2024年 4月 20日 (土)

「インランド・エンパイア」
D・リンチの怪作、何がなんだか訳がわからない

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   どっと疲れてしまうのがデイヴィッド・リンチ脚本・監督のこの映画。前作「マルホランド・ドライブ」でリンチも大衆に近づいたかと思ったが、この映画はまたもや原点返り。リンチといえば、モジャモジャ頭の職工と奇形児を生んだ女を描いた「イレイザーヘッド」というの得体の知れない映画を昔、東映試写室で見たのが最初だが、あれから30年。未だそのラインで撮っているからリンチは偉いのかも。唯一、他人が脚本を書いた「エレファントマン」だけが、一般人も理解出来た作品だ。


   舞台はハリウッド。ベテラン女優のニッキー(ローラ・ダーン)に久しぶりの大役が廻ってきて映画撮影が始まる。突然ポーランド人やらサーカスの一座やらが登場、挙句に"ウサギ人間"の一家がニッキーのところに現れる。それだけでもややこしいが、ニッキーの私生活とニッキーの撮っている映画が一緒にまぜこぜになってスクリーンに映し出される。だから見ている方は訳が分からず大混乱。

   その上、劇中と同様、最近は重要な役柄での映画出演が減っているローラ・ダーン(インタビュー映画「デボラー・ウィンガーを探して」で出演のオファーの無いことを嘆いている) が、すっかりバアさんになっているのに、その醜い肌や疲れた顔のクローズアップが一杯出て来る。それだけで気持ち悪くて生理的に参ってしまう。リンチ監督は自分の映画に2度出た俳優は自分の身内だと語っている。ダーンは3回出ているから娘みたいなものだ。

   リンチ監督の映画作りは変わっている。色んなイメージや空想でアイディアを搾り出す。そして脚本を完成させないまま、部分的な物語から撮影を始める。撮影中にアイディアが生まれ、そしてまた撮影。これの繰り返しで映画が完成する。

   例えば「ブルー・ベルベット」などは「赤い唇」と「夜の緑の芝生」だけからスタートし、そこにボビー・ビントン歌う「ブルー・ベルベット」が加わる。そして最後のアイディアは車のインテリアと野原で車を見つける男。訳が分からない。筆者などは物語を追うのを諦めて、その頃はまだ美しかったイザベラ・ロッセリーニのヘア・ヌード(随分毛深い)だけを楽しんでいた。

   リンチが製作総指揮と監督をしたTVドラマ「ツイン・ピークス」では、石を投げて犯人捜しをする超能力だの非現実的なシーンがテンコモリだったが、それでも何とか筋が追えるシリーズで沢山のファンがついた。意味を求めるからいけないのだ、ストーリーを追ったら罰が当たる、訳が分からないから良いのだと、自虐的映画マニアがリンチ映画を愛好する。リンチ本人はヨガの瞑想から悟りを開き、全体に純粋で無限の喜びを感じるというが、普通の映画好きはとてもじゃないが付き合っていられない。

   そしてこの作品、何と3時間の長尺。何がどうなっているか訳の分からない映画を3時間もジーっと見ているとこちらまでオカシクなる。

恵介
★★☆☆☆
インランド・エンパイア(INLAND EMPIRE)
2006年アメリカ映画、角川映画配給、3時間00分、2007年7月21日公開
監督・脚本:デイヴィッド・リンチ
出演:ローラ・ダーン / ジェレミー・アイアンズ
公式サイト:http://www.inlandempire.jp/index_yang.html
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