2024年 4月 19日 (金)

NHKの国谷裕子、東京新聞の望月衣塑子、報道ステーションへの恫喝...菅義偉はマスコミを弾圧することにかけては安倍晋三を凌ぐ陰険さと強引さがある

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   菅義偉の生き方をひと言でいえば、「ナンバー2人生」といえるだろう。法政大学の空手部では副将。横浜市議時代は影の市長。安倍政権では影の総理。

   そんな男が71歳にして初めて主役になろうとしている。総裁選立候補の会見に臨んで、水色のネクタイを締め、ややはにかんだ薄笑いを浮かべながら、「安倍政権を継承する」といった。

   早食い、下戸で、好きなのはパンケーキ。菅ほど「男の顔は履歴書」という言葉を思い起こさせる容貌はなかなかない。市議や国会議員になりたての頃のビデオや写真を見ると、もっとふっくらとして、にこやかな表情をしている。

   永田町の荒波にもまれているうちに、清濁の濁ばかりを呑み続け、相貌が変容したのであろう。麻生太郎、二階俊博と並んで、永田町の"三悪相"である。

   こんな顔を毎朝、ワイドショーで見せられるのかと思うと、今からメシがまずくなる。

   文春、新潮は、「祝! 菅総理誕生スキャンダル」でもやってくるのかと楽しみにしていたが、まだ正式に決定していないこともあってか、何もない。

   両誌ともに、二階の古狸が、安倍の要請を密かに受けて、全国の自民党員たちの意向を無視し、両院議員総会でさっさと決めてしまう「派閥のボスたちによる談合」だと批判している。

  • 「安倍政権を継承する」と宣言した菅義偉官房長官(2020年9月2日)
    「安倍政権を継承する」と宣言した菅義偉官房長官(2020年9月2日)
  • 「安倍政権を継承する」と宣言した菅義偉官房長官(2020年9月2日)

永田町のボス猿談合で選ばれた菅義偉の「悪相」を、毎朝ワイドショーで見せられるのかと思うと、今からメシがまずくなる

   菅政権は「居抜き乗っ取り内閣」(森功=新潮)「二階の傀儡政権」ではないかという見方があるが、私は、ここでも書いたように、安倍首相が自分の力を温存して、院政を敷くための「影武者政権」だと考えている。

   それを菅が受け入れなければ、二階派、細田派、麻生派が一致して菅官房長官を推すことにはならなかったと思う。

   文春によれば、「安倍政権の骨格だった側近軍団はそのまま引き継がれる可能性が高い。骨格とは、杉田和博官房副長官、和泉洋人首相補佐官、今井尚哉首相秘書官、北村滋国家安全保障局長の4人。中でも杉田氏と和泉氏は、既に菅氏から居残りを頼まれているそうです」(官邸関係者)。これでは、顔が菅に替わっただけで、中身は安倍のままである。

   自分独自の政策など考えたこともない菅が会見で、「安倍政治の継承」を繰り返すだけだったのは当然なのだ。

   だが、マスコミを弾圧することにかけては、安倍を凌ぐ陰険さと強引さがある。

   官房長官会見での東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者に対する執拗な発言封じ込めと嫌がらせ。『報道ステーション』へのたび重なる恫喝。NHK『クローズアップ現代』の国谷裕子キャスターを番組降板にまで追い込んだなど、枚挙に暇がないほどである。

   昨日の会見でも、"天敵"望月記者が、「今後の首相会見ではフリーの記者を含めた記者たちの厳しい質問に答える気があるのか」といっている途中で司会者に遮らせ、いつものように木で鼻を括った、「限られた時間のなかでルールに基づいて記者会見」をするといっただけだった。

   これでは、安倍の顔をすげ替えた菅人形が登場しただけではないか。

菅が傾倒する英国人アナリストの「日本の中小企業はどんどん斬り捨てるべきだ」という淘汰論が危険すぎないか

   菅と二階は、観光業界に顔が利くことで知られている。文春によれば、2人の背後には英国人アナリストのデービッド・アトキンソンという人間がいるそうだ。

   「ゴールドマンサックス(GS)出身で、現在は国宝や重要文化財の補修を手掛ける『小西美術工藝社』の会長兼社長を務めている」(官邸関係者)

   彼が15年に上梓した『新・観光立国論』で、「日本経済の成長のためには外国人観光客にカネを落としてもらうことが必要だ」という主張をすんなり信じて、その後の「GoTo」キャンペーンにもなっているようだ。

