例年、夥しい数の年間合格者の中から、たった15人(組)の出場者たちをどういう基準で選ぶのか何の説明もない。今回も16歳などの若い人たちが数人いて、彼らが決してグランドチャンピオン大会に相応しい歌唱力の持ち主ではないが故に、「やっぱりな」と白けて見始めた。ところが、大向こうの批判をNHKも多少は気にしていたのだろう、今回の結果は納得のいくものだったのだ。グランドチャンピオンになった人は、ブラジル出身で来日3年目のホベルト・カザノバという男性。ド演歌の「契り」を歌った。
これが上手いのなんの。美声ではないのに演歌の心というか魂の叫びというか、とにかくこちらにズシーンと響いてくるような歌唱力の持ち主だった。中肉中背、浅黒い顔に大きな目、綺麗な歯並びを見せてしっとりとド演歌の世界を聴かせたのだが、ジェロ君もうかうかしていられないぞ、強力なライバル出現だ。なんで、他国の人たちがこんなにも演歌の心を表現できるのか不思議である。歌には国境がないなどと陳腐な言葉では説明がつかない。
つまり、日本の若者が恵まれすぎて失ってしまったハングリーな精神や、下から見上げる庶民の哀歓などに対する感性の鋭さが、彼らには備わっていて、演歌の世界にぴったり嵌まったということかもしれない。レコード店の片隅に追いやられ、今やNHKの歌謡番組でしか聞けなくなった演歌が、外国の男性たちに細々と支えられている構図は、それこそ、国籍不明のいい加減なシロモノに成り下がった日本文化の危機の証明に他ならない。断っておくが、筆者は決して演歌を好きではないのだが。
(黄蘭)

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