島田紳助の首と引き換えに吉本興業が描く筋書

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   島田紳助の突然の芸能界引退には驚いた。いろいろな話を総合すると、引退の理由は次のようだ。

   10数年前、「紳助の人間マンダラ」という番組で、トロトロ走っている右翼の街宣車に文句をつけ、「菊の御紋」を侮辱するような発言をしたことを自慢そうに話したことがあったそうだ。それに稲川会系の右翼団体が激怒し、連日、抗議行動をするようになった。困った紳助が、知人の元ボクシング世界チャンピオン・渡辺二郎(2007年に恐喝未遂で起訴、上告中)経由で、山口組系の極心連合会・橋本弘文会長に解決を依頼し、事なきを得、それが縁で、付き合いが深まっていった。

   今回、2人の親密さをうかがわせる携帯メールを、吉本興業の経営陣から突き付けられ、紳助は引退を決意したそうだ。これは詐欺罪で起訴され、上告中のタレント羽賀研二の恐喝未遂事件を捜査していた警察が押収した資料の中にあり、警察から吉本側に事実確認があったのだろうと推測される。

   紳助は会見で、「僕の中ではセーフだと思っていた」「この程度で引退しないといけない。芸能人は注意してほしい」と、それほど親しい関係ではなかったことを強調し、6本ものレギュラーを抱え、芸能界で築いてきた地位を、「この程度のスキャンダル」で捨て去る自らの潔さをアピールしていたが、本当にそうなのだろうか。

大慌てで引退劇突っ込んだ「週刊文春」「週刊新潮」

   会見直後からネットには、木曜日発売の「週刊文春」か「週刊新潮」がこのことを記事にしているから、発売前に引退会見をしたのだろうという期待を込めた憶測が溢れた。今朝(2011年8月25日)、朝刊を広げて新潮と文春の広告を見た。新潮は「暴力団で墓穴『島田紳助』の真っ黒な履歴」と誌名に被る形でなんとか細長く入れ、文春は「『黒い携帯メール』全文入手!島田紳助芸能界追放!本誌が掴んだ全真相」と特筆大書。さっそく駅のキオスクで買い求め読んでみるが、新潮は小さなコラム記事、文春も広告の大きさのわりにはわずか1ページ半で、最終校了日に締め切り時間を延ばして突っ込んだ記事である。しかし、あわてて作った記事にしては要所は押さえてある。文春の底力だろう。メールは以下のような文面だったようだ。

「橋本会長が(紳助が)ミナミでやっている店に来てくれた。(代金以上の)大金を置いて帰ったんやけど、どうしたらいいんかな」
「今日橋本さんの顔を見ました。元気そうでほっとしました」

   一見何でもない内容だが、文春によると2人は家族ぐるみの付き合いだったそうだ。

「橋本氏は紳助さんを神戸まで連れていって、ブティックで買い物をさせたりしていました。(中略)また、紳助さんの大阪の自宅でホームパーティを開いた際には、橋本氏を招待したこともあるなど、家族ぐるみの関係を続けていました」(紳助の知人)

   その橋本会長も05年に競売入札妨害容疑で逮捕されている。大阪府警が家宅捜索を行ったときの模様を、ジャーナリストの森功氏が語っている。

「府警の刑事によると、橋本会長の妻と紳助がスナックで撮った写真や、紳助が彼女にあてた直筆の手紙も押収したそうです」

   今朝のスポニチ(スポーツニッポン)が「うそバレた紳助 山口組No.4との同席写真あった」と1面で書いているのはこのことだろう。自宅の地元住民とのトラブルの時も、「ウチには、山口組も出入りしとるんや」と言い放っていたようだ。

   会見直後、紳助は潔く引退することで「あいつカッコいいやん」という雰囲気をつくり、自分の番組「行列のできる法律相談所」でスターに仕立て上げ、大阪府知事にまでなった橋下徹と組んで、政治家になることを目論んでいるのかと邪推したが、どうやらそれも難しそうである。スポニチで橋下知事がこう話しているからだ。

「大阪府でも暴力団排除を掲げている。僕はその旗振り役。『あれくらいの付き合いぐらい、いいじゃないか』とは、言えない」

警察はひとまず自浄努力注視

   では、紳助の引退で、こうした黒い交際が芸能界から一掃されるのだろうか。答えは「ノー」である。今回の「事件」を見ていて、先に起きた大相撲の暴力団がらみの野球賭博問題にどこか似ている気がしてならない。あれは相撲界全体の問題だったが、今回は吉本興業という日本一のお笑い芸人を抱える会社と暴力団とのしがらみに、警察がメスを入れようとしたのではないのか。