   またこの御仁、「最低賃金の毎年5%ずつの引き上げ」という持論をもっているそうである。私も、そうできればいいとは思うが、中小企業は受け入れがたいだろう。

   アトキンスは、「それを支払う能力のない中小企業が淘汰されれば新陳代謝が進むし、永遠に成長しない中小企業は、国の宝どころか、負担でしかない」、斬り捨てろと主張しているというのだ。

   だが、アトキンスに傾倒している菅は、中小企業庁を抱える経産省出身の今井尚哉が、「5%は無理」だといっても聞き入れなかったそうだ。こんな持論を持った人間がトップになったら、ただでさえコロナ禍で疲弊している中小企業は、生き残ることもできないだろう。

石破茂が「あなたも総理が選べます」と言って集めた自民党員をバカにした茶番劇だと言っているが、正論だ

   国民の声を無視して、密室談合で総裁を決めてしまうやり方も、安倍と二階の2人で決めたに違いない。露骨な石破茂外しだ。石破がサンデー毎日で、

   「国民、なかんずく党員が納得することが必要だ。自民党はずっと党員獲得運動を続けていて、党本部には『総力結集』『目指せ120万人』のポスターが大々的に張られている。私も幹事長経験者としてよくわかるが、党員獲得のセールストークは『あなたも総理が選べます』。(中略)総理は直接選べないが、自民党員なら総裁(=総理)を選べます、と言って党員を集めることが多かった。その権利が行使できないのなら何のための党員なのか、ということになる」

   といっているが、正論である。

   安倍ベッタリの産経新聞でさえ、「14日の投開票まで続く首相の座をめぐる戦いは、何とも盛り上がりに欠ける茶番劇となった」(9月3日付の産経抄)と書くほど、国民をバカにした総裁選びなのだ。

私は案外、菅政権は早く倒れると見ている。叩き上げの菅は他人にはいえないカネの苦労をどれだけ重ねてきただろうか

   こうして生まれる菅政権は、安倍の任期である来年(2021年)9月までの「ワンポイント政権」だが、ここへきて、辞任の裏を知らない国民から、病気で辞めたのはかわいそうだという声が出てきた。共同通信によると、政権への支持率が約20%もアップしたというのである。

   騙されやすいのは日本人の特性だが、この"錯覚"を利用しない手はないという輩が出て来るのも自民党らしい。

   下村博文選対委員長が作らせたのではないのかといわれる「下村カレンダー」というのがLINEで出回っていると、新潮が報じている。

   それによると9月29日に衆議院を解散して10月25日に投開票。そこで現状維持かやや減ぐらいなら、菅が信任されたということになるのだろうが、それは、甘すぎる。国民を蔑ろにした永田町のボス猿談合で選ばれた菅政権に「NO」という絶好のチャンスである。

   私は、案外、菅政権は早く倒れると考えている。なぜなら、菅は叩き上げの党人派である。小泉純一郎、安倍晋三、麻生太郎、福田康夫のように、二世三世でもない。地盤も看板もカネもなく、ここまで成り上がってくる間に、他人にはいえないカネの苦労をどれだけ重ねてきたのだろう。

   それに、昔の同僚や親しい国会議員たちが、菅は「総理になりたいといったことはない」と口をそろえている。

菅の懐刀の和泉補佐官が暗躍しているが、なんで美容整形グループにコロナの対応を任せるのか?

   そうした人間が、晴天の霹靂でトップになった時、週刊誌の格好の餌食になる。既に新潮が2回、菅のスキャンダル情報を報じている。

   1回は「『菅VS.小池』暗闘の裏に『湘南美容』コロナ利権」(『週刊新潮』8/6号)。

   簡単にまとめると、菅のポチといわれる和泉補佐官が、お台場にある機動隊のオリンピック用の宿舎を、中等症患者向けの臨時医療施設として活用するといい出したというのである。

   「プレハブで医療行為にあたる運営主体は、菅官房長官の意向により、『湘南美容クリニック(SBCメディカルグループ)』に既に内定している」「『湘南美容』の創業者でグループ代表の相川佳之氏の内諾も取れている」

