2024年 3月 29日 (金)

中高年ひきこもり61万人――親が死去すると遺体と過ごし本人も衰弱死や自殺!

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    61万人といわれる中高年のひきこもりは、高齢の親が亡くなった途端に命の危険にさらされる。神奈川県横須賀市職員の北見万幸さんは、長年ひきこもっている50代男性の自宅を、何度も訪問してきた。「食事持ってきたよ」とガラス戸越しに声をかける。男性は両親が他界して1人残され、体力の衰えが目立つが、それでも北見さんの入院説得に応じない。

   本人の意思に反して、自治体が医療機関につなぐことはできない。保健所に来てもらったこともあったが、「強制はできません」といわれた。「まいったなあ。死んじゃうよ、どうすりゃいいのか」と、北見さんは嘆く。

   去年(2018年)12月の訪問から10日後、男性は衰弱死した。訪ねても姿を見せなくなったのを心配した北見さんが、警察官と室内に入って発見した。56歳だった。「男性の存在把握から1か月半でした。何もできなかった。出会うタイミングが遅すぎました」

   この男性「伸一さん」は、両親と弟の4人暮らしだった。高校卒業後、「英語の仕事に就きたい」と大学を受験したが失敗し、浪人ののち進学をあきらめて就いた書店の営業の仕事は、長続きしなかった。ひきこもりになって、年金暮らしの両親が頼りだったが、両親は11年前に死亡し、弟は家を出て結婚した。

   伸一さんは親の預貯金を取り崩して暮らしていた。死後、自宅に残されたメモには、残金が毎日記録してあった。タクシー運転手をしている弟(55)は「できる限り、命をつなぎたいという思いがあったのでは」と後悔をにじます。

   父の日記もあった。「伸一と食事を一緒にしたことがない。働きのないことが気になるのか、また口論した。心がけてはいるが、ついついしてしまう」(1989年6月18日)と、息子を案じる20年間の葛藤が記されていた。

   弟は保健所や医療機関に相談したが、「入院が必要なレベルではないといわれ、私自身があきらめの境地だったのかと思います。兄は生産性の面では社会に寄与していなかったが、生きる価値がなかったとは思いたくない」と、今も救う手だてはなかったかを自分に問い続けている。

発見されても行政に受け入れ態勢なし

   61歳の男性は20年間ひきこもり、2人暮らしだった父親を今年(2019年)1月に亡くした。1カ月間、遺体と自宅で過ごし、衰弱していたのを町職員の訪問で発見され、救急搬送で命は助かった。「どこかに相談は一切しなかった。自業自得感があった」という。きょうだいはなく、親戚や友人とも疎遠で、「だれにも連絡しにくかった。どうすることもできなかった」と話している。

   1日の食事は食パン2枚だけ。精神的にも追い詰められ、無気力状態だった。死体遺棄で執行猶予付きの判決を受け、いまは行政の支援で出直しをめざしている。

   横須賀市浦賀地区地域包括支援センターの支援活動の対象は、これまではもっぱら高齢者の介護サービスが中心だった。「高齢両親の死亡で社会とかかわる術をなくした人をつなぐ機関が、思いあたりませんでした」「つなぐ先を充実させないといけない」と、支援にあたる千葉順子さんはいま思いを新たにする。

   横須賀市職員の北見さんは「ケアマネやヘルパーさんがひきこもりの人を結構発見する」という。2人は連絡をとることにした。手探りの受け皿作りがようやく始まった。

   ひきこもり問題を20年以上取材するジャーナリストの池上正樹さんは、「自治体の多くが縦割りで、発見しても支援につながる仕組みはなかった。中高年のひきこもりをどこにつなげばいいのかわからないといった話が、いっぱいあります」と指摘する。

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   池上さんは、救急救助の法制度の整備とともに、「助けての意識を持たせる力は地域の理解がカギを握る」と考えている。自立を求めるのではなく、「大丈夫?」と声をかけるだけでも、放っておかれるわけではないと勇気づけられる。「安心して相談できる居場所をつくるには、まずは人とつながることが大事です」と語った。

   ひきこもりの子どもが親の死後、衰弱死や自殺、死体遺棄に追い込まれたケースは、ここ3年で70件を超す。

   *NHKクローズアップ現代+(2019年8月1日放送「"ひきこもり死"~中高年 親亡きあとの現実~」)

文   あっちゃん
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