世界一トヨタに立ちはだかる 「品質」という最大のリスク

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   トヨタ自動車は06年来、米国のベストセラーカー「カムリ」、世界の最量販車「カローラ」、そしてレクサスブランドの最高峰である「LS」と相次いで重要度の高い新型車を投入してきた。これまでのところ、いずれも品質問題を起こすことなく順調に立ち上がっている。しかしその陰には関係者が「現場は相当緊張してバタバタでこなしてきた。こんなことが続くと思えない」と漏らすほど、非常時のチェック体制を敷き威信をかけて不良品を抑え込んだ姿があった。2010年にも1千万台に達する勢いの販売増と開発生産対応、ハイブリッド車を始め高度化するエレクトロニクス、中国メーカーに対抗しうる低価格車への参入―。未踏の領域に踏み込む場面は次々と現れる。品質のリスクは常に潜む。

若手や期間従業員の増加に対応し、班長を復活

06年末から「カムリ」などの新車種を投入してきた
06年末から「カムリ」などの新車種を投入してきた

   つい1年前まで、「品質のトヨタ」の看板は揺らいでいた。リコール台数は03年に米国で200万台を超え、国内でも04、05年に200万台に迫った。
   06年には車両の欠陥を改善する措置を怠ったとして現職部長が書類送検された。豊田章男副社長は同年7月の会見で「お客様に自分の車は大丈夫かと不安にさせたことは大変恥ずかしい。一日も早く信頼を取り戻す」と悔しさをにじませた。

   わずか1年間の取り組みでトヨタの品質が急に改善したわけではない。05年4月にスタートした「CF(カスタマーファースト)活動」で社長が陣頭指揮を執り、開発、生産から販売、事務に至るまで全社的な品質活動に乗り出している。同年6月に就任した渡辺捷昭社長は「足元固め」「自工程完結」を強調した。不良品を次の工程に渡さないというトヨタ生産方式の基本を、全業務に広げることを呼びかけた。

   具体的には生産現場にインライン計測と呼ばれる、部品1個1個の精度を測り、不良があれば原因を突き止めるシステムの導入を進めた。若手や期間従業員の増加に対応し、5人程度の指導をする班長(チームリーダー)を復活させた。

   開発では図面の精度を上げるため、どのベテランがどんなノウハウに詳しいかを調べ上げ「マップ化」した。「IT時代には誰もが簡単に設計ができる。しかし現物をつくったときに正しくできるか、コンピュータが保証してくれるわけではない」―ベテランの知恵を図面に織り込み、開発からつくりこむことにこだわった。

世界でプロジェクト立ち上がり、現場の人材が不足

   もっと即効的な対策として、試作車を増やしたり、製造ラインの不良チェックの人員を張りつけたり、といった対策がとられたのは言うまでもない。ただ、理想的なのは自然な開発・生産の流れで不良品をつくらないことだ。関係者によるとその成果は出始め、不良の発生は半減しているという。

   それでも飽くなき拡大に突き進むトヨタに品質の不安が消えたわけではない。車の電子化は予期せぬバグから安全性に関わる不具合を惹き起こすリスクを内包する。世界で新機種・新工場プロジェクトが立ち上がり、現場を指導する人材が不足するなど兵站線は伸びる。10年にも新興国に投入する目標販価60万円といわれる低価格車は果たして品質を十分に確保できるのかサプライヤーからも疑問の声があがる。
   コップにすれすれの状態ではいつ水がこぼれるか分からない。より大きなコップを用意するために、品質保証のシステムと技術を高め、人材を育成することが求められている。

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