長谷川洋三の産業ウォッチ
改革のスピード:英国大使が語る日本低成長の理由

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「30年前の精神で私たちを驚かせたらよいと思う」

   グレアム・フライ駐日英国大使は2008年2月12日、東京都千代田区で開いた経済人ら有識者との懇談会で、長期にわたる経済成長を続ける模範国・英国から長期の景気低迷にあえぐ日本に対するメッセージを尋ねた私にこう答えた。

   フライ大使は1974年から75年にかけ鎌倉の英国大使館の語学研修所で日本語のトレーニングを受けた後、75年から79年まで2等書記官として英国大使館に勤務した。その後89年から93年まで政治参事官として、3度目の赴任となった2004年からは駐日英国大使として活躍している。

「30年前に見た日本は奇跡の経済成長を遂げ、その成功に非常に驚いた。通産省は強力で、われわれもどうすれば強い経済をつくれるのか学んだ。しかし現在の日本は成長率も低く、外に対しても防御的になっている。日本は安全で平和なよいところもあるが、30年前の精神でもう少し元気をつけ、私たちを再び驚かせて欲しい」

   英国が元気になった理由のひとつは外資政策。1986年からの金融ビッグバンで証券取引所が外資に開放され、世界中から投資マネーが集まる国際金融センターとしての地位が確立。1人あたりGDP(国内総生産)は日本の3万ドルを抜いて3万2860ドルと米国に続く第2位に躍進、外国為替取引の世界シェアは34%に達した。英国ポンドの交換レートは1英ポンド=2米ドルと、米ドル、ユーロに次ぐ、強い通貨になっている。英国のGDPに占める金融業の比率は2006年で9.4%となり、製造業は同13%に縮小したが、金融サービス業が納める法人税は英国の法人税全体の4分の1を占めるまで拡大した。

   「やはり改革のスピードが遅い」――。東京・一番町の英国大使館から30年間日本を見続けた日本ウォッチャーのフライさんの口からは、洞爺湖サミットを前につい本音が出たが、改革のスピードが遅いのが日本の体質だとすると、経済回復のスピードが遅いのも当然かもしれない。


【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「クリーンカー・ウォーズ」(中央公論新社)「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。


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