2024年 4月 25日 (木)

震災から3年 原発にいまだ残る「危機」 最大リスクは4号機の使用済み核燃料

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   東日本大震災の発生から丸3年。野田佳彦首相(当時)が東京電力福島第1原子力発電所の原子炉で「冷温停止状態」を達成したとして「事故収束」を宣言したのは震災発生からわずか9か月後の2011年12月のことだった。

   1~3号機は「小康状態」といってもよいが、廃炉に向けた道のりは遠い。

   30~40年後には原子炉建屋を解体して更地に戻したい考えだ。だが、それまでに使用済み燃料の取り出しや増え続ける汚染水など対応すべき点は多く、場合によっては再び大量の放射性物質が放出されるリスクも残っている。当分は薄氷を踏むような作業が続くことになる。

高濃度汚染水が土壌にしみこんで海に大量流出

4号機では使用済み燃料プールから燃料の取り出しが進んでいる(東京電力撮影)
4号機では使用済み燃料プールから燃料の取り出しが進んでいる(東京電力撮影)

   事故では1~3号機が炉心溶融(メルトダウン)し、大量の放射性物質が放出された。4号機も3号機から水素が流入したため水素爆発を起こしたが、定期検査中で原子炉の燃料はすべて使用済み燃料プールに移されており、メルトダウンは免れた。14年2月末時点で、1~3号機の原子炉の温度は15度~35度で推移している。

   一見、原発の状況は安定しているように見える。それでも大きく2つの点で、再び大量の放射性物質が原発の外に放出されるリスクが指摘されている。

   ひとつが汚染水の問題だ。1~3号機を冷やすためには注水が不可欠だ。そのため、1日に300~400トンの水が放射性物質に汚染されるという状態で、敷地内には収容タンクが増え続けている。浄化装置「ALPS」(アルプス)は予定よりも1年以上遅れて13年秋に本格稼働したが、すべての放射性物質を除去できるわけではないため、根本的な問題解決にはならない。それ以前に、貯蔵タンクから高濃度汚染水が漏れる事故が繰り返されている。この汚染水は年間30メートルほどの速さで海の方向に向かって土壌にしみわたっているとみられている。これを放置すると深刻な海洋汚染を引き起こすのは確実で、対策が進め荒れている。1~4号機周辺には約1.4キロにわたって「凍土壁」を築いて汚染水をブロックする。14年3月上旬に凍結試験を行うが、汚染水が海に到達するまでに完成するかは明らかではない。

プールが壊れて水が流出するとメルトダウンする

2号機の原子炉建屋ではロボットを使った除染も始まった(東京電力撮影)
2号機の原子炉建屋ではロボットを使った除染も始まった(東京電力撮影)

   二つ目のリスクが、廃炉作業で最難関だとされるのが核燃料の扱いだ。1~3号機の核燃料の一部は解け落ちてかたまり(デブリ)となり、現時点では取り出すことは全く不可能。放射線量が高くて人が近づくこともできず、中長期的な課題として技術開発が急がれている。

   短期的な最大課題は4号機だ。4号機で核燃料が保管されている使用済み燃料プールは高さ30メートルの原子炉建屋4階部分にある。原子炉建屋は原発事故時の水素爆発で鉄骨がむき出しになるほど激しく壊れている。その後修復は進んでいるものの、仮に地震や津波でプールが壊れ、燃料を冷やしている水が流れ出た場合のリスクが高い。燃料自体が1~3号機と同様に露出してメルトダウンを起こすことになるからだ。4号機のプールで保管していた核燃料は福島第1原発最多の1533体。仮にメルトダウンが起これば、その被害は3年前の事故の比ではない。13年6月には水を冷やすポンプが故障するなど、予断を許さない状況が続いてきた。

   そこで考えられたのが、燃料をプールから取り出す手順だ。プールの中で核燃料を「キャスク」と呼ばれる輸送容器に収納し、地上の安全な場所に作ったプールに移す。この手順が終われば、新たに放射性物質が大量に放出されるリスクはなくなることになる。取り出し作業は13年11月に始まり、14年3月9日までに1533体中462体を移送。14年末の移送完了を目指す。ただ、プールの中には変形した燃料もあり、安全に作業を終えるまでは紆余曲折がありそうだ。

ロボットを遠隔操作して原子炉建屋を「3Dレーザスキャン」する

   前出の1~3号機についても、歩みは少しずつ進んでいる。1、2号機では13年12月、ロボットを遠隔操作して原子炉建屋の内部を調査。「3Dレーザスキャン」と呼ばれる手法で現場の様子を立体的に再現し、がれき除去や除染作業の準備に役立てる。

   燃料デブリの取り出しのためには、原子炉の格納容器の破損した場所を正確に把握して修復し、水で満たす必要がある。13年6月に改訂された政府の工程表(ロードマップ)によると、1、2号機については、従来よりも1年半前倒して20年度上半期までにこれらの作業を終え、燃料デブリの取り出し開始を目指す。溶けていない燃料についても、17年度下半期から取り出しを始める。

   燃料を完全に取り出して初めて、原子炉建屋の解体に着手できる。福島第1原発を更地にできるのは早くても30~40年後だ。

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