2024年 3月 28日 (木)

オウケイウェイヴ 兼元謙任社長インタビュー

※この記事は、記事「ウェブ2.0 最大欠陥は理念がないことだ」の詳報です。

   教えて?に答えるQ&Aサイト運営で、「ウェブ2.0」ビジネスの代表企業として注目を集めるオウケイウェイヴ。6月に名証セントレックスに株式上場したばかり。J-CASTニュースでは、兼元謙任社長に「ウェブ2.0」の次にやってくる情報ビジネスの将来について聞いた。

――膨大な情報を選択・閲覧する従来のWebスタイルから、Web 2.0では、その情報を組み合わせ新しいコンテンツやツールを生み出す形になりました。兼元さんは2.0の問題点も指摘しています。

兼元謙任・オウケイウェイヴ社長
兼元謙任・オウケイウェイヴ社長
「ウェブ2.0が進化して、将来的に3.0とか呼ばれるかわかりませんが(笑い)。僕は現在の2.0に足りないことが3つあると思っています。
一つは“理念”が無いことです。たとえば、“戦争をなくしたい”など、世の中をどんな方向に導きたいか、何を変えたいのか、という理念が見当たらないのです。今は単純に楽しいとか、便利だとか、ウェブがあって良かったね、という段階で終わっています。

――ホリエモンもそうですね。

「堀江君の場合は、困っている誰かのために何かをするということが、不在だったと思います。そして、困ったことも無いのにお金儲けに走り、会社が苦しくないのに粉飾決算をしてしまった。株式会社の誕生は、困ったことが発生し、それを解決するためには大金が必要なので、大金を分割して多数の人に金を出してもらう。解決したら、困っていた人がその利用料などを払う。利用料が入ってきたら出資者に還元するというものです。だから堀江君も、困っている事から紐解けば、あんなことにはならなかったと思います」

――理念以外で足りないのはなんですか。

「管理を放棄しているところがあること。『ユーザーが決めているからいいじゃん』みたいになっていて、カキコミや映像などがそのまま掲載しっぱなしなんです。新聞などのメディアは、対立する両方の意見を掲載したり、変な投稿は掲載しなかったりしますが、ネットでは一方的なカキコミが、審査もなしにそのまま載ります。すると、何も知らない人がそれを読んで、その通りだと思ってしまう。子供達には見せられないものも多い。
情報について僕達は緩やかな管理をします。ユーザーに全ては任せません」

―それにしても、ウェブ2.0といえばグーグルだけが思い浮かんでしまいます。

「3つ目の欠陥が、独自のお金儲けのアイディアが無いこと。2.0がこのまま進めば、儲かるのはグーグルとアマゾンだけだと言われています。大手ポータルサイトもグーグルの成功モデルを追う形になっていて、広告システムではグーグルのアドワーズ、アドセンスを真似たものを指向している。結局、先行者メリットもあって、このままではグーグルに追い付けない。ポータルサイトの検索エンジンも、グーグルの技術をベースにしたり相乗りしたりしている。それは、グーグル中心にインターネット世界が回っていく事を意味していて、利益がグーグルに集中する可能性も大きいんです。これをどうすべきか。もっと議論していくべきだと思うんです」

――兼元さんの著書に「グーグルを超える日」があります。オウケイウェイヴのシステム、理念を世界的に広げることによって、現在のウェブ世界をどう変えていきたいですか。

「先にあげた問題点と関連しますが、当社の理念は“世界平和”です。世界の人と人を、信頼と満足で繋いでいこうと。これからは、心がパワーを持つ時代になっていくのは間違いないんです。つまりは当社のQ&Aビジネスモデルが根底です。“ありがとうから生まれるコミュニケーション”と表現してきましたが、これをてらいなく言うと“愛”なんです。新興宗教っぽいとか言われますが(笑い)。
“独自のお金儲け”では、当社の場合Q&Aサイトで、車でも建築でも法律でも、あらゆる分野における知識の抽出が可能なインフラができつつあります。それを使ったコンシェリジェ(ホテルなどで客の要望を受けエスコートする役)ビジネスができないかと。例えば好みの時計を買えなくて困っている人がいて、そのことをネットで書くと、情報を見たユーザーや業者から商品の紹介や、プレゼンが入ってくるような仕組みです。個人と企業や団体、個人と個人など全てを結び、いずれのポジションからもこの仕組みに参加できるようにします」

