「東京オリ・パラ」中止のW文春の説得力、開催のW新潮の暴論!週刊誌も真っ二つ――ほか5編

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   東京五輪開催の是非をめぐって週刊誌もバトルを繰り広げている。中止すべきだとの急先鋒は週刊文春。今週は西浦博・京都大学大学院教授にインタビューして、6月2日(2021年)に尾身茂感染対策分科会会長が「今の状況で(五輪を)やるというのは普通はない」と辞める覚悟でいったことに援護射撃をしている。

   西浦教授は厚生労働省感染対策アドバイザリーボードの一員で、尾身会長たちと週末のたびにリモート会議を開いてきたという。五輪開催に伴う感染リスクは、国内の感染状況とは無縁ではない。五輪開催のリスクを評価することは専門家としての責務だと考えていたが、官邸を蔑ろにするのではなく、緊密に連携しようとしていたそうだ。

   5月中旬に尾身は西村康稔担当大臣に、「提言を出したい」と話を持ち掛けた。すると西村は「待ってくれ」といったという。その後、菅首相と小池都知事が面会して、五輪開催への連携を確認するなど、提言を出す機会を握りつぶそうとし、五輪開催は決定事項とする流れを作り出したと西浦はいう。

   西浦は「私を含めた複数の専門家が、『この会議で五輪のリスク評価をしていないのは、厚労省の皆さん、異常なことですよ』と言いました」。それでも認めようとしない官邸や厚労省に、「感染リスク評価の言論さえ封じられてきた」と西浦は口惜しさをにじませる。それでも尾身は「覚悟を決めた」と、国会の場で「普通はない」といい切ったのである。

   菅首相は以前から、「専門家がきちんと対策をやらないから、感染が広がっている」と、緊急事態宣言を出しても感染者数が思うように減らない現状に「逆ギレ」していたそうだ。

   高齢者へのワクチン接種が進んでいても、西浦は「私の試算では、仮に七月末までに高齢者接種が終わっても、今後、複数回の緊急事態宣言が必要になる。七月二十三日の五輪開催式から、九月五日のパラリンピック閉会式まで約一カ月半。その間、宣言を出さざるを得ない状況になる可能性は、極めて高いと考えています」

   このように、日本国内で五輪開催についての疑問が噴出しているのに、週刊文春がインタビューしたIOCのナンバー2、アニタ・デフランツ副会長は、パンデミックの中で五輪開催は難しいという専門家たちの声を一蹴して、「日本にとって非常にチャレンジングな状況下で達成できることを世界に示す、絶好の機会だと思います」と、無責任極まりない答弁をしている。

   その上、「私はIOCがあらゆる予防措置を講じていることも知っています。(中略)だから開催するのが正しい」といい切る。IOCがカネをぶんどる方策以外に、どんな予防措置を講じたのか。いい加減なことをいうものではない。

   五輪開催反対に対して、真っ向から開催すべしと反論するのは週刊新潮である。その根拠にワクチン接種が進んでいることを挙げる。寺嶋毅・東京歯科大学市川総合病院教授は、「これから職場での接種も続々と始まり、スピードは上がるでしょうから、そうなれば五輪は、それほど悪くない接種状況で迎えられると思います」

   どうしてこれほど楽観的でいられるのか、私には理解しかねるが、新潮は、人類は強力なワクチンを手にしたのだから、五輪開催までにコロナを巡る状況は大きく変わり得るという。だから、尾身会長も野党も、そのことを無視したまま議論を進めてはいけないと諭すのである。

W現代は「菅の五輪錯乱」G7サミットで海外から総スカン食らって帰国後に中止発表

   この論争に割って入ったのは週刊現代だ。それも「菅首相は東京五輪の中止を決断する」というのだから、耳を傾けざるを得まい。政権の現役閣僚の一人がこう打ち明けている。<「菅さんは、ホンネを言えば五輪を中止したい。『五輪反対』の世論を無視して強行開催し、その後に日本国内で変異株が広がって感染爆発が起きれば、秋に行われる衆院選で自民党が大敗するのは確実です。だから、中止できるならそうしたい。

   しかし、この期に及んで中止を日本側から宣言すれば、IOC (国際オリンピック委員会)とは完全に決裂し、いったいどれほどの損害賠償を請求されるかわからない。当然、責任は総理が負うことになる。止めるに止められない。もはや、『どうか何も起きないでくれ』と祈るしかない」>

   さらに、菅の側近たちは最近、懊悩のあまり、錯乱したかのような菅の姿を見て、戦慄したという。<「ワクチンが間に合うか、変異株の拡大を止められるか、すべてが正念場なのに、総理がいきなり、『すべては、運次第だ!』と言い放ったのです。国民の命が懸かっているのに、バクチに身を委ねるという。正気なのかと、恐ろしくなりました」(官邸関係者)>

   菅首相の心中は揺れに揺れているというのである。たしかに6月9日の党首討論を聞いていても、五輪は絶対に開催するという強い意志は伺えず、語ったのは高校時代に見た東京五輪の思い出だったのは、その証左のように思える。G7サミットに参加する菅が、「G7サミットで海外首脳らの反応が悪ければ、帰国後、一転して菅総理が中止を宣言する可能性は十分にある」(官邸スタッフ)というのである。

   14日に帰国する菅首相は、20日に予定されている緊急事態宣言を解除できなければ、18日に記者会見をして、急転直下、「五輪中止」をいい出す可能性があるというのだ。

   6月9日、オーストラリア野球連盟はメキシコで22日から行われる東京五輪最終予選を辞退すると発表した。これから辞退する国やチームは増えていくだろう。欧州の国々の世論は、参加に否定的なものが多いようだ。G7で、欧州の首脳や記者団から開催に疑問の声が上がれば、菅首相は竦みあがり、止めるといい出さないとも限らない。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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