2020年 11月 26日 (木)

軽度の知的障害や発達障害は、気づかれない場合が多い。就労や社会生活に苦しみ、生活支援を受けて初めて診断されるケースも。公的サポートや周囲の理解が急がれる

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   コロナ禍の今、雇止めや生活困窮などによって支援の窓口を訪れたことがきっかけで、自分に軽度知的障害や発達障害があることに気付く中高年が増えている。

   仙台市で一人暮らしをする56歳の女性もその1人。小学生の時に周囲との違いに気付いたが、「怠けているからそうなると見られがちで、悲しい思いをしたことも」と話す。専門学校を卒業して社会に出ると、さらに苦労が増えた。どの仕事も長続きせず10回以上転職を繰り返した。いつしかうつ状態になり、働く気力も失われていく。生活が困窮する中、働けない原因が知りたいと病院や行政の窓口に通い続け、今年初めて知能検査を受けた。結果はIQ64。軽度知的障害に該当することが初めてわかったのだ。女性は「生きづらい理由がわかり、なるほどなと思った」と話した。

   東京・品川区にある就労支援を行う事業所では、コロナの感染拡大後にテレワークの訓練などを始めたところ、問い合わせや相談件数が以前の3倍に増えた。相談を通じて障害が判明したケースがあった。相談に来た40代男性が医療機関を受診すると、生まれつき脳の一部の機能に障害がある発達障害と診断された。男性は「もっと早く診断などに動いていたら......」と驚く。

  • NHK「クローズアップ現代+」番組公式サイト(https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4480/index.html)より
    NHK「クローズアップ現代+」番組公式サイト(https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4480/index.html)より
  • NHK「クローズアップ現代+」番組公式サイト(https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4480/index.html)より

「自白」したとされ、冤罪となった例も

   日本で障害への支援が加速したのは2004年の発達障害者支援法の成立以降のこと。その後、障害の状態などに応じて必要な支援を行う特別教育も実施されるようになった。だが、支援法成立以前に学校を卒業していた中高年の人たちは障害に気付く機会が少なかったと考えられている。

   一方、若い世代にも障害が気付かれない実態がある。去年、軽度知的障害と発達障害があると診断された大学3年生の女性は、真面目さが評価され推薦で4年制大学に進学。しかし、母親は娘が幼いころから友達付き合いでつまずき、コミュニケーションに支障があると感じていた。発達障害の可能性を疑った母は何度も学校に相談したが、問題はないと言われてきた。このように、発達障害者支援法ができたあとも障害に気付かれない若者がいる理由を、都留文科大学教養学部の堤英俊准教授は「障害に対する教員の知識や経験の不足と、教師たちが障害を伝えることへのためらいがあるため」と指摘する。

   長年、障害に気付かれないことで冤罪も起きた。殺人罪で10年を越える服役を強いられた女性は、長時間の取り調べが続く中、殺人を意味する証言をしてしまった。女性は自白は誤りだったと主張するも認められず、懲役12年の判決を受けた。ところが自白の信用性が疑われる事態が起きた。精神科医が女性の書いた手紙の内容から障害に気付き、獄中で診察。37歳にして初めて軽度知的障害と発達障害であることがわかった。女性の自白の背景に障害が深く関わっていることが医学的に指摘され、女性は今年3月に無罪判決を受けた。

文   バルバス
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