2024年 4月 26日 (金)

ヤマトを追いつめたアマゾン 巨額未払い残業に配送料値上げ

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   宅配便大手のヤマト運輸が全国約5万4000人のドライバーと営業所の内勤職員約4000人を対象に未払いの残業代がないか調査を進めている。ヤマト運輸の持ち株会社であるヤマトホールディングス(HD)としては、ヤマト運輸を含む約7万人の社員が対象になるという。

   ヤマトは宅配便の基本運賃を、2017年9月末をめどに引き上げる検討も始めた。大規模調査で前代未聞の巨額の未払い残業代支払いという事態に追い込まれたことで、宅配事業は大きな曲がり角を迎えた。その背景にはインターネット通販の巨人、アマゾンの存在があった。

  • 2013年からアマゾンの配送がヤマト運輸に
    2013年からアマゾンの配送がヤマト運輸に
  • 2013年からアマゾンの配送がヤマト運輸に

ドライバーは昼食時間をほとんど取れていなかった

   ヤマトの問題の背景には、インターネット通販の普及で宅配便が急増し、ドライバーらがサービス残業を強いられる構造がある。未払い額は1人当たり100万円を超えるケースもあるとみられる。会社側は未払いが確認されれば残業代を支給する方針で、既に労使が合意している。支払総額は数百億円規模となる可能性があるという。

   今回の問題の直接の発端は、ヤマト運輸の横浜市内の支店が2016年8月、横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けたこと。勧告は①社員が休憩時間を法定通り取得できていない②時間外労働に対する賃金が十分に支払われていない――という内容だ。

   当時の記者会見によると、同支店の2人の30代のドライバーは「荷物の数量が増え、昼食時間をほとんど取れていなかった」「配達時間を管理する携帯端末の稼働時間で労働時間が計算されていたが、配達終了後の翌日への引き継ぎなどが労働時間にカウントされていなかった」などと証言している。ヤマトは今回、この勧告を受け、非を認めて全社で総点検に乗り出した。

アマゾンの配送、2013年に佐川急便からヤマトに

   ヤマトを「追い詰める」ことになったのは、アマゾンジャパンとの契約だ。アマゾンは2013年、佐川急便からヤマトに配送業務を切り替えた。元ドライバーは「アマゾンヤマトに切り替わって、一挙に仕事が増えた」という。

   サービス残業は横浜市内の支店に限らない。労働基準監督署の是正勧告を契機に、ヤマトは今年1月から「働き方改革」の一環として、営業現場の管理者がドライバーら社員に面接し、サービス残業はないか、急増する荷物の集配で効率化を図れる方策はないかなど、労働実態の聞き取り調査を始めた。

   会社は「これまでも営業現場の管理者が月末に社員の勤務時間を確認しており、労働時間の改ざんを強いるとか、サービス残業が蔓延しているような実態はない」と説明してきたが、ドライバーの間では「ヤマト運輸の残業代未払いは報道されている程度の規模ではない」との指摘もある。労働実態の調査をめぐっては労使の言い分が食い違う場面もありそうで、今後の行方が注目されている。

   宅配便の基本運賃引き上げの検討は、こうした残業実態の必然の帰結ともいえる。アマゾンなど宅配便の荷物が急増し、人件費がかさむなど経営の圧迫要因となっており、今後も取扱個数の増加が予想されることから、宅配便事業を継続するには、個人と法人に適用する基本運賃の値上げが必要と判断した。基本運賃の見直しは1990年以来、27年ぶりとなる。

   ヤマトの宅配便はアマゾンなど法人との契約が9割を占め、コンビニ持ち込みなど個人客は1割。法人契約の基本運転は取扱個数などに応じて割引となっている。今回は基本料金の引き上げとともに、アマゾンなど大口の法人顧客と交渉し、割引率を引き下げる方向で見直しを進める。基本料金の引き上げ幅などは未定で、今後の検討課題となるが、実質的に「配送料無料」「即日配達」など、利便性に慣れきった消費者が、実質的に負担を迫られる可能性もある。

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