   何で美容整形にコロナの対応を任せるのか? 誰しもが抱く疑問である。

   最近、ここは保険適用の一般医療の分野に進出したいと、病院を買収したそうだ。だが、ここは十分なエビデンスもないのに、高額な「がん免疫療法」を行っていると批判されているという。そんな怪しげなところを競争入札もせずに、"お友だち"というだけで指定するのは、安倍の加計学園問題と同じで、許されるはずはない。

   東京都側は当然ながら猛烈に反発した。「国立病院か、もっとましな医療法人にしてくれ」。当然である。だが和泉は、「国立病院は独自の役割があるからダメ、他の医療法人は人員を出す余裕がない」と拒否したそうだ。質が悪いとはこういう人間のことをいうのである。

   感染が落ちついたということで、この計画は宙に浮いているというが、計画自体は生きていて、いつまたゴリ押ししてくるか予断を許さないそうだ。

菅の「アジアの金融センター」を大阪と福岡に作る構想も、大阪維新と福岡の麻生に媚びを売るのが狙いだ

   2回目は「『アジアの金融センター』誘致で私利私欲『安倍政権』の悪い奴ら」(『週刊新潮』8/27日号)。

   新潮によれば、香港に国家安全維持法が施行され、これまで「アジアの金融センター」として確固たる地位を築いてきた香港から、「金融関連の人材や企業などが流出する動きが出始めているが、菅官房長官はこれを好機と捉えている。7月中旬以降、急きょ、懐刀である和泉補佐官に対して、『我が国への国際金融機能・人材の誘致策』について検討することを指示した」(政府関係者)という。

   世界の金融市場は1位がニューヨーク、2位がロンドンで、3位、4位を香港とシンガポールが争ってきた。

   その香港が中国の介入があからさまになり、金融市場としての地位が低下するかもしれないから、東京がそこに食い込めないかを考えること自体、悪いことではない。

   だが新潮のいうように、そのためには、世界中のお金が集まる仕組みをつくらなくてはいけない。さらに驚くのは、菅が日本で考えている金融市場は、東京ではなく、大阪か福岡だというのである。

   7月中旬と下旬に、法務省や金融庁などの幹部による打ち合わせが行われ、菅の意を受けた和泉が、「大坂を中心とする関西圏や福岡の特区に国際金融機能や人材を誘致するための課題を検討せよ」と言い放ったそうだ。

   菅の意図はすぐわかる。大阪は日本維新の会への土産、福岡は麻生太郎の地元である。

   安倍の辞任を見越して、麻生に媚びを売っていたとすれば、先見の明だけはあったということか。

   私は、俳人の金子兜太(故人)が書いた文章に加筆したものを、オフィスの壁に貼ろう思っている。

   「アベ亜流政治を許さない」

テレワークはいいものだと思っていたが、知らず知らずのうちに定年退職後の年金受給総額が減り続けてしまうそうだ

   さて、現代から1本紹介しよう。

   暇ネタの宝庫である現代で、紹介しようという記事を探すのは骨が折れる。今週はようやくこれを見つけた。

   コロナ感染拡大で、テレワークが人口に膾炙した。

   自宅にいても地方にいても仕事ができると、土地の値段が上がった地方もあるという。

   編集という仕事は、一番テレワークに合ったものだと昔から思っていたが、今なら、毎月住む土地を変え、放浪しながらでもベストセラーが生み出せる。

   会社側も、通勤定期を払うことなく、残業も減るようだから、従業員と会社はウインウインの関係になるのではと思っていたが、現代はそうではないというのである。

   諸手当が減ると、定年後にもらう年金が減るというのだ。

   「通勤手当や残業手当は、社会保険料の算出に関わっているため、テレワークの影響でこれらの手当てが減ると、標準報酬月額(健康保険や厚生年金など社会保険料の算出となる額)が下がる」と社会保険労務士の井戸美枝はいう。

   「厚生年金の受給額は、定年退職までの月数×平均標準報酬月額(厚生年金加入期間の標準報酬額の平均値)×厚生労働省が定めた乗率(入社が2003年3月以前は、生年月日などによって変わる。2003年4月以降は、5・481/1000で統一)の計算式に則って決定される。

   定年退職するまでの間に、テレワークによって通勤手当がゼロになり、残業手当が減少すれば、平均標準報酬月額が下がる。

   それに気づかずにテレワークを続けていると、知らず知らずのうちに、年金の受給総額が減り続けてしまうのだ」(現代)

   これは知っておいた方がいい。(文中敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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