2024年 4月 20日 (土)

新日鉄住金vs韓国ポスコ、審理始まる 長引けば双方にダメージか

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   重要な技術を盗用したとして、製鉄業界世界2位の新日鉄住金が、5位の韓国・ポスコに約1000億円の損害賠償と関連製品の販売差し止めを求めた訴訟の第1回口頭弁論が2012年10月25日、東京地裁で開かれ、審理が始まった。

   ポスコは「不正はしておらず、事実誤認がある」と主張して全面的に争う構えを見せており、両社の対立は長期化するものと見られ、長年の両社の提携関係に悪影響を与える可能性もある。

元社員も訴えられる

   新日鉄住金が訴えている相手は、ポスコとポスコ日本法人に加え、旧新日鉄で最新素材の研究開発を担当した元社員だ。新日鉄住金は訴状で「ポスコ日本法人を情報盗用計画の主な拠点とし、ポスコが組織的に計画して元社員に『方向性電磁鋼板』と呼ばれる技術についての情報を不正に持ち出させた」と主張している。新日鉄住金はこの方向性電磁鋼板について、「特許権を取得するなどして厳格に管理してきた」としている。

   ちなみに、「方向性電磁鋼板」は電気の変圧器に使われる鋼材で、変圧器の性能を左右する、エネルギーの変換効率を高めた特殊な鋼板。送電ロスを減らす特徴から、発電所や電柱の変圧器に使われる。世界の市場規模は年約100万トンと比較的小さいが、収益性が高いうえ、今後新興国を中心に需要の伸びが見込まれる有望な商品だ。

   新日鉄住金の世界シェアは約3割で首位。他の約4割は旧新日鉄がライセンス供与した複数の海外メーカーが生産している。「独自技術」を主張するポスコも現在では2割のシェアを占めている。

   退職した社員などを通じた海外への技術流出は増えているとされながら、確証のない「噂」の域を出なかった。しかし、ポスコから中国メーカーへの同鋼板の技術流出でポスコ元社員が逮捕された韓国内の事件に絡み、新日鉄住金が「証拠」を押さえる幸運に恵まれ、提訴に踏み切ったというまれなケース。それだけに、新日鉄住金としては、一罰百戒の意味でも、徹底的に責任を追及しようとしているわけだ。

40年以上にわたって提携してきた仲

   今回の訴えに対してポスコ側は、口頭弁論で「盗用」について「全くの事実無根。ポスコが独自に技術開発を進めた」と真っ向から反論。また、ポスコは「入り口論」として、日本でこの訴訟を扱うことの是非についても争う構えで、製造拠点のある韓国での審理が妥当だと主張している。さらに韓国中部の大邱地方裁判所において、新日鉄住金が求める損害賠償についての「債務の不存在」を確認する訴訟を起こすなど、徹底抗戦の姿勢を示している。大邱の今後の訴訟日程は未定だが、仮に「不存在」が認定されれば、ポスコは東京地裁にその判断を提出して対抗するものと見られる。

   東京地裁での次回の口頭弁論は12月下旬の予定だが、全面対決となったことで、判決までに最低でも1年程度はかかると見られている。その後も和解が成立せずに高裁、最高裁と争うことになれば、結論を得るまでに数年を要しそうだ。その間、ポスコが方向性電磁鋼板の販売を続ければ、新日鉄住金の主張する損失は拡大の一途をたどる。

   ただ、こうした対決ムードの一方、新日鉄住金とポスコは40年以上にわたって業務提携してきた関係にある。1998年以降は資本関係も結び、原材料価格の高騰に対抗して資源の共同開発など協力して事業を進めている間柄。関係をさらに発展させ、資源の共同購入や世界の自動車メーカーなど納品先との価格交渉で協力してきた面もあるだけに、訴訟が長引くことは双方にとって利益を失う面もあるとの指摘もある。

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