2018年 11月 16日 (金)

設楽悠太「1億円日本記録」まったく新しいマラソンの勝ち方

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   25日(2018年2月)に行われた東京マラソンで、設楽悠太選手が16年ぶりに日本記録を更新した。2時間6分11秒。途中、足の痛みを抱えながら、終盤に見せた驚異の快走はなんだったのか。

   これまでの日本記録は2002年、高岡寿成選手の2時間6分16秒だった。5秒に16年かかった。マラソン解説者で、五輪選手を指導してきた金哲彦さんは、「止まっていた時計が動き出し、いろんな選手に勇気を与えた。100メートルで10秒を切るのと同じくらいの価値がある」という。

40キロ地点で右腕に付けたアクセサリー

   設楽選手はスタート前の取材で、目標は「9分台」と答えていた。そのレースの様子を、本人と映像を見ながら振り返った。5キロ地点では先頭集団におらず、ペースメーカーの村山紘太選手と並んでいた。10キロ地点で足の痛みに襲われていたが、こらえて先頭集団に追いつく。

   この痛みについて、「分からなかったが、何も考えずに最後まで走った。辛かったです」と語り、レース後に「疲労骨折の治りかけ」と言われたという。出場レースが多かったための披露骨折らしい。

   20キロで、一時、外国人のペースメーカーより前に出たが、31キロ過ぎに先頭集団から遅れ始めた。「外国人選手のペースが速かったので、無理してついていく必要はないと思いました」と冷静だ。40キロに近くで、昨年(2017年)のレースで負けた井上大仁選手(世界選手権ロンドン大会日本代表)を抜き3位に上がった。その後の2キロの間に、4回も大きく後ろを振り返った。「井上選手が気になりました。まだ、日本記録は意識していなかったですね」

   40キロの給水ポイントで、ドリンク容器についていた何か黒っぽいものを右の二の腕にはめた。ここから急に腕の振りが大きくなり、ケニアの選手を抜いて2位に。何の魔法だったのか。スタジオで披露したのは、青いビニールに「LAST FIGHT」と書かれイラストがある。かなり大きい。イラストは設楽の走る姿の画だ。自分で描いた。

   「マラソンを走るとき、いつも姉が作ってくれます」と話す。本来は、ドリンクのボトルが目立つための印なのだが、姉が書いた「LAST FIGHT」の文字を見て、今回はボトルから外して腕につけた。「力をもらいました。家族の思いと一緒にゴールしたかったので」

「練習で30キロ以上走らない」「高地トレーニングはしない」

   そしてゴール。倒れこんで立ち上がれなかった。足の痛みが限界だったという。しかし、その後の会見で「まだ1、2分は記録は伸びる」と言い放った。理由は設楽の「自分流」だ。「練習では30キロ以上は走らない」「高地トレーニングはしない」「野菜は嫌い。お菓子が大好き」を貫く。「走り込んで結果を出すのは昔の話。効率よく練習することがマラソンで結果を残す近道だと思います。昨年9月、ハーフマラソンの日本記録を出した時から、練習方法を変えました」という。

   日本のマラソン界は、今までのやり方で自信を失いかけていた。今回、設楽が自分のやり方で結果を出したインパクトは大きい。この2か月で5回もレースに出ているが、4回は22.4キロ、13キロ、21キロ、16キロとどれも短い。ただ、「レースの3日前には必ず25キロから30キロの長距離走をします」

   金さんは「これもこれまでとは違いますね。レースが近づくと、スピードは上げるが、長い距離は走らなかったんです。逆ですね」と解説する。

   双子の兄の啓太さんも陸上選手だ。ずっと兄の陰に隠れていたというが、東洋大では箱根駅伝で3回の区間賞に輝いた。そして、兄にも勝つようになった。その兄は昨年故障して、次の琵琶湖マラソンで復活をかけるそうだ。「双子でなかったら陸上を続けてなかったですね。兄貴の復活を信じています」

   東京マラソン1位のディクソン・チュンバ選手(ケニヤ)のタイムは2時間5分30秒だった。設楽とは41秒も違う。いかに日本記録おめでとうの番組とはいえ、これに触れなかったのは納得できない。世界での位置づけをきっちりと示さないと話がおかしくなる。

   *NHKクローズアップ現代+(2018年3月1日放送「東京五輪へ"新星"登場!~マラソン日本新・設楽悠太~」)

文   ヤンヤン
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