高橋洋一の民主党ウォッチ  
「年金救済」騒動が浮き彫りにした 民主党のあきれた「無知」ぶり

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   年金の問題で、サラリーマン・公務員の専業主婦(主夫)は3号被保険者といわれる。年金保険料については、夫(妻)が配偶者の分まで払っているという形で、妻(夫)は払わなくていい。しかし、離婚したり夫(妻)が自営業に転職したりした場合には、サラリーマン・公務員以外の1号被保険者となり、保険料納付が必要となる。ただ、現状ではその変更届けを忘れ、保険料未納となっている人は100万人以上いるともいわれる。

   そこで、その救済策として、厚労省は課長通達を出して、直近2年分の保険料を払えば、それ以前の未納は不問とした。いわゆる「運用3号問題」だ。これが完全実施されれば、支出される公金は数兆円に上る。

課長通知と憲法第85条の関係

   これに対して、まじめに保険料を支払った者がバカをみる不公平な扱いだという批判がおこり、菅政権の細川律夫厚労相が窮地に陥っている。

   そこで、政府は、2011年3月8日、今の救済策を廃止したうえで、法改正を行い、特例として、さかのぼって保険料を支払ってもらい、それに応じた年金を支給するなどとした改善策を講じることとした。

   以上は、運用3号問題の経緯であるが、なぜ課長通達だったのか。課長通達は法律違反ではないのか。ようやくこの問題も国会で取り上げられるようになってきた。

   憲法第85条には「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする」と書かれている。これを受け、具体的な規定は予算や国民年金法に書かれなければいけない。

   公務員であれば、この程度の知識は常識だ。救済策を実施すれば、数兆円以上の国費を支出することになるので、当然国会議決を要することだ。したがって、行政府内の課長通達でやっては憲法違反になる。

   国会議決による法形式や予算が必要ということは、課長通達ではもちろんできず、それより上位の政令改正や省令改正でもできない話だ。

「知らなかった」のお粗末

   当時の関係者から聞いた話によれば、厚労省役人から「法改正でなく課長通達でできる」という説明があったようだ。同時に、厚労省役人は「法改正では時間がかかる」といっているが、これは法改正が必要なことを暗黙に認めている言い方だ。憲法を破ってまでもできるという役人の説明も笑止千万であるが、それを信じた当時厚労相だった長妻昭氏を含む政務三役のほうも間抜けだ。ちなみに細川現大臣は当時、厚労副大臣だった。

   長妻氏は「やむを得ない判断だった」と説明したが、行政府で判断してはいけない問題ということが分かっていなかったことを白状したようなものだ。

   さらに、細川厚労相は当時担当ではなかった(労働担当の副大臣だった)ので知らなかったといったが、課長通達が資料として配布された会議には出席していたので、これもお粗末な話だ。

   一方、課長通達でやるという方針を大臣らが決めたとき、役人のほうから当時の大臣、長妻氏に対して、憲法違反なのでできませんと言わなければいけなかった。

   3月9日の参院予算委員会で、今回の課長通達は違法ではないかと問われて、細川厚労相は違反でない、片山善博総務相はグレーゾーンだと答えた。まったく答弁になっていない。憲法第85条を両大臣に国会で読み上げさせればいい。

   いずれにしても、民主党がこんな体たらくでは、政治主導をやろうにもできないのが、誰の目にも明らかになった。もし正しい判断による政治主導に基づき救済策を法改正で行っていれば、こうした事態が放置されていた原因は自民党政権の時であるといって攻め、法改正の審議拒否はできないはずだと、民主党の得点にできたはずだ。

   それを自らのミスで相手につけ込むスキを与えるところに、今の民主党の情けなさが集約されている。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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