2024年 4月 20日 (土)

企業の物価見通し初公表、日銀と市場で評価に隔たり 「夏ごろに追加緩和」の観測が強まる

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   日銀は2014年4月2日、3月の企業短期経済観測調査(短観)の一環として、全国の約1万社を対象にした「企業の物価見通し」を初公表した。

   1年後の物価見通しの平均が1.5%という調査結果に対し、「2年で2%」の物価上昇目標を掲げる日銀は「しっかりした数字」と胸を張ったが、市場は逆に「日銀の目標達成は困難」との従来からの見方を強めている。「1.5%」をめぐる両者の評価には隔たりがあり、年内の追加緩和観測は消えそうにない。

物価予想を幅広い視点から見る

   「企業の物価見通し」は、短観の中で1年後、3年後、5年後の物価予想を聞き、3か月ごとに公表する。これまで市場関係者や消費者を対象にした物価予想調査はあったが、企業を対象にしたものはなかった。市場関係者は低めに、消費者は高めに物価の見通しを答える傾向があり、日銀は物価予想を幅広い視点から見るために、黒田東彦総裁が就任する前から導入準備を進めていた。企業を対象にした物価予想調査は、ニュージーランドやカナダなどでも実施しているが、「1万社もの企業に聞く調査は世界でもあまり例がない」(日銀)という。

   日銀は2014年度終わりから2015年度にかけて、物価上昇率が2%程度に達するとみている。一方、市場では、物価上昇率が当面1%程度にとどまるとの見方が大勢。今回の調査では、1年後の平均が1.5%、3年後と5年後は1.7%で、日銀内では「意外と高いな」と笑顔を見せる幹部もいた。

   確かに、デフレを脱却し、物価が安定的に上がっていくという日銀のシナリオに沿った内容といえる。ただ、調査結果をよくみると、平均を引き上げているのは1年後に1.7%、3年後と5年後に1.9%を見込む中小企業。円安による原材料価格の高騰に苦しんでいることが反映されたと考えられ、「悪い物価上昇」を予想しているとも受け取れる。一方で大企業は1年後に1.1%、3年後に1.3%と、慎重姿勢が浮き彫りになった。市場では「企業も日銀の目標達成は難しいとみている証拠」(アナリスト)との受け止めが多く、日銀の評価とは対照的だった。

「回を重ねないと、評価できない」

   今回は初めての調査であり、過去のデータとの比較ができず、統計の傾向もつかめていないため、「回を重ねないと、評価できない」というのが日銀の公式見解だ。市場でも「企業の物価見通しの結果だけで、追加緩和に踏み切ることはない」(アナリスト)と冷静な見方が多い。

   ただ、4月以降は円安による輸入物価の上昇が一巡。消費税増税による駆け込み需要の反動減で景気減速も予想され、物価を押し上げる力は弱まりそうだ。このため、日銀が夏ごろに追加緩和に踏み切るという市場の見方はますます強まっている。

   黒田総裁は4月8日の記者会見で、企業物価見通しについて「興味深い結果が出た。ある程度、高い見通しだ」と述べるとともに、7月以降の景気回復と物価上昇目標の達成に強い自信を示したが、就任2年目の今年の金融政策運営は波乱も予想される。

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