――さて、事業の将来ビジョンを教えてください。

「僕達が2010年までに目指しているのが、世界100カ国20言語でQ&Aサービスを提供し、10億人、10万社に使ってもらいたいというものです。そして、2006年内にはアメリカ、中国、韓国に進出する予定です。

国内では、これから当社のQ&A サイトの仕組みを応用したソフトウェアのFAQ作成、管理できるツール「OKWave Quick-A(クイック・エー)」の販売や、Q&Aサイトをサポートサービスに活用いただく「OKWave Support Through(サポートスルー)」などを、これまでの直販に加え、代理店販売にも注力して拡販させていきます。また、自社サイト「OKWave」などに、これまで手付かずだった広告媒体を、オリジナルで展開していきます」

――会社設立につながる、ちょっと昔の話を聞かせてください。建築会社のデザイナーなどをされてきた兼元さんが、インターネットのQ&Aサイトを考案したきっかけは何だったのですか。

「愛知県から東京に出てきて最初に紹介された仕事が、何の経験も無いWebデザインの仕事だったんです。一からHTMLを学びましたが、どうしてもわからないことがあり、ネット上の掲示板やフォーラムで質問したところ「聞き方が悪い」とネット上で怒られ、「アーカイブの意味を教えてほしい」と書き込んだら、「そんな意味もわからないのか」とやり返され、最後には「出て行ってくれ」とまで書かれる始末でした。
それで、困っている人に善意を持って回答し、お互い助け合えるような場所や仕組みがネット上で必要だ、と考えたのがこのビジネスのきっかけです。今年の2006年6月に名証セントレックスに上場しましたが、株式会社化するときは、当時の会員1000人に1万円ずつ出資いただいて株主になってもらおうと思っていましたが、物理的に難しいということで、株式上場して会員の方々にも株主になってもらおうと考えました」

――それが今やQ&Aサイトがユーザーに高く支持され、ビジネスモデルが認知され「ウェブ2.0」ビジネスの代表格として注目されています。

「スタートした頃は、困っている人を助けたい、お互いが信頼しあい助け合おうというものがでしたけれども。資金調達の方法も色々あって、会社を安定させる一番良い方法は、株式を公開して一般ユーザーにも経営に参加してもらうのがいいと。それで2000年に有限会社から株式会社に変更し、上場を考えました。
でも、初期の2~3年は、僕らのやってることがクライアントに理解されなくて辛かったんです。いきなり「Q&Aコミュニティーとは」とか、「世界平和」とか、プレゼンの資料に書いてましたので、無理もなかったかも(笑い)。だからウェブ2.0という言葉が出たのは物凄く嬉しかった。これで、僕らのしていることがまず、イメージで伝わるわけです。当社の目指すのは、困っている人の質問に対し、知識や経験のある人達が回答する。Q&Aサイト上に信頼のコミュニティーが生まれ、多くのユーザーの知識や経験が新しい価値、より大きな価値を生み出していく。それを理解してもらえるようになりました。


【株式会社オウケイウェイヴ】

日本初、最大級のQ&Aサイト「OKWave」は、NTTレゾナントの「教えて!goo」など約40社のサイトと連携し事業規模と知名度を拡大。「OKWave」には約55万人の会員を抱える。同社の掲げるミッションは「世界中の人と人を信頼と満足で結ぶこと」。

兼元謙任(かねもと・かねとう)プロフィール

1966年愛知県名古屋市生まれ。1989年愛知県立芸術大芸術卒、ジイケイ京都入社。92年ダイワ入社。99年7月有限会社オーケーウェブ設立。2000年1月にQ&Aコミュニティーサイト「OKWeb Community」(現OKWave)公開。同年2月株式会社化し社長。2006年1月にオウケイウェイヴに商号変更。同6月に名証セントレックスに株式上場。

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