自己責任論の呪縛 「相談=負け組」発想の諸形式

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<テレビウォッチ>生活保護を受けてネットカフェに寝泊まりし、職探しを続ける北九州市の男性(32)が登場する。今夜(1月21日)は09年10月に放送された「『助けて』と言えない―いま30代に何が」の続編。

   前回、男性は、精密機器メーカーの非正規労働者だったが、リストラで仕事を失ってホームレスになり、2日間に100円のパン1個という暮らしをしていると紹介された。その中で彼が「自分が悪い。それ以外の言葉はない」と言ったところ、共鳴する書き込みが3日で2000件以上あったという。

「助けてもらう」発想なかった

   「今の自分は努力しなかった結果だ。つい自分を責めてしまう」「相談すれば負け組になる」「1度でも助けを求めたらそこで終わり」……。「自己責任論」のオンパレードである。

   番組は、ブログに感想を寄せた人を訪ねる。38才の男性は元編集者。30才で副編集長に抜擢されたが、「売れる本をつくれ」と次々にノルマを課されて鬱病になり、2008年、出版社を辞めた。今、彼は「自分に足りない部分があって成果が出せなかった」と述べる。

   もう1人は37才の女性。就職氷河期の1995年、化粧品会社の正社員として採用される。が、成果主義の下、結果を出さないと「代わりはいくらでもいる」と罵倒される。そのうちに母親が体調を崩し、世話をする必要に迫られる。会社に迷惑をかけると介護休職もとらなかったが、結局、仕事を続けられなくなり会社を辞める。女性は「助けてもらうという発想がなくて必死で走っていた」と話す。

   先の北九州市の男性に支援の手を差しのべようとする、ホームレス支援NPOの代表は、「リーマンショック以降、まだ家族との関係が身近にあると思われる若者たちが、家族の所に帰れないで自分が頑張るしかないと路上で佇む姿が見受けられた」とし、その背景を「彼らの中学生くらいからが自己責任論の時代で、責任を果たせない人間は人前にも、親の前にも立てないと、彼ら自身も呪縛された」と見る。

「伴走的に支援して」

   これについてスタジオゲストの平野啓一郎(作家)は「子どものときから親に知ってもらっている息子でいたい。そこの自分はきれいなままで取っておきたい」のだと説く。

   北九州の男性も「元気なのにお金を貰うのはおこがましい」と、正社員の口を探すけれども、住所がないために採用されない。アパートを借りたくても生活保護の7万9000円では敷金も貯まらず、保証人も見つからないのが現実だ。

   では、どうすればいいのか。NPOの代表は、「自己責任論は、社会の側や周りの人たちが助けないための論理」だとし、「生活保護とかハローワークとかの受け皿も大事だが、それをつないでいく人の役割がもっと大事。伴走的に支援して行くコーディネートの役割が社会的に保障されなければいけない」と語る。

   平野は、「今きたした善意をこぼさないように」携帯や電子マネーを利用し、控除面の優遇も含めて、放送中にでも直ちにNPOなどに寄付できるしくみを提案する。

   いずれの訴えも制度の確立まで時間がかかりそうだが、実現を待ちたい。30代が痛むのは、国にとっても深刻な問題だから。

アレマ

   *NHKクローズアップ現代(2010年1月21日放送)

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