   07年、吉本興業前会長・林裕章の未亡人・林マサが新潮に告発手記を書いた。その中でマサは、漫才師・中田カウスが山口組5代目渡辺芳則会長と懇意にしていて、ことあるごとにそれをひけらかし、吉本を牛耳っていると批判した。本人はそうした関係を否定したが、その後、カウスの乗っている車が何者かに襲われるなど、不可解な事件が起きている。

   美空ひばりと山口組三代目田岡一雄組長とのことを出すまでもなく、興行界とヤクザの関係は、相撲界と同様長く根深い歴史がある。吉本としては、紳助を引退させることで、これ以上警察から「吉本の芸人と暴力団との不適切な関係」を追及されるのを避けたかった。警察側はひとまず吉本の自浄努力を見た上で、今後どうするかを決める。そうとでも考えないと、この不可解な突然の引退劇の説明がつかない気がするのだが、私の邪推しすぎだろうか。横澤彪氏が生きていたら、そこのところをじっくり聞いてみたかったと残念でならない。

「前原首相」なら違法献金で追い詰められ、早期解散・総選挙

   さて、紳助の引退で影が薄くなった前原誠司前外相の代表選出場だが、「B級グルメ」乱立する中で「A級グルメ」のお出ましだ。本人は「待ってました」と大向こうから声がかかると思っていたのではないかと推測するが、各誌の前原評は散々である。「週刊朝日」は「小沢側近が虎視眈々と狙う『本当の勝負は首班指名だ』」で、民主党関係者がこう話している。

「前原さんなら、小沢さん側とも組めるでしょう。というのも、前原さんがそれを望んでいるフシがあるからです。『増税』と『マニフェスト』で折り合えば、あとは閣僚などのポストで話をつけるか、もしくは小沢さんの党員資格停止処分の解除か」

   何のことはない、反小沢の旗を降ろして軍門に下ることで、総理の座を手に入れようというのである。しかし、もともと自信家で人のいうことを聞かない前原が総理になれば、小沢側と揉めるのは時間の問題だろう。小沢もそこは承知で、本当の小沢の意中の人物は原口一博前総務相だと朝日は読む。

   「サンデー毎日」は「仙谷・前原・野田を粉砕 小沢のウルトラC『海江田代表』『亀井首相』」という奇手を小沢が考えているという。「週刊ポスト」は「小沢一郎を18年間抹殺し続ける日本というシステム」で、日本の政治を研究してきたウォルフレンに、小沢を総理にせよと語らせている。

   文春は「前原誠司お騒がせ『ナルシスト伝説』」で、高校時代にピッチャーだったときの大暴投の話や、大学で塾の講師のアルバイトをしていたとき、文集に書いたポエムを引っ張り出し、その当時からナルシストだったと書いている。代表時代の「ガセメール」事件で、就任半年で辞任に追い込まれ、外相時代は在日韓国人女性から5年間で計25万円の献金を受けていた問題で、これまた就任半年で辞任している。めでたく総理の座を射止めても、2度あることは3度ある?

   新潮は「特攻精神『前原新総理』ならば爆発炎上3分前!」というタイトルをつけ、先の違法献金問題がある限り、総理になっても野党が追及すること必至で、先行きは明るくない。その時は早期に解散総選挙へ打って出ることが考えられ、「暴走機関車・新総理」誕生は、わが国を極めて不穏な旅路へと誘うことになりかねないとしている。前原は鳩山由紀夫や小沢と次々に会って支持を訴えているようだが、うまくいってはいない。どちらにしても、小沢が誰を選ぶかにかかっているようだし、誰が選ばれても、小沢の顔色を伺う政権になることだけは間違いないようだ。

3・11危うく炎上まぬがれた千葉・市原の劣化ウラン33缶

   最後に、朝日の「3・11首都圏はウラン燃焼寸前だった 新しい『放射能危機』放置された劣化ウラン」も注目記事である。東日本大震災の直後、千葉県市原市のチッソ石油化学五井製造所と隣接するコスモ石油千葉製油所で、液化天然ガスタンクが燃える大火災があった。大火災の炎は隣のチッソ石油化学へ延焼し保管倉庫を焼いた。その倉庫にあったドラム缶33本はかろうじて難を逃れたが、ドラム缶の中には総量765キログラムの劣化ウランが入っていたというのだ。もしこれが燃えていたら、取り返しのつかない放射能汚染を引き起こしていた。また、こうして放置された放射性廃棄物、または保管している研究施設は全国に数多くあり、その実体はわからないのだそうだ。これは下手なホラー映画よりもはるかに怖い話である。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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