2024年 3月 28日 (木)

「スピードマスター」
人形みたいな中村俊介、キスくらいしろよ

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   ハリウッド映画の「ワイルド・スピードX3」、香港映画「頭文字〈イニシャル〉D THE MOVIE」と、日本のストリート・カーレースを扱った作品がヒットしたのを受けて、そんなら本家日本でも、と「スピードマスター」が完成した。ところが肝心の走りの迫力は無いし、展開も色んな映画のエピゴーネンだ。

(C)2007 ジェネオン エンタテインメント
(C)2007 ジェネオン エンタテインメント

   ストーリーはあの「シェーン」から(またはそのマネの「たんぽぽ」からか)。親父(大友康平)が病気で従業員が無能、桜井モータースは倒産間近だ。娘の桜井まひろ(北乃きい)はいらいらするが、地元の大きなカーショップのオーナー、黒崎は桜井の工場をぶっ潰して自分のショップを建てようとしている。息子の勇弥(内田朝陽)は父親以上のワルで、地元のカーレースでは連戦連勝。そんな町に一人の流れ者、赤星颯人(中村俊介)がやって来る。勇弥の子分に痛めつけられていたまひろを救い、そのまま桜井モータースに住みこむところからのストーリーは先が読める。

   元「走り屋」だった赤星颯人と黒崎勇弥とのレース一騎打ちが予想通りクライマックスだが、このレースシーンが前述の映画の足元にも及ばない。ドライビング・テクニックをまともに見せてくれないのだ。車の改造もイマイチ魅力に欠ける。赤星颯人はRX-7FC、勇弥はRX-7FD、どちらも終売になったマツダのRX-7を使っている。勇弥のガールフレンド大道寺リオ(蒲生麻由)が乗る真っ赤なFAIRLADYZ32が一番カッコいい。

   主役の風来坊、赤星を演じる中村俊介は、雰囲気は良いのだが木偶の坊。モデル上がりで芝居の勉強が出来ていない。喜んで駆け寄るまひろにキスくらいしろよ。ただ抱き合っている人形状態なんて幼稚園映画じゃあるまいし。赤に対して、悪い黒の内田朝陽の方がまだ味を出している。ヒロインの北乃きいは「幸福な食卓」では良かったが、今回の役柄は掴みかねている。これも監督、須賀大観の演出力の欠如のせい。

   面白いことにこの映画、電通100%子会社のジェネオンが製作し、博報堂100%子会社のショウゲートが配給する。ショウゲートの前身は東芝エンターテインメントで、東芝が映画の世界から身を引くことになり、博報堂がクライアントへのおべんちゃらで買収したのだ。もっともジェネオンにしても、パイオニアがキャロルコのマリオ・カッサーに騙されて作った映画会社を、電通がパイオニアからおべんちゃらで買った会社だからおアイコだ。

   生まれ落ちた時から無理尽くめのジェネオンの現在の不振(製作映画が当らない)は予想されたことだ。この映画の製作時点では配給会社は東芝エンターテインメントで博報堂の影も形も見えていなかった。だから広告界ではありえないネジレ現象が起こったのだ。もう二度と起こらないだろう。

恵介
★★☆☆☆
スピードマスター
2007年日本映画、ショウゲート配給、1時間36分
監督:須賀大観
出演:中村俊介 / 内田朝陽 / 北乃きい
公式サイト:http://www.speedmaster-movie.jp/
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