トヨタが「鋼材」調達価格の下げに本腰を入れ始めた 業績踊り場、もう鉄鋼に譲歩できない?

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   トヨタ自動車は、2016年度上半期(4-9月)に自動車用鋼材を下請け部品メーカーに支給する価格を、2015年下半期(10月-2016年3月)に比べ、トン当たり3000円程度(3%)引き下げる方針だ。値決めの大もととなるトヨタと新日鉄住金の交渉が値下げ方向にあることを反映する。

   鋼材のような自動車部品の素材は、中国の過剰生産と需要減から価格下落が続いている。自動車業界にとっては、これまで利益を下支えしてきた円安が収束しそうな中、新たに利益を支える要因ともなりそうだが、鉄鋼メーカーにとっては経営環境の悪化に拍車がかかりそうだ。

  • 業績に下方圧力がかかるトヨタ(写真は豊田章男社長。2010年2月撮影)
    業績に下方圧力がかかるトヨタ(写真は豊田章男社長。2010年2月撮影)

新日鉄住友との「チャンピオン交渉」を反映か

   トヨタは下請けの部品メーカーに対し、自らの絶大な調達力にものをいわせて入手した自動車用鋼材を、割安な価格で支給している。これが「支給価格」と呼ばれるものだ。トヨタグループ全体の利益の源泉の一つでもある。この支給価格は半年ごとに改定しており、2016年度上半期の引き下げは、2015年下半期に続き、2期連続となる。鉄鉱石や原料炭(石炭)といった資源価格の世界的な下落を受けたものだ。

   支給価格に反映する資源価格がどの程度下がっているかを見ると、2016年1-3月に鉄鋼大手が資源大手から調達する鉄鉱石の価格は、1トン当たり47ドルで、2015年10-12月に比べ8%の下落だった。2016年1-3月の原料炭も、2015年10-12月に比べて9%安い1トン当たり81ドルに下落した。リーマン・ショックによる世界経済の低迷後に一時持ち直したこれらの価格は近年、下落傾向が続いており、鉄鉱石、原料炭ともに2010年度以降の最安値を更新している。こうした資源価格の下落がトヨタからの「支給価格」に反映している。

   支給価格のもととなる、トヨタ自動車と新日鉄住金の鋼材価格の交渉は「チャンピオン交渉」とも呼ばれ、自動車業界のみならず電機メーカーや造船業界への素材納入価格にも影響する重要な交渉だ。2015年度下半期の交渉内容は公表されていないが、2015年度上半期より引き下げることで決着した模様だ。引き下げは2期連続となる。

「円安」の収束と「愛知製鋼」の爆発事故が響く

   鋼材価格のトレンドの転換点となったのは2015年度上半期の交渉だった。鋼板価格は原材料価格の下落を反映し、2014年度下半期から1トン当たり6000円(約6%)引き下げることで合意した。円安などのコスト上昇を織り込むことで「横ばい」だった2014年度下半期から一転した。新日鉄住金など鉄鋼大手が2015年7-9月に資源大手から調達した鉄鉱石価格は1トン当たり52ドルと4-6月に比べ16%も下落した。原料炭も7-9月は93ドルで15%の下落だった。トヨタ側としては、円安の恩恵を受けて最高益を更新するなかで、新日鉄住金側に調達価格面で譲歩してきたが、その姿勢を変えたと言える。

   安値で買いたたかれていることもあり、鉄鋼会社の経営は悪化している。例えば、神戸製鋼所は2016年3月期に3年ぶりの最終赤字に転落する見込みで、赤字額は200億円(前期は865億円の黒字)と予想する。15年10月時点では200億円の黒字を見込んでいたが、中国経済の減速も響いている。鋼材価格下落は鉄鋼業界再編も引き起こし、首位の新日鉄住金が4位の日新製鋼を買収し、鉄鋼大手は3社に集約されることになった。

   トヨタが鉄鋼会社に譲歩できなくなったのは、自社の業績が成長の踊り場を迎えたからでもある。トヨタの2016年3月期は営業利益が2兆8000億円と過去最高を見込む。ただ、直近の2015年10-12月期を見ると、円安効果の急減などにより2014年1-3月期以来、7四半期ぶりに前年同期比で営業減益となった。2016年に入ってからは為替相場が円高に傾斜するだけでなく、グループの愛知製鋼の爆発事故で部品調達が滞って2月に国内の完成車工場を6日間操業停止するなど、業績への下方圧力がかかっている。今後も自動車メーカーの業績が上向く要素は多くないだけに、鉄鋼メーカーには厳しい状況が続きそうだ。

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