権力に立ち向かう新聞記者 期待か皮肉かその実像(消されたヘッドライン)
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<消されたヘッドライン>ワシントンDCで起きた2つの事件。1つはドラッグ中毒の少年が何者かに射殺された事件。もう1つの事件は、若手国会議員コリンズのもとで働く女性職員ソニア・ベーカーが出勤途中の地下鉄で突然死したこと。
無関係に見える2つの事件に、ある共通点があることを知った地元新聞記者のカル・マカフリーは、独自の視点と嗅覚で事件の真相を探っていく。
「ペンは剣より強し」という言葉を体現するかのように、国家権力にも信念を曲げず立ち向かうカルの姿を見ると、ケヴィン・マクドナルドという映画監督が、ジャーナリズム全般に訴えたいことを、ラッセル・クロウが大好演したカルに託しているのが見えてくる。
次から次へと畳みかけるような「真相」の連続が観客を引きつけて離さないサスペンスであるが、主題は「現代のジャーナリズム」だろう。
作品内にも「YOU-TUBE」という言葉が出てくるが、インターネットの大普及により、誰もが一定の情報を共有できる時代。その分、「事実」というものが見えにくくもなっているということも言えるだろう。新聞社のネタの奪い合い、ねつ造など、何が事実であるかに靄がかかってしまっているというのは現代のジャーナリズムのひとつの特徴であろう。
カルの前に次から次へと入って来る情報。だが、それはまだ事実ではない。そして彼の信念によって「正真正銘の事実」が明かされ、映画は幕を閉じる......と、思うが、最後には、カルや、観客の誰もが予想のつかない「真相」が隠されているのだ。
冒頭のすさまじいアクションシーン。主役、脇役の役者の質の高さ。そして、不倫スキャンダルから、国家を揺さぶる大事件に発展する予想のつかないサスペンス。見ごたえは十分だ。
だが観終わった後に「余韻」が感じられず「そりゃ、おもしろいでしょうね」と、観ている時のハラハラ感とのギャップに驚く。完璧なストーリーであるが、どこか独り相撲をしている気もする。不思議だ。スケールのでかい――バカでかいハリウッド映画に対する嫉妬だろうか?
川端龍介
オススメ度:☆☆☆