2024年 4月 19日 (金)

仮設住宅は第二の故郷【岩手・大槌町から】(6)

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仮設団地は山あいに点在する=2013年7月27日、大槌町
仮設団地は山あいに点在する=2013年7月27日、大槌町

   大槌町にはクマ除けの柵を設けている仮設団地がある。シカの食害防止を講じている仮設団地もある。適地が少なく、山あいに仮設住宅を建てざるを得なかったからだ。

   クマの侵入防止柵があるのは大槌第9仮設団地。町では「平地が少なく、クマの生息地に近づくように建てなければならなかった」と話す。

   北上山系に生息するツキノワグマは1千頭を超す。生ゴミは当日の朝に出す。岩手県作成の「山でクマに遭わないための8カ条」を守る。仮設住宅で暮らす被災者は、クマ対策を意識しながら生活している。


   大槌町には48カ所に約2000戸の仮設住宅団地があり、全町民の約3分の1に当たる4600人が住んでいる。仮設住宅は、海岸沿いの市街地が壊滅したため、北上山系に分け入るように、大槌川、小鎚川に沿って建てられた。


   その仮設住宅での生活が2013年で3年目を迎え、住民は、より良き暮らしをめざして様々な工夫をこらしている。

   例えば、大槌町蕨打直(わらびうちな)地区の「蕨打直仮設団地」(43世帯、99人)では、家庭菜園づくりに取り組んでいる。大槌町柾内(まさない)地区の「大槌仮設団地」(39世帯、118人)では、運動不足解消のために、毎日、体操をしている。


体操の最後に互いに肩をたたき合う住民たち=2013年4月12日、大鎚町柾内の「大槌仮設団地」
体操の最後に互いに肩をたたき合う住民たち
=2013年4月12日、大鎚町柾内の「大槌仮設団地」

   蕨打直仮設団地の菜園の広さは約70平方メートル。持ち主から今年4月に無償で貸与を受けた。団地代表の野沢文雄さん(68)が、住民同士の連帯感を深めようと、菜園作りを発案した。「作物が収穫できるようになったら収穫祭をやりたい。畑で採れた野菜を調理して食べる機会を設けたい」


   一方、大槌仮設団地では、住民が、体操をし、しり取り遊びをし、歌を歌って元気を出している。

   4月半ばに見学した。午前9時過ぎ、住民が談話室に集まってきた。参加者は16人。ストレッチから始まり、体を動かし、最後に肩をたたき合った。続いて、しり取り遊び。出された課題は食べ物。「麦飯」「シジミ」「味噌」「ソラマメ」「明太子」などと続いた。わからなくなると、周囲から助け舟が出て、16の食べ物が出そろった。最後は全員で、「花は咲く」と、「大槌町民歌」を合唱した。

   自治会長の三浦勝男さん(73)はこう語る。「復興が進めば、一人抜け、二人抜けして、最後は、ばらばらになってしまう。でも、皆で、楽しくやってきた。仮設は第二の故郷。ここでの絆を大事にしたい」


   大槌町では、復興に向けた、住宅建設の動きが本格化しようとしている。最終的に980戸建設される災害公営住宅のうちの、104戸のへの入居が、8月末にある。仮設住宅で肩を寄せ合って暮らしている被災者たちに、別れの時が、徐々に迫ってきている。(大槌町総合政策課・但木汎)


連載【岩手・大槌町から】
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