと大切なことは、読書の量を増やすこと。出来れば、親も一緒に読書する時間をもっていただきたい。それが『10才の壁』の抽象化する思考力を支える大きな基盤となる」と語った。

   『詰め込み教育』から『ゆとり教育』そして『教育強化』へと、方針が変わる都度、翻弄される子どもたちが気の毒に思えた。

アレマ

* NHKクロ―ズアップ現代(2009年6月18日放送)
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