2024年 4月 24日 (水)

誤発注?に「日銀テロ」 FX個人投資家たちの阿鼻叫喚

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   2016年7月29日、日本銀行は金融政策決定会合を開き、追加の金融緩和を決めた。追加緩和はマイナス金利政策の導入を決めた16年1月以来、6か月ぶり。株価指数連動型上場投資信託(ETF)の購入額を年間3.3兆円から6兆円に増額する。

   政府と日銀が連携して「デフレの完全克服」を目指す姿勢をアピールしたものの、市場の期待よりは貧弱だったため、円ドル相場や株価は激しく乱高下し、個人投資家は手の打ちようがない1日になったようだ。

  • 日銀の追加緩和の決定で、ドル円相場は1日に上下4円もの乱高下
    日銀の追加緩和の決定で、ドル円相場は1日に上下4円もの乱高下
  • 日銀の追加緩和の決定で、ドル円相場は1日に上下4円もの乱高下

市場は日銀の追加緩和を既定路線と見ていた

   日銀が決めた追加の金融緩和は、現行の「マイナス金利」「量的・質的金融緩和」をさらに推し進め、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の年間買い入れペースを3兆3000億円から6兆円に倍増するというもの。

   不動産投資信託(REIT)の買い入れ額は900億円を維持。また、日銀の当座預金の一部に適用するマイナス金利の幅を現在のマイナス0.1%を据え置くほか、長期国債の買い入れ額も年間80兆円に据え置いた。

   日銀は「2%の物価上昇」を目指して2013年から大規模な金融緩和を続けている。しかし、最近は物価の弱含みや消費の低迷で、政府と日銀が掲げる「デフレ脱却」が困難になりつつあり、アベノミクス限界説が指摘されている。政府は2016年8月2日に大規模な経済対策を決めている。

   政府は、日銀が政府と連携して追加の金融緩和に踏み込むことを強く期待しており、メディアも日銀の追加緩和の実施が既定路線のように報じていた。しかし、今回の日銀の決定は市場の期待からは遠かったようだ。

   第一生命経済研究所経済調査部の主任エコノミスト、藤代宏一氏は「ETFの増額であれば、政府の経済対策に呼応するというメッセージを発信することができますし、少なくとも『ヤル気』はアピールできます。今回の決定は、日銀の金融緩和の限界を感じさせつつも、できる限りのことはやるという姿勢を強調することに、その目的があったように思います」と見る。

   また、外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長も、「市場から見れば、日銀は『ゼロ回答は避けた』との評価。とりあえず、できることに手をつけたといった感じでしょうか」とみている。

「何が起こったか全然わからない」

   そうしたなか、7月29日の東京外国為替市場は、ドル円相場が朝から不安定な動きとなった。ブルームバーグは同日朝、円が全面高となり、「対ドルでは一時1ドル103円41銭と、(7月)12日以来の高値を付けた」と報じた。

   それによれば、ドル円相場は7時30分すぎから数分程度の間に、105円20銭台から2円近く円高が進行。その後の8時20分ごろには104円 90銭前後に値を戻したという。突然のドル円の急落については、「何が起こったか全然わからない。この動きを見ると誤発注っぽい。ケタを間違えて売ってしまって、気がついて急いで買い戻している感じ」との、外為取引企業FXプライムbyGMOの柳沢浩チーフアナリストのコメントを紹介している。

   日銀の決定会合を控えて薄商いになっていたため、わずかな売買の変化でも相場は大きく上下に振れやすい状況にあった。

   その後、ドル円相場は、2016年7月29日正午時点で104円61~63銭と、前日17時(104円68~69銭)と比べて小幅なドル安円高で推移していた。しかし、日銀の追加緩和の決定発表(12時44分)前後は、円は一時1ドル105円台後半まで急落した後、追加緩和の内容がETFの増額にとどまると、今度は円は一転して買い戻しが膨らみ、1ドル102円83銭近辺に急伸。再び高値を付けた。17時すぎは、103円半ばで取引されるなど、ジェットコースターのような乱高下になっている。

「人間の力ではもう太刀打ちできない」

   1日に1ドル当たり上下4円もの値幅の乱高下に、外為どっとコム総合研究所の神田氏は、「事前(決定前)の動きも含めて、これだけ激しく動くと、まず利益は出せないでしょうね。おそらくマイナスを出した個人投資家は続出したと思います」と推察。ロスカットに追い込まれたFX投資家もいるようだ。

   さらに、「個人投資家は相場を、ただ眺めているしかなかったでしょう。きょうの相場のように、急激に乱高下するとプロでもついていけません。アルゴリズム取引に翻弄された結果といえますが、人間の力ではもう太刀打ちすることなどできない状況でした」と、神田氏は続ける。

   インターネットの投資家サイトなどでは、

「おいおい102円はちょっと急すぎるだろ。たのむよ」
「爆死・・・」
「これは日銀のテロだろ」

と、この日の相場に飲みこまれた人たちの嘆きのコメントが並んでいる。一方で、

「もっと円高に振れると思ったけど、たいしたことなかったな」
「相場ぜんぜん盛り上がってなくて笑ったwww」

と、混乱のさなかに儲けたとみられる投資家の声もあり、悲喜こもごもの様相だ。

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