交通安全教室で痛ましい事故が起こった。12日(2019年4月)、京都市の中学校校庭で約570名の生徒や関係者が見学する中、交通事故を再現していたスタントマンの中村佳弘さん(34)がトラックの下に巻き込まれたのだ。中村さんは病院に搬送されたが、頭と胸を強く打っており、死亡が確認された。
リアルな恐怖感を実感させ、効果を得る教育法を「スケアード・ストレート(scared straight)」という。「scared」は怖がる・おびえるという意味だ。米国で子どもたちを刑務所に連れて行き、受刑者たちの生活を見せることで、罪を犯すとどうなるかを実感させることが始まりだ。
業者を入札、スタントマンの質の低下が心配
日本では、交通事故を目の当たりに見せようと、30年ほど前から交通教育で活用されるようになった。スタントマンによる実演は、事故に至る前の段階から見せているため、人形での再現などとは違い、「キャー!」という悲鳴が子どもたちから上がるという。教育効果が高いため最近発注が増え、10年ほど前から交通安全教室の主流になってきている。
今回は歩行者と3トントラックの接触再現で事故が起きた。走るトラックの下にしがみつく歩行者に、運転手が気付かないという設定だが、亡くなった中村さんは演技中にバンパーから手を離し、巻き込まれてしまった。
番組の解説依頼に協力した、交通指導で年間300件のスタントマン派遣を行っている会社の代表によると、今回の事故を防ぐポイントはいくつもあったという。
まず、トラックが走り出すタイミングだ。歩行者役のスタントマンがバンパーをつかんだのをドライバーがミラーで確認してからだ。スタントマンの姿勢も重要だ。足を広げてたり、横を向いたりすると前輪タイヤに足を踏まれるので、姿勢もチェックする。そして、走り出した後もスタッフがしっかり見ていて、歩行者役の体勢が斜めになったら途中でも止める。こうした安全対策を行うことで今回の事故は確実に防げたという。
杉山愛(元プロテニス選手)「スケアード・ストレートという教育方法は知らなかった。昔はビデオでした」
司会の加藤浩次「子どもたちにとって、スマホを見ていたり、トラックの死角に入ってしまったりすると危ないと認知させるには効果があります」
スケアード・ストレートは映画などと違い、やり直しがきかない緊張感の中での実演となるが、スタントマンには特に資格がなく、自治体は入札で業者を選ぶためスタントマンの質を懸念する声もある。
橋本五郎(読売新聞特別編集委員)「僕らの頃は人形を使っていたが、それでは事故がさっぱり減らなかった。リアルな形にすると、見ただけで危険と隣り合わせなのがわかる」
阿部祐二リポーター「こういった事故でスケアード・ストレートがなくならないかと心配されています」
みっちゃん