2024年 4月 25日 (木)

WHO報告書「原発事故の発がんリスク増加」 前提条件が非現実的でおかしくないか

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   世界保健機関(WHO)が、東京電力福島第1原発の事故による健康への影響に関する評価報告書をまとめた。原発周辺地域に住む一般市民が、放射能漏れにより健康被害を受けたのか、独自の基準を用いて算出している。

   発がんリスクについて触れられているが、国内外のメディアの伝え方は「影響少ない」「リスク増加する」と揺れている。報告書はどう書かれているのか。

「原発事故後4か月は避難しなかった」と仮定

WHOの報告書は約170ページにわたる
WHOの報告書は約170ページにわたる
「がん患者増 可能性低い」(2013年3月1日読売新聞朝刊)
「一部乳児 がんリスク増」(同・朝日新聞朝刊)

   WHOが2月28日に公表した報告書を巡って、主要紙の見出しは分かれた。海外紙を見ても、米ニューヨークタイムズは「健康への影響少ない」、ウォールストリートジャーナルは「発がんリスクはわずか」とした一方、ロイター通信は「リスク増加」と、やはりまちまちだ。

   報告書の英語版を読んでみた。冒頭の「要旨」では、福島県内外で放射能の影響を受けたと見られる地域において「予測されるリスクは低く、がんが目立って増加することもない」とした。福島県内の放射能レベルが極めて低いため、健康に多大な害を与える恐れも考えられないという。

   一方で、県内で事故後1年間の放射能レベルが最も高かった地域は、「発がんリスクが上昇する可能性がある」という。生涯でがんを患うリスクと比較して、男女の乳児では白血病が約7%増、また女児で乳がん約6%増、甲状腺がんが約70%増となるそうだ。ただし、もともと女性が甲状腺がんを患う確率は「わずか1%の4分の3程度」と強調。「最も放射能の影響を受けた地域」では、これに0.5%が加わるとしている。

   具体的な評価方法は第4章に書かれていた。実は調査にあたり、WHOが独自に前提条件を定めていた。「評価は現実的な内容を追求したが、調査期間中に入手できたデータに限りがあったため、放射線量の過小評価を避けるために数点の『控えめ』な見方を付けた」と書かれている。例えば食料品について「福島県の住民は現地で生産されたものだけを食べ続けた」と仮定している。だが原発事故後は、政府が食品衛生法の暫定基準値を超える放射性物質が検出された食料品に出荷停止や出荷制限を命令していた。さらに原発から半径20キロ圏内を「警戒区域」、30キロ圏内を「計画的避難区域」として住民の立ち入りを制限していたが、調査では事故後4か月間は住民が避難してなかったとみなして進められた。

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