裸の王様アメリカと闘ったモハメド・アリ!世界チャンピオン捨てても抗議しつづけた黒人差別とベトナム戦争

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   今月(2016年6月)3日に亡くなったモハメド・アリ(ボクシング元ヘビー級チャンピオン)はスポーツ選手としてだけでなく、人種差別や戦争と闘う姿が尊敬された。きっかけは世界チャンピオンになった直後の1964年、黒人の解放を訴えるイスラム教に改宗したことだった。名前もカシアス・クレイからモハメド・アリに変えた。

   当時、アメリカで黒人差別は根強く、飲食店や乗り物などで黒人は入店や乗車を拒否された。その差別への抗議の声を黒人自身が上げたということで、アリへの声援は罵声に変わったが、アリの信念は揺らがなかった。

   そして、1966年には徴兵を拒否した。アリは9度の王座防衛に成功していたが、ボクシング・ライセンスをはく奪され、裁判所から禁固5年、罰金1万ドルを言い渡される。当時、アリのプロモーターだったボブ・アラム氏は、「アリが正しく、われわれ全員が間違っていたのです」と振り返る。連邦最高裁が有罪判決を破棄したのは71年のことだった。それをきっかけに、アメリカの世論はアリを支持するようになり、96年のアトランタ五輪の開会式では聖火ランナーも務めた。

「ベトナムに爆弾落とせない」兵役拒否で暴いた愛国心のウソ

   作家の高橋源一郎さんが言う。「60年代のアメリカですから、今から想像しにくいと思うんです。とくにアメリカっていう国は愛国心を持つことがスタンダードになっていて、当時、黒人の権利を獲得する公民権運動を進めている人たちだって『愛国心はOK』というなかで徴兵を、拒否した。その理由は『(自分と関係ない)ベトナムの人たちに爆弾を落としてはいけない』というものでした。

   しかし、この発言には続きがありまして、『実はアメリカは黒人にも爆弾を落としている』っていう論理です。つまり、『(白人じゃない)アジア人だから爆弾を落としているんだ』みたいなニュアンスですよ。これは言っちゃいけないことだったんです。アリはアメリカ人が見て見ぬふりをしていた、ここに触れるとヤバいということを非常に簡単な言葉で言っちゃった。

   その数年後に世界中でベトナム反戦運動が盛り上がって、実際にアメリカは戦争を止めて、アリが正しかったことになったわけですが、当時は誰もアリを支持しませんでした」

   杉浦友紀キャスター「むしろ『悪』になってしまったわけですよね」

   高橋さん「それは本当に孤独な戦いだったと思います。作家とかミュージシャンとか、言葉を持つ人はたくさんいたのに、実際にアリのような目にあった人はほとんどいない。そういう意味では、一スポーツ選手が国家を揺るがしたということですね」

アリの時代よりもの言いにくい50年後のいま

   杉浦キャスター「思ったことを言えないというのは、今でさえそうだと思います」

   高橋さん「もしかしたら、アリが生きてた時代よりもっとひどくなってるかもしれません。アリが言ったのは『アメリカっていう王様は裸だ』っていうことでした。それを言ってビックリさせたわけですけど、いまどの国でも『王様は裸だ』って言えるか。アリみたいな人がいるのか。お前がアリになれるのかって言われたら、ビミョーって言うしかないですね」

   杉浦キャスター「今こそアリが必要かも知れないということですね」

ビレッジマン

NHKクローズアップ現代+(2016年6月13日放送「モハメド・アリ 『史上最強伝説』の真実)
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