2024年 4月 19日 (金)

「安心、安全」が一番の目的 民営化4年それが浸透してきた
NEXCO西日本・石田会長に聞く

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

   「民間にできることは民間に」をキャッチフレーズに、2005年に行われた「郵政選挙」の大きなテーマの一つは「道路公団の民営化」だった。高速道路各社は09年10月1日に民営化から5年目を迎えるが、高速道路はどのように変わり、これからどんな方向を目指そうとしているのか。西日本高速道路(NEXCO西日本)の石田孝会長に聞いた。

「お客様の不便をなくそう」の1番目はトイレ

「民営化4年」を振り返るNEXCO西日本・石田孝会長
「民営化4年」を振り返るNEXCO西日本・石田孝会長

――民営化後、何が一番変わったと思いますか。

石田 仕事について責任意識が出てきたことですね。私は民間企業のあるべき姿として「自由、公正、博愛」の3つの規範を掲げていますが、4年近くやってきて、この49.5%ぐらいは達成できたのではないでしょうか。あと3年ぐらいしたら、90%程度にまで持っていける、と期待しています。まだまだ、昔の道路公団の体質が残っていて、「決められたことは、過剰なほどにきちんとやる」のですが、自由な発想で物事を進めるのは苦手なようです。

――具体的に、どのような点が目に見えて変わりましたか?

石田 分かりやすいのは、サービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)のお手洗いでしょうね。「公衆便所」から脱却して、デパート以上ホテル並のトイレに、数年以内に引き上げることを目指しました。ここを改善していかないと、お客様に満足を与えられないと考えました。約40%をお年寄りにも使いやすい洋式便器にし、その内の95%に洗浄機付便座を整備しました。女性に喜ばれるパウダールームも86箇所に設置しました。まだまだ進めます。

――民営化前のトイレはどんな状態でしたか。

石田 いわゆる「公衆便所」ですよ。汚い、臭い。原因は、タイルの目地の太さにあったんですね。太いとカビが生えたりして、くさくなるのです。で、目地をどうして小さくするかに腐心しました。最後は「ラバータイル」というものを導入して、目地自体をなくすことにも成功しました。水がたまらなくなって、モップをかけるだけで水分が除去できるようになりました。また、吹きっさらし状態も問題でした。そうならないように、入り口に自動ドアを付けました。お客様から「ATMが置いてあるんですか?」なんて声をいただいたこともありましたね。

――他に「お客様を考える」という観点から実現したものはありますか?

石田 結局、「お客様の不便をなくそう」につきるのです。1番目はもちろんトイレなのですが、2番目はSA・PAの店舗の営業時間です。車は24時間走っているのに、大半の店は20時には閉まる。これでは困ります。そこで、24時間営業のコンビニエンスストアをつくりました。すでに33店舗できています。さらに、メディカルコーナーも100店舗に設置し、ドラッグストアも4箇所オープンしています。車の中で具合が悪くなった人のために考えたことです。       さらに、「不便になりそうなこと」を食い止めようとも努力しています。元々ガソリンスタンドは合計82箇所あったのですが、原油価格の高騰や競争の激化で運営店から「撤退したい」と言う声が相次いで、71箇所にまで減りました。それでも撤退の要望が消えない。ただ、71という数は守りたいと思っています。詳細については検討中ですが、「他社と合弁で我々がガソリンスタンドを経営する」ということに踏み出そうとしています。ガス欠はお客様にとって不安ですからね。特に高速道路の初心者の方などに結構ガス欠は多くて、最近は増加傾向です。

――民営化では、全体の経営効率を上げることが求められていたように思います。

石田 真面目な集団なので、「これをやるんだ」と決めた分に関しては、効率は上がっています。ただ、「100%の安全・安心」をお客様にお届けすることが私たちの一番の目的、価値であることは変わりません。それで、いくつかプロジェクトを作りました。ひとつが「逆走防止プロジェクト」。カーナビに情報を入れてGPS機能で検知し、逆走した際に、画面と音で警告を出す仕組みです。日産自動車さんと共同で開発にあたりました。2009年2月にはSAでデモンストレーションも行っています。逆走するとシートベルトが引っ張れられるようにして、物理的に伝える、というやり方も検討しています。全国で年1000件近く逆走事故は起こっていますので、対策は急務です。また、これまでは「路面が壊れたら、いかに速く修復するか」という点に重点を置いていたのですが、最近では「どうすれば壊れないか」という「予防」に力を入れています。

――効率化という観点からすると、いわゆる「ファミリー企業」については、どのような関係を築いたのですか。

石田 われわれは「パートナー」と呼んでいます。道路補修を計画立案するのが弊社で、そのサポートをエンジニアリング会社が行います。実行するのがメンテナンス会社、という仕組みでした。ただ、これだけだと現場にやる気が起きない。「メンテナンス会社が自分で計画できるようにしよう」ということで、エンジニアリング会社とメンテナンス会社を合併させ、弊社から数百人単位でエンジニアリング・メンテナンス会社に出向させるといった人事交流も進めています。重複作業も少なくなって、効率化も進んでいます。社会貢献事業を進める時も、理念に共感してもらえましたし、比較的早く「融合」が進んでいると思います。
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