エイガ探偵団

松本人志が描き出した 「笑いへの優しさ」とは(しんぼる)

2009/10/ 4 09:18
(C)YOSHIMOTO KOGYO CO,.LTD.2009
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   <しんぼる>賛否両論が大きく分かれた前作『大日本人』が記憶に新しい松本人志監督の2作品目。試写会も行わず、映画の内容を頑なに明かさない宣伝戦略が話題となっている。「お笑い」の世界でトップを走り続ける「天才」の表現方法の昇華のカタチが、果たして「映画」なのかどうか、前作では計りきれなかった感があったが、今作ではどうなのか。彼の「表現者」としての才能は多くの文化人が認めるだけに、やはり前作同様注目度は高い。

   場所も不明の密室に閉じ込められた正体不明の男の脱走劇と、メキシコの田舎町に暮らすエスカルゴマンという覆面レスラーが、過激で知られるレスラーとの対戦を控えた1日を追うふたつの物語が同時進行していく。密室劇は計算しつくされたコント調であり、片方の物語は、哀愁漂う人間ドラマのような雰囲気を醸し出す。

   荒唐無稽な1人芝居と覆面レスラーの物語が交錯する時、そこに存在するのは「笑い」である。「一瞬の笑い」のために、お笑い用語で言う「フリ」に多大な制作費をかける松本監督が、やはり「お笑いの人間」であることを再認識させられる。その緻密な組み立ては、同時に脚本のプロットの構築と結びついている。「お笑い」と「映画」は確実に相互関係にあるだろう。

   ただ、今作の凄みは「笑い」が決して陽気なだけではないことを表現したことだ。ふたつの物語はやがて壮大なテーマと「しんぼる」というタイトルの意味を浮き彫りにしていく。何故「お笑い」が素晴らしい文化であるか、それを逆説的に表現し、作品の後半にはある種の悲壮感すら漂い、映画的なスペクタクルを獲得している。

   エスカルゴマンの哀愁漂う日常など、今作品には松本監督の「笑い」に対する「優しさ」が充満している。ただ「おもしろい」だけのお笑い映画との違いを体感してほしい。<テレビウォッチ>

川端龍介

   オススメ度:☆☆☆☆


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