枝川二郎のマネーの虎
カネ持ち資産を国が守るに等しい 貯金限度額2000万円引き上げ

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   「郵政改革法案」の最終案が明らかになった。そのポイントは以下の3つ。

(1)政府が3分の1以上の株式を保有する
(2)ゆうちょ銀行の貯金受け入れ限度額を1000万円から2000万円に引き上げる
(3)かんぽ生命の限度額を1300万円から2500万円に引き上げる

   今回はこのうち貯金の限度額の倍増について考えてみたい。

限度額超えても罰則なく「有名無実」

   庶民感覚で「貯金」という語感にあうのはせいぜい1人あたり数百万円程度までではないか。1000万円を超える部分は富裕層による「投資」の範疇だ。自己責任で運用するべきなのは当然で、そのため預金保険による「保護」(ペイオフ)は1人1000万円とその利息が限度となっている。

   しかし、現実問題として巨大なゆうちょ銀行を破たんさせるわけにはいかないのだから、残高が1000万円を超えようとも実質的に政府の全額保証があると考えられる。つまり今回の措置は1000万円以上の貯金をもつカネ持ちの資産を国が守ろうとするものだ。これは到底納得できるものではない。

   加えて、ゆうちょ銀行の口座には怪しい名義のものが数多くあり、名寄せ(一人ひとりの口座を合算すること)ができていない。また、預入限度額を超えても罰則規定がないのだから、限度額の設定も有名無実といえる。

   次に、ゆうちょ銀行の機能に問題がある。ゆうちょ銀行には貸し出し機能は無きに等しいので、資金の大半(150兆円以上)を国債の購入に充てている。つまり、実質的に政府傘下の国債買取り機関となっているわけだ。今回は限度額を倍増することなので、ゆうちょ銀行に、もっともっと国債を買わせようということだろう。しかし、そのために地方の金融機関に行くべき資金を、ゆうちょ銀行が奪ってしまっては本末転倒である。中小企業への資金供与という金融機関本来の役割を果たしているのは地方銀行や信用金庫などの金融機関なのだから。

ゆうちょ肥大化は「金融の国家主義」だ

   ゆうちょ銀行は毎年それなりの利益を計上している。それは、短期の貯金を元手にして期間の長い国債を買っているためだ(長期金利の方が短期金利よりも通常高いので)。しかし、国債を購入するだけであれば、個人が直接国債を買えば済む話でもある。「国債ファンド」たるゆうちょ銀行のために年に1兆2000億円を超える営業経費をかける価値がどこにあるのか、政府は説明をする責任があろう。

   欧米では金融危機の反省から、金融機関がツー・ビッグ・ツー・フェイル(大きすぎて潰せない)にならないようにしようという動きが進んでいる。巨大な金融機関には「どうせ政府が助けてくれる」という甘え(モラルハザード)が生じがちだからだ。実際、英米をはじめ多くの国々で、大手金融機関を助けるために財政が悪化した、という苦い経験がある。

   ゆうちょ銀行は従来から巨大で、金融市場の機能を歪める存在であった。それをますます大きくしようとする今回の動きは、「金融の国家主義」に他ならない。それでなくとも財政赤字が膨張して危機的状況にある昨今にあって、政府の役割をどんどん大きくしようというのは「百害あって一利なし」。再考を強く望みたい。


枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして活躍。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。

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