2024年 4月 25日 (木)

エボラ出血熱、日本では感染判断不能 ウイルス扱う施設、住民の反対で稼働できず

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   西アフリカからスペイン、米国へと感染が広がっているエボラ出血熱。現時点では感染者が出ていない日本も、対岸の火事ではなくなってきた。

   国内の医療関係者は万一に備えているが、ひとつ気になる事実がある。エボラウイルスを患者から分離して調べ、感染の有無を確定する機関が国内ではひとつも稼働していないのだ。

国内2か所の施設は稼働していない

エボラウイルス感染を「確定」できない(写真:米CDC)
エボラウイルス感染を「確定」できない(写真:米CDC)

   厚生労働省は、エボラ出血熱の流行地域への渡航者や帰国者に対して空港で注意喚起を実施。特に西アフリカから日本に到着した人に対して健康状態を確認し、「水際対策」を進めている。だが、空港の検疫所での健康確認は旅行者の申告制で強制ではない。これ以上の対策が難しいのが現状のようだ。

   エボラ出血熱の感染者が見つかった場合、国内では全国45施設の「感染症指定医療機関」で対応する。2014年10月15日放送の「報道ステーション」(テレビ朝日系)では、指定機関のひとつである横浜市立市民病院を取り上げた。医療スタッフが患者の搬送に備えて日々研修に励み、また米国で医療従事者が2次感染したことから、治療の際に身に着ける防護服の着脱手順の見直しを進めている様子が紹介された。

   だが、国立感染症研究所の「エボラ出血熱診断マニュアル」にはこのような記述がある。

「エボラウイルス感染症のウイルス学的検査は、国立感染症研究所(村山庁舎)ウイルス第一部第一室において可能である。国立感染症研究所においては、現在のところ感染性のあるエボラウイルスの取り扱いが認められていない」。

   どういうことなのか。

   世界保健機関(WHO)は、細菌や病原体をリスクに応じて4段階の「バイオセーフティーレベル(BSL)」に分類している。日本でもこの基準が用いられ、エボラウイルスは有効な治療法が確立しておらず致死率も高いことから、最も危険な「BSL-4」に位置付けられている。

   国内には、国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)と理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)に、BSL-4に対応する高度な安全性を備えた施設がある。ところが住民の反対により、今日まで稼働していない。つまり今のままでは、国内では患者からエボラウイルスを取り出し、その患者がエボラ出血熱に感染していると確定する診断を下せないのだ。

日本学術会議がBSL-4施設の必要性を提言

   前出の「エボラ出血熱診断マニュアル」によると、エボラウイルスの感染が疑われる場合は、血液や、のどから採取した粘膜、尿を診断する。だが検体は取り出せても、ウイルスの分離や培養は許されない。医師・ライターの村中璃子氏は、ウェブマガジン「WEDGE Infinity」2014年10月14日掲載の記事でこの点に触れ、「厳密に言えば、現状では、エボラ出血熱を疑う患者が見つかった場合、海外に検体を送り、確定診断が出るのを待つしかない」と指摘している。

   日本学術会議は2014年3月20日、国内におけるBSL-4施設の必要性に関する提言をまとめた。理由は、国内でBSL-4病原体による感染症が発生した際の診断、基礎研究および診断法やワクチン・治療薬開発などの応用研究、研究者や緊急時対応の人材育成のためと多岐にわたる。一方、施設の建設にあたっては地域住民の理解を得ることが最も大切であり、バイオセキュリティーの観点から施設の安全管理や運営に国の関与を促している。

   これまで、国内2か所のBSL-4施設は地元の理解を得られていない。長崎大学でも施設の設置を計画しているが、反対する市民が署名活動を実施したと報じられた。

   医学系専門紙の記者に取材すると、あらゆる面で前例がないエボラ出血熱の対応方法の検討に、国内の医療関係者は苦慮していると明かす。厚労省によると、ウイルス感染の疑いがある患者は「国立感染症研究所で迅速に検査を行い、感染の有無を確認」するという。感染が認められれば、感染症指定医療機関に送られて治療が施される。ただし、国内ではその判断ができない。しかも現時点で治療薬は未承認と「ないないずくし」なのだ。

   もし今後国内にエボラウイルスの危機が迫った場合、「例えば国立感染症研究所のBSL-4施設の使用を時限的に認めるような、緊急措置がとられるかもしれません。しかし周辺住民の不安は根強いですから、簡単にはいかないでしょう」と専門紙記者は話す。

   今のところ、症状が出ていない患者からの感染や空気感染はないとみられ、厚労省は「インフルエンザ等の疾患とは異なり、簡単にヒトからヒトに伝播する病気ではありません」と説明するが、不安は拭えない。

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