2024年 4月 20日 (土)

暑いと「景気がよくなる」 この経済常識は本当か

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   各地で猛暑日が続いている。「夏は暑いほど景気にプラス」というのが経済の「常識」だが、ここまで暑いとマイナス面も出てくる。まだ残暑も厳しそうだが、ひとまず猛暑の夏の中間決算は?

   アイスキャンディーは年間2億4500万本を売る「ガリガリ君」が2010年7月に前年比65%増という爆発的な売れ行きで、24時間フル生産でも追いつかず、「品薄状態となり、ご迷惑をおかけします」と、ホームページでおわびするほど。「あずきバー」も同3割増で初の年間2億本突破の勢いとか。

北海道、東北でエアコンが売れる

   大手ビールメーカーの7月のビール類の出荷量は前年比2.1%増と2カ月連続で前年を上回った。割安の第3のビールが16.8%増(ビールと発泡酒は同マイナス)と相変わらず好調。一方で、「ザ・プレミアム」とか「エビス」など高級ビールも伸びているのはサラリーマンのプチ贅沢か。また、4~8度で飲むアサヒ「スーパードライ」は、「マイナス2度」まで冷やして飲ませる専門のバーを銀座に夏限定で開き、入店2時間待ちの大盛況。営業を9月末まで1カ月延ばしたという。

   大塚製薬のポカリスウェットの7月販売量が65%増など清涼飲料、スポーツ飲料も好調。

   コンビニは、主要10社の7月の既存店売上高が前年比0.5%増。アイス、清涼飲料のほか、冷やし中華、冷麺などの涼しげな食品、汗拭きシートなども好調という。

   エアコンは、7月の販売が前年比53%増加。地域的にはあまり暑さに慣れていないためか北海道、東北の伸びが目立つ。ある大手量販店チェーンでは、店によって前年の6、7倍も売れているという。エアコンフル稼働で、電力10社の7月の家庭用の販売電力量は6.1%増え、04年の過去最高を更新。

   娯楽・レジャー関係は、暑さで客足が鈍るところもあるが、知恵を絞って集客に努める。東京サマーランドは新規オープンしたスラーダーが2、3時間待ちという大人気で、来場者は前年より25%増加、「としまえん」も10%程度増えている。水族館のイルカショーは、前方の席は濡れることもあるのは昔からだが、これを売り物にしてPRするのが品川のエプソン品川アクアスタジアム。通常のショーの合間にイルカが飛び跳ねて客席に水をわざとジャブジャブと掛けるのが人気で、8月になって入場者は15%増。東京ディズニーランドはさすがにこの暑さで客足が鈍っているといわれるが、シンデレラ城の前の特設ステージで1日4回行われる「クール・ザ・ヒート」は、キャラクターが音楽に乗って踊りながら、大量の水を撒き散らし、客はずぶ濡れになりながら大喜び。

猛暑だった2000年の場合、消費はほとんど伸びず

   このほか、小林製薬の「熱さまシート」が前年の2.7倍に。近年は横ばいだったライオンの下痢止め剤「ストッパ」も7月に2割も増え、「冷たいものの食べすぎでは」。電子レンジ関連の調理器具、専用インスタント食品も「火を使わないで料理できる」というわけで好調だ。

   意外なのが暖かモノ人気。コンビニ各社は早くもおでんの販売を始めているが、オフィス街などで、OLらが買うのが目立つといい、「冷房の効きすぎで冷えた体をあっためる」という。同様に、ユニクロのヒートテック(発熱保温肌着)、西友の女性用ハラマキパンツなども好調な滑り出しという。

   反対に困っているものもある。農林水産省の「野菜の価格調査」(8月中旬)によると、暑さに弱い高原野菜のレタスが前年比23%高、キャベツが16%高、さらにトマトも14%高など。暑さに強いスイカは豊作で出荷は増えているのに値段は42%も高いといい、「猛暑で消費が伸びているから」(青果業者)。家畜の夏バテで豚肉や牛乳の生産も落ちている。

   暑さで不漁、高値なのがサンマ。店頭で例年は1匹100~200円という庶民の味方だが、今は1000円以上のものも。通常、北海道・東北の沿岸で獲れるが、今年は水面温度が高いために、東方1000キロ以上の北太平洋にサンマが逃げてしまい、漁獲量は例年の1、2割にとどまるという。

   第一生命経済研究所の試算では、東京と大阪の平均気温が平年より1度上がると、7~9月の個人消費を4333億円、国内総生産(GDP)成長率を0.3%程度押し上げる効果があると試算する。

   ただ、同じように暑かった2000年は、8月下旬時点では同じような経済研究所が「7~9月のGDPを0.5%押し上げる」と試算していたが、3カ月後の12月に発表されたGDP統計は、消費がほとんど伸び率ゼロ、GDP全体も0.2%増の低成長にとどまった。暑いときは「景気いいぞ」と囃すのは毎度のことだが、今年は所得が伸びているわけでもなく、秋には反動で支出を減らし、消費が落ち込む可能性がささやかれる。ここにきての超円高などの不安要因も加わり、本当に成長率が高くなるかは、予断を許さない